遅発性Ω

枝浬菰

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第三章

最終回

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近藤さんは男性だと思ってたけど実は女性で組織のメンバーで……。
ってとこまでは記憶があるけど、そのあと曖昧で知らない間に家に帰ってきて、でもみんなが無事ならいいっか!!
ってなった。

明日からは航平の幼稚園も休みで恭平さんと杉本さんの家族でGWを過ごすことになった。


次の日
杉本さんと華さんと祐樹ゆうきくんが家まで迎えに来てくれた。
「華体調大丈夫か?」
「うん、ありがとう」

杉本さんは相変わらずというか華さんに優しい。

「華さん体調悪いんですか?」
「うん、ちょっとね……でも大丈夫だよ」

「あの、俺もΩでその……おこがましいですが力になれると思いますのでなんでも頼ってください!!」
!? 華さんは少し驚いた様子だった。

「ありがとう、なにかあったら頼むね」
「はい」

「なんだなんだ、柊お前ちょっとかっこよくなったな」
杉本さんは俺のことを柊と呼ぶ。

そして恭平さんのことは恭平と呼ぶ。

「もう柊じゃなくて航って呼んでくださいよ」
「えー長年連れ添ったのは柊だから俺の特別な」と言ってきた。

杉本さんが運転する車は静岡の伊東に向かった。

最初についたのが
伊豆最大級の公園で体験型アトラクションを楽しむという催し物だった。
「うわぁ!! すごい!! お兄ちゃん!!」
航平が目をキラキラと輝かせていた。
右手には祐樹くんの手をぎゅっと握っていて2人とも興奮していた。

「か……かわいい」思わずぽつりと漏らした祐樹くん。
母と父はその姿を写真に納めていた。

「なんだか、ほっこりしちゃうね」
「ですね」


祐樹くんは中学生になって勉強ばかりだったので今日は思う存分航平と遊んでほしい。

傍からみたら男集団の集まりだ……。
まぁそういう世の中だから仕方ない。

「そういえば祐樹くんって性質どちらだったんですか?」
「祐樹はβだったよ」

「そうだったんですね」
「航平くん気になるよね」

「はい、でもなにであっても親は近くで見守ってあげるのが一番いいと思います」
「うんうん、本当に柊も成長したな」

「な///」

「航平と祐樹くん連れて受付してくる」と恭平さんが言ってきた。

「あ、俺も行きます」と一緒についていく。
「せっかくなんで大人組も参加しませんか?」

「え!?」
年齢制限をみると特になかったので参加をすることにした。

「迷路だ! 迷路だ!」と大騒ぎな航平。


「えっとこの際だから全員バラバラで行動してみない?」
「そうですね、入り口も3つに別れてますし」

「航平、お兄ちゃんと2人でも大丈夫?」
「うん!! 大丈夫だよ、僕がお兄ちゃん守る!!」

「お! 航平頼もしいな」
ぐりぐりと杉本さんに頭を撫でられた。

「うっ かわいい」と祐樹は航平に夢中になっていた。

「じゃ、だれが最初にゴールに着けるか競争だ!!」

「「オー」」

ちなみにいうと幼稚園レベル、中高生レベル、大人レベルの3つに別れている。
幼稚園レベルに航平と祐樹くん。
中高生レベルに俺と華さん。
大人レベルに恭平さんと杉本さんになった。

Ω対αなと杉本さんが楽しそうに話をしていて心がとても楽になった。

「航くん、最近子育てはどう?」
「あ、はい順調です。 最近は幼稚園の保護者の方とも仲良くなれて航平にたくさんお友達ができて嬉しいです」

「そっか、それならよかった、祐樹とも仲良くしてくれているみたいで安心するよ」

「華さんは最近調子が悪いんですか?」
「あ、うんなんか暗くなる話しちゃうとつい昔の癖がね」
「昔の癖?」

「うん、あんまり言葉には出さないように気を付けてるんだけど考えるとそれが現実になっちゃったりしちゃうから……。ごめんこの話は聞かなかったことにして」

「……はい」

明るくて元気な華さんでも辛い過去があったのかな……。
でもすごく心配になる。 このことはさすがに杉本さん知ってるよね。



大人レベル
「恭平、柊のこと大切にしてくれてありがとな」
「な……。 杉本は航のお父さんか!!」

「お父さんっていうよりも兄に近いかな、ずっとあいつのこと見てきたからさなんか大切な相手ができてよかったって思ってるよ」


「……たしかに変な従業員がいるなとは思ってたけど航ホテルマンの時幸せそうだったからな」

「みんなが柊のこと守ってくって決めてたから、もし運命の番が現れたらその時は笑顔で行ってらっしゃいって言いたかったしな」
にひっと相変わらずの笑顔が航を幸せにしてくれたんだなと感じさせられた。


「お! もうそろそろ出口だぞ」
「早くない?」

「だよな」
「航平はいる?」

「いや、いない」

出口は最後棒を伝って降りる仕組みなので上からのぞき込む。


そのころの幼稚園レベル
「ボールがいっぱいだ!! きゃっきゃっ」
「本当だね」
中間地点でボール広場に出くわしてしまった2人は触ると凹むボールに夢中になっていた。

「僕このまま航平くんとボールで遊んでてもいい」
「お兄ちゃんも僕と同じ考えだ!!」

「きゃー」と遊んでいると下から

「こら、目的忘れちゃダメでしょ」
「あ! お母さんだ!!」


「そうだよ、航平くん、ここでたらお父さんが待ってるかもよ?」
「あ、そっか」

航平が進みだしたので祐樹も進んだ。

「さてときっとα組はもう出口だと思うので進みましょ」
「はい」

出口につくと航平が走って
「1番!!」と笑っていた。
「じゃ、僕は2番」

「んじゃ俺は3番!!」
「お父さん!!」

「おい、俺が3番だろっ」

「アハハもう喧嘩しないの、じゃ5番」
「あ、6番……」
「お母さんビリだーー」

「アハハ、そしたらあそこまで競争だ!!」


昼休憩の食堂まで走った。
「はーはー疲れた」
「杉本は体力ないな」

「40近いんだ、ちょっとは労わってくれ」
「40なんてまだ若いだろ。ハハハ」
恭平さんがいうとなんだかそう感じてくる。
それに仲良しだな。


「お母さん、僕カレー食べたい!!」
「カレーか、お母さんと半分こしようね」
「うん!!」


もぐもぐとすごい勢いで食べていく、そんなにお腹減ってたのかと笑っていると向かいの席の祐樹くんはパシャっとカメラで撮った。


「かわいい」
今日それしか聞いていない気がする。

「この後はいちご狩りだろ?」
「うん、ごはん少なめにしておいて正解だったな」

いちご狩り農園 15時
いちご狩りの場所まで移動している間に航平はお昼寝してしまった。
「どうしよっか……」
「予約は6人でしてるし、連れていく?」

「そうだね」
抱っこしていちご狩りをしているといちごが取れないことに気が付いた。

「ほら、航あーんだ」
「あ、あーん」パクンと食べさせてもらう。

「甘いか?」
「うん、甘い」

恭平さんが俺の口にいちごを放りこみすぎてむせる。
「ちょったんま!!」

「わりぃ、めちゃ可愛かったから」
「///」


「んにゃ……おちご?」
「あ、航平起きた?」

「あ!! おちごだ!!」
いちごだね。

すっかり目を覚まして大好きないちごを頬張る。

「んーーあまい!!」と今日1大きな声を上げた。

「あ、航平くん起きたの?」
「うん、お兄ちゃんもおちご食べてる?」
「え……あっおちご食べてるよ」

祐樹くんそういうところ可愛いよね。

微笑ましく見守る親4人。
「お兄ちゃん!! こっちのいちご甘いよ」
「本当だ、甘いの見つけるの上手だね」
「うん!!」

「そろそろお時間です!!」と農園の人が声を上げたので
「航平もう終わりだよ」
「やだ!! だって僕まだ全然食べてないもん!!」

それは君が寝んねしてたからでしょっ。

「困ったな……」
「ねぇ航平くん、この後ホテルで僕と一緒に遊ばない?」

救世主 祐樹くん現る。

「何して遊ぶの?」
「んーそうだな、オセロとか?」

「……うん」
どうにか航平を誘導して18時にホテルに着いた。


「いやー良さそうな旅館ですね」
「はい、恭平さんのお父様のグループの系列に入ってて安めに予約ができたのでラッキーでした」


「そういえばルームキーなんで3つなんだ?」
「……なんででしょうか??」

疑問が残る中部屋を見て回ると
【梅】
という部屋は白い家具で構成されている部屋で

【緋色】
という部屋は木に包まれた癒しの空間だった。


そして
【くまの王国】
という部屋はぎっしりとまではいかない程度にぬいぐるみやくまベッド、くま椅子、机
トイレまでもくま!!で可愛すぎか!!ってレベルの部屋だった。

「うわぁあああ!! くーくんがいっぱいいる」

「これ絶対に樹さんの手回しだと俺は思う」
「俺も今そう思った」

「んじゃ寝る時は別々にするか?」
「そうですね、航平もくーくんがいれば1人でも寝れますし」
「祐樹兄ちゃんもいるもんな」

「うんっ」
赤らみながら期待した眼差しを感じた。


すでに航平は大きなくまのぬいぐるみにダイブしていた。

「少し休んでから夕食にしましょうか」
「そうですね、たしか夕食は19時からなので」

「おい、恭平お互い加減しような」


「はい!! 部屋の別れはΩとαにしましょ!!」
「へ?」

「だってせっかくこういう機会だし、航くんともお話もっとしたいので!」

「は……はい」
しょんぼりしているα組を横目に梅に入った。

「ごめんね、もしかしてH期待してた?」
「へ? いえ、むしろ俺よりも華さんのほうがって思ってたのですが」
「杉ちゃんとはあまりHしない関係だったから、Ωやα、βだからって言ってHが絶対なわけじゃないからね」

大人な関係に少し驚く。

「そうですね」

夕食が終わり少し休んで温泉に向かうと
「α様 β様、Ω様と入口が違うのかよ」

「男同士といってもまさかそういう分け方があったとはね」
「でもこれなら安心してカラー外してゆっくり入れるな」

「あ、そっか」
「んじゃ祐樹はβだからこっち連れてくからな」

「あ。 航平くん」
「お兄ちゃん」

「今だけだからね」

2人の悲しい別れをと思ったけど航平はどっちでもないし恭平さんに預けることにした。


「さて、入りましょうか」
「はい」

華さんすっごく綺麗!! なんか見とれちゃう///

「ん?」
「あ」とばっと目線をずらした。
でも、背中を見ると傷があった。

「あ、そうか航くんは初めて見るもんね、汚い体でごめんね」
「え、全然綺麗です」

「ありがとう、この背中の傷、中学生の時につけられたんだ、昔は根暗で早く死にたいなって思ってたの」

「え……本当ですか?」
「うん、この話をできるのも杉ちゃんと航くんくらいだよ」
少し切ない感じが顔に出ていた。

「……」
「でももう大丈夫だよ、僕にはヒーローが傍にいてくれるから」
「へ? もしかして杉本さんですか?」

「うん、本当にあの頃は……大変だった。あっ! いけない暗くなるからこの話はなしね」
「……」少し聞きたいなと思ってしまった。


「杉本さんって昔からヒーローだったんですね」
「うん」

「俺も助けられたというか杉本さんの考え方ってすごく勇気や元気をもらいますよね」
「そう、そうなんだよ」


その頃 α、β組
「あー航と温泉H楽しみにしてたのに……」
「お前さらっとすごいこと言うな」

「だってお風呂だとこんなに広さないからさ、あんな体勢やこんな体勢なことできないだろ」
「……だいぶ引くな……」


「お父さんHってなに?」

「あー航平はまだ早いから気にすんな」
「おい、まじめに答えるなよ」

「航平くん、お父さんたちの邪魔しちゃダメだよ」
「ぶー」
泡ぶくぶくしていた。

「か……可愛い、スマホないの残念」
「そういや、祐樹くんはいつから航平のこと好きなの?」

「あ、えっと最近?」
「そうなんだ、なにか好きだなっていうのあったのか?」

「課外学習で幼稚園の手伝いに行ったとき仲良くしてくれたのが航平くんでいろいろ遊び方を教えてくれて……それで」

「え、桜ヶ丘幼稚園に来たのか?」
「そう、偶然に」

「そうだったんだ、航平なんも言ってなかったから驚いたな」
「そうなんだ」
祐樹が航平の腰に手をまわし自分のほうに引き寄せていた。

「んじゃそろそろ出るか」
「お父さん!! 牛乳飲みたい!!」

入る前にすごい駄々をこねていたので買ってあげることに
2人揃って脱衣所で「ぷはー」と一息ついた。


「面白すぎるなお前たち」
杉本は腹を抱えて笑っていた。

「なになに? 楽しそうな笑い声が聞こえたよ」

航と華さんがこちらに来た。

髪の毛から滴り落ちる水滴に思わずごくりと唾を飲んでしまった。

「や……やっぱり俺は航と寝たいんだけど」
「うわぁー恭平さんやらしぃーー」

「華さんむしろラブラブですねって言ってほしい」
「ラブラブだ!!」と裸のまま逃走し始めた航平を追いかけた。


恭平さんの望みは叶わぬまま夜を迎えた。
ぐっすり眠る航くんを横目に1人ビールを飲みながら月を眺めていた。


「ごめんね、航くん僕は根暗で君のような明るい人ではなかった、だから憧れないでほしい、立派なΩでもないし、落ちこぼれΩのほうがあっているかもしれない」


月に向かってなに話てるんだろっ。

僕も寝よう。

次の日
「海だ!!」ザブーンとダイブした。

2日目は海に来た。
「うわぁー暑いね」
「寒いかなと思ったけど意外といける」

「うん」
「なんたって今日は真夏の気温30度」

「この時期にしては珍しいけど子供たちも楽しく遊べてていいな」
「うん」

浮き輪を膨らませていると航平に「早く早く!!」と追い打ちをかけられる。
「ぜぇーぜぇーできたよ」
祐樹くんが受け取り、杉本さんと華さんと航平で海に向かった。

「大丈夫か、航」
「だ……大丈夫……じゃないかも」

「冷たい水買ってくるから」
「うん」

パラソルの下にはいるけど眩暈がしてくる日差しに倒れてしまった。
「うぅー恭平さんには悪いことしちゃったな」

はぁー暑い暑い。

「航!! んっ」
「ありがとう」

受け取ろうとするが
「ごめん、航のその姿エロい」と言ってきた。
「へ?」

水着に羽織に少し砂がついてしまった姿をエロいっていうなら全員共通するじゃんか!!って思いながらも
「あっえっと」
「俺、昨日からずっと我慢してるんだけど」
「!? えっとどうすればいいの?」

「やりたいです」ぷしゅーっと湯気が立っていた。

「じゃ秘密だよ」といい岩場の影で始めた。


「あらー恭平、我慢の限界だったかな?」
「まぁ恭平さんはそういうところあるしいいんじゃない?」

「そうだな、航平を見ておこうぜ!」
「うん」



しばらく泳いで楽しんでいた。
「あれ? お母さんとお父さんは?」
「それにしても長くないか?」

「ですね」

「そろそろ帰り支度をしないといけないのに」

「す、すまん」と言い恭平はきた。
「あれ? 柊は?」
「車」
「おいおい」

「嫌だって」
「とりあえず、帰ろうぜ俺たちの家に」
「ああ」

GWは無事に楽しく終わった。

遅発性Ω 航と恭平の物語end
華と杉本の物語も別でUPしているのでよければ閲覧してみてください!!
この度は【遅発性Ω】をご愛読いただきましてありがとうございました~~


しかしまだまだ続いている……。
航平の物語……書き終わってないけど。
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