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第一章:神の暇つぶし

75話ー【殺人事件の謎】般若

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 四人は遂に、一階の探索エリア最後のヒントへと、歩を進めていた。
 赤い絨毯の上を歩く五人。
 そんな中、後頭部で腕を組んでいる蒼が、口を開く。

「次って冬華の部屋だっけ?」

「はい、そうですよ?」

「いやさ、特に何も無さそうじゃね?気の所為?」

「その心は?」

「だってさ、今のところ大きなヒントがあったのって、奈津子と由紀子、そして俊夫に関係する所じゃない?冬華関係の調理室だって、特に何も無かったし」

「「「確かに」」」

「まぁ、あれじゃない?冬華の部屋に何も無かったら、それこそ犯人の可能性は無くなるんじゃない?」

「ま、そうだな」

「着きましたよ。ここが私の部屋です」

 冬華はドアノブに手を伸ばすと、ドアを開け、その内装を顕にする。
 その内装は可愛らしく、如何にも女子の部屋、という感じだった。

「「くっ!なんか負けた気がする……っ!」」

 悔しそうに拳を握る女子二人。

「「これさ、『陽葵・綾華』より女子力あるねWWW」」

 男二人がそう言った瞬間、それぞれの顔面に右ストレートが決まり、廊下の壁にめり込んだ。

「「グハッ!!」」

 頭を手で抑えながら起き上がる男子二人の前には、鬼神の如く怒りのオーラを纏っている、般若が二人居た。
 二人の般若は、手をゴキゴキ鳴らすと、そっと微笑む。

「「ふふっ…………死んで」」

「「いやあああああああああ!!!!」」

 ボコ、ドカ、ドン、カンッ……。
 十秒近く男二人を蹂躙した般若二人からは、鬼神の如く怒りのオーラが消失し、陽葵と綾華の姿に戻る。
 蒼と樹は? と言うと、全身グルグル巻の包帯姿になっているが、一瞬で回復し、元の姿に戻った。

「とんだ酷い目にあったぜ……」

「あぁ……痛かった……まぁともかく、早く探索しよ」

「「「はーい」」」

 冬華の部屋に合った物はこうだ。
 ──ベッド。
 ──下着の入っていたタンス。
 ──私服とメイド服が入っていたクローゼット。
 ──お料理系の本が入っている本棚。
 ──由紀子から貰ったと言うぬいぐるみ。
 ──由紀子とのツーショットの写真立て。
 ──「可能性」が花言葉の青いバラの花瓶。
 こんなものだった。
 タンスとクローゼットは女子組で探索し、その他を男子二人が探索。
 ここだけの話、それはそれは可愛らしい下着で、また、頭を打つ音が聞こえたのだとか。
 お料理系の本は、自分が食事係だからと由紀子に買って貰ったそうで。
 ぬいぐるみは、自分の誕生日に、由紀子から貰ったとのことだ。
 由紀子とのツーショット写真と言い、なんと親子仲の良いことか。
 そう思うと四人は、万が一、由紀子が犯人だった場合、冬華がどう思ってしまうのか? と、心を痛めた。
 可能性が花言葉の青いバラは、親として、由紀子が冬華の可能性を信じているからなのだろう。
 それらが何を意味するのかは分からない。
 しかし、これだけは言えるだろう。
 四人はまだこの事件の本質に、辿り着いて居ない、と。

―――
 
【作者コメント】

 大変長らくお待たせしました。探偵ごっこは、もうお終い。次回より本格化します。
 本格的な動機はまだですが、犯人、凶器、死因、全て出ておりますし、難しくはありますが、ピースを組み立てることで動機の推理も出来ます。
 読者の皆様も推理してくださいね。
 
ーーー
 
【死体の状態】
〇縄に首を吊られた状態
〇頭が膨張しており、顔が赤黒くなっている
〇首が伸びて黒くなってる
〇死斑が中毒性を示す赤色
※自殺に見立てた他殺。一酸化炭素中毒と青酸中毒での毒殺の可能性あり

【写真から見た現場】
〇部屋の窓が閉まっており密室状態
〇争った形跡もなく部屋は
〇パソコンと本が入っている本棚がある

【登場人物】
〇西園寺 奈津子(30歳)
▶︎被害者の妻
▶︎豪華な装いを着ている
〇西園寺 俊夫(32歳)
▶︎被害者
▶︎奈津子の夫
〇西条 由紀子(38歳)
▶︎中年女性のメイド
▶︎冬華の母
〇西条 冬華(18歳)
▶︎女子のメイド
▶︎冬華の娘

 
【探索エリア】
 
『外』
 
○家庭菜園場
▶︎ キャベツやトマトなどの野菜が植えられている
○花壇
▶︎ バラ(赤黄青)やラベンダーなどの花が植えられている
▶︎ 踏みつけられてボロボロなラベンダー
(愛がボロボロだから?)
○倉庫
▶︎使われて少なくなっている農薬
▶︎土が付着しているスコップ
▶︎様々な植物の種
▶︎肥料

『一階』
 
○調理室
▶︎冷蔵庫
・家庭菜園で採れた野菜
・魚
・肉
・調味料
▶︎水面台
▶︎食器
▶︎包丁(錆なし)
○ダイニングホール
▶︎大きなテーブル
▶︎三つしかない椅子(左奥だけ無い)
▶︎豪華な時計(6時45分13秒で止まっている)
▶︎シャンデリア
○談話室
▶︎カレンダー(7月)
▶︎本棚
・7月27日の新聞紙が見つかる
▶︎枯れたラベンダーの花瓶
(俊夫への愛が枯れた?)
○由紀子の部屋
▶︎ベッド
▶︎タンス
・下着
▶︎クローゼット
・メイド服
・私服
▶︎二つの写真立て
・冬華とのツーショット写真
・奈津子とのツーショット写真
(仲の良い人との写真?)
▶︎黄色いユリの花瓶と黄色いバラの花瓶
(俊夫への憎悪と、冬華か奈津子への思いやり?)
▶︎本棚(花図鑑)
・赤いバラは情熱や愛情
・黄色いバラは幸福や思いやり、嫉妬
・青いバラは可能性
・ラベンダーは幸せや期待、貴方を待っています
・黄色いユリは憎悪
○冬華の部屋
▶︎ベッド
▶︎タンス
・下着
▶︎クローゼット
・私服
・メイド服
▶︎本棚
・お料理系統の本
▶︎ぬいぐるみ
(由紀子から貰ったプレゼント)
▶︎由紀子とツーショットの写真立て
▶︎青いバラの花瓶

『二階』

○奈津子の部屋
○俊夫の部屋
▶︎パソコン
▶︎本棚
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