遅発性Ω

枝浬菰

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第三章

尊い命

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「航!!」
恭平さんが俺に駆け寄ってきた。
「ああ、航死ぬな」
傷口を抑えるが血が流れ出る。

「くそっ」


「瑠衣は?」
ビアンカが瑠衣を探していた。

「ママ」
「瑠衣、さぁ、帰るわよ」

「僕はここに残る」
「言うこと聞きなさい」

「失礼」
憧れの花咲さんがこちらにきて航を見てもらう。
「あの、助かりますか?」

「僕の命を使っていいよ」
!?
全員の視線が瑠衣に集まった。

「瑠衣、早く逃げるわよ」


「おーい金髪のおばさん、あんたその瑠衣になに隠してるんだ?」と聡が話を持ち掛けた。
「おば……。そうね、面白いことを教えてあげるわ、この子は柊航と国枝の間にできた子よ」

「なっ……」と恭平さんが驚いていた。

「やはりそうか」と花咲。

「ということはここにいる子供は金になるってことか」
聡と部下がビアンカを追い詰める。


「子供を金にするなんて」
「悪者は時と場合を選ばない、そして選択肢も……」
『盤上と水野悪いがこの子の手当てを頼みたい』
『了解』
部下が来て治療を始める。

「航、大丈夫だからな」
「……うん」
どうしよう、航平の元に早く行って抱きしめないと……でも体が重い……冷たい……キーンと声が聞こえる。

ああ、暗い海の底に沈んでいくようだ。

「お母さん!!」と呼ぶ声が聞こえた。
うっすらと目を開けると航平が手をぎゅっと握っていた。

「お母さん!! お母さん!!」
『盤上、水野、3人を連れて脱出しろっ爆弾が仕掛けられてる』
『了解』

「あの、航は助かりますか?」
「まずはここから避難しましょう」

恭平が航平を抱きかかえ、聡は瑠衣を抱きかかえ倉庫から逃げた。
その瞬間轟音と共に爆弾が爆発してあたり一面火の海に変わる。

「おい、早く消防車と警察を呼べ」
「了解」

聡が部下に命令して連絡を取る。
ビアンカとシンの姿はどこにも見えない。

瑠衣を置いていくはずはない、そう思った瞬間
遠くでキラキラと光った。

「全員伏せろ!!」

「ちっ」
花咲は前に立ち演唱を始めた。

ふと恭平の後ろに影を感じた。
「うぐっ!!?」

航はビアンカの腕の中にいた。

「おいおい、誘導作戦うますぎかよ」と聡が呑気に呟いた。


「航!!」「お母さん!!」


「血さえあればクローンが作れるか」
ビアンカは航の血を採取すると姿を消した。

こちらに投げられた航を抱きかかえ、航の意識が完全にないことを知ってしまった。
「おい!! 航!! しっかりしろっ」

「くそっ」と花咲がきた。
「ちょっ!? 隊長2回目の蘇生は禁止されてます、議長がなんというか」
「そんなの知るか!! 俺の少しの甘さで招いた結果だ」
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