遅発性Ω~試し読み~

枝浬菰文庫

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第一章

杉本

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我儘言っても仕方ないかと諦め
その日を終えようとしていたが、

「澤田様、大変申し上げにくいのですが、明日の世話係は杉本が務めさせていただきます、ご不便をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします」

「わかった、じゃもう少し一緒にいてくれないか?」
「?」

「人とこうして話すの久々なんだ、それに君と一緒にいるとなんだか落ち着くというか、ワインは飲めるのか?」

「いえ、仕事中ですので…」
「そうか、なら少しだけ傍にいてくれ」

「かしこまりました」

柊とたわいない話をした。

さっき思った、窓ガラスに手をつけてHをしたら楽しいだろうな
と話すとぼっと赤くなっていた。

αだが初体験はまだなのか…可愛いらしい行動についついはにかんでしまった。

次の日
「澤田様、おはようございます」
「あ、おはよう」

「柊ではなく申し訳ございません」
「いえ」
顔に出ていたのか感づかれてしまった。


「柊はハイスペックですので、人気が高く、あちこちと動いています」
「たしかに、彼ハイスペックですよね」

「はい、私はいちを先輩なのですが、柊がハイスペックすぎてたまにおいてけぼりにされてしまいます」
よく喋る従業員だが、柊のことを知れて少し得した気分だ。

「そういえば、彼、童顔ですよね?」
「ぶふっ」
!?

「失礼、実はそうなんです、一番の悩みどころです」
従業員が笑いを含めた回答だったので、仲がいいのかと少し安心した。

俺も昔、ハイスペックすぎて
【αだから当たり前だよね】と言われたことがある。

でもこのホテルはαの集まりだから共感しているのかもしれない。

なかなかいい環境だ。

「今日のご予定は?」
「今日は会社に向かう、悪いが帰り迎えをよこしてもらってもいいか?」

「送迎いたします」
「ああ、悪いな」

「とんでもございません」

杉本という従業員もなかなか物腰が柔らかく、同じαでも話やすい。
支度をしエレベーターに乗り込むとなにやら甘い匂いが

「なんですか、この匂いは」
と杉本のほうを見ると顔が強張っていて、拳を握っていた。

「きっとパティシエがケーキをひっくり返してしまったんでしょう」
と明らかに嘘。

これはΩの香り?
なぜこのホテルで?

1階につくと、近くにいた従業員に
「ここのエレベーター、本日は使用禁止で」
と告げていた。

やはりあの匂いはΩの匂い。

これ以上深追いはしないほうがよさそうと判断し会社に向かった。
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