遅発性Ω

枝浬菰

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第三章

貴重なΩ

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「え? さ……聡さん?」
「おうよ!!」


「おっとこれはこれはまた新しいお客さんがお見えになりましたね」
近藤が俺の脇に立つ。

「近藤!! 早くこいつらを殺せ」
「私はあなたに雇われていませんが」

「うぐっな……仲間だろ?」
「仲間ね……へっくしゅん」バン

??

俺今撃たれた?

ずるっと上田が血を噴き出しながら横に倒れ完全に死んだ。

「おっと、これはこれは危ないね」
にやっとこちらを見ていた。

「ご安心ください、羽衣航は死んでませんよ」

起き上がり自分の身を確かめる。
そうだ、航平が!!

しかし、恐怖で足がもつれ転んでしまった。
近藤が転んだ先に手をのばし、抱えた。

「おっと、お姫様はあまり動かないほうがいいですよ」
は?? 姫扱い??

兄貴が来てくれたけど状況は悪すぎる、航平はあの中国人に捕まっていて、航は近藤の腕の中、番成立は防げたものの兄貴はこちらの部屋に気が付いていない。

どうしたらこの状況を打開できる??


静まり返った場所にテクテクと歩く少年が1人いた。

「パパ、僕死んでもいいよね?」
「瑠衣くん!!」

「瑠衣なにを勝手なこと言ってるんだ?」
瑠衣くんは拳銃を自分の頭につけていた。

「だって、もういらないでしょ、完全体がそこにあるのであれば」
「……完全体ってなに?」


「ふぅー瑠衣はなにを考えているのかな?」
「僕と航平くんを交換しませんか?」


近藤は一瞬驚いた表情をしていた。
「アハハ!!」と大きな笑いが耳に届いた。

「いつどこでそんな言葉を覚えたんだ?」
「お願い、航平くんの命を取らないで」

「このお兄さんはいいのかな?」
「お兄さんも返してほしいけど、僕の命だけじゃ釣り合わないから」
「瑠衣、よく状況を理解しているね」
「シンさん、航平くん解放してあげてください」

「イイノカネ?」
「はい、個体さえあれば、それに優秀なαの精液も搾取済みなので子供はいりませんよ」
一度壁にちらっと向いた瞬間を聡は見逃さなかった。

そこにいるんだな、恭平。


聡が部下に小声で連絡するが
「動くなっお姫様の頭吹っ飛びますよ」
「ぐっ」

拳銃を頭に突き付けられる。

航平が走ってこちらに向かってくるが瑠衣くんに呼ばれる。
「航平くん、こっちに来て!!」

「え、でもお母さんが」と足取りがおぼつかない。

「航平、瑠衣くんのそばにいて」
「う……うん」


「いいですね、そろそろ時間ですし撤退しますか、あなたは人質として一緒に来てもらいますからね」

「ぐっ」

「おい! 羽衣一族を敵にまわしておいてそう易々と逃げられるとでも思うなよ、てかあんた何者だ」

聡さんは拳銃を近藤に向けている。

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