神とゲームと青春を！～高校生プロゲーマー四人が神様に誘拐されて謎解きする～

第一章：神の暇つぶし

65話ー【殺人事件の謎】憶測に囚われて

　倉庫の中には家具が豊富なダイニングキッチンと、物置部屋があった。
　そんな倉庫の内装を冬華に案内された四人は、苦虫を噛み潰したような顔で悔しがる。

「「「「もはや物置がサブじゃん…………ぐぬぬ」」」」

「まぁまぁ……そんなことより、この物置部屋にある道具で農作業をしているんですよ」

　冬華に紹介された物置部屋には、日頃から使われているのか中身の少ない農薬と、土が付着しているスコップ、野菜や花等の植物の種、肥料があった。

「特に変わったことはないな……」

「うん。農薬もスコップも種も肥料も、全部普通よね」

「ここには何も情報が無いのかな？」

「「「んーーー…………」」」

　陽葵と綾華と蒼が腕を組みながら悩んでいると、顎に手を当てている樹が口を開く。

「僕はちょっとメタいけど、二人の警官が一酸化炭素中毒と青酸中毒の可能性があるって言ってたじゃん？だから死因はこの二つのどっちかだと思うんだ」

　樹が口にしたのはゲーム的要素から来るメタ考察。
　ことゲームにおいて出た情報は、後の伏線やヒントになったりすることが多い。
　それがブラフの可能性も捨てきれないが、情報の少ない今としては貴重だ。
　そんなメタ考察を、樹は自分の知識で補強する。

「それで一般人が手に入れられる、という前提なら。前者は、煉炭や灯油と薪ストーブ。後者は青酸カリが有力候補だと思う」

　煉炭と青酸カリは有名だろうか？
　どちらも一般人の手に入る毒物であり、それで自殺をする人が多いのだ。
　何でも楽に死ねるから……だとか。
　だが、その認識は間違いだ。
　一酸化炭素中毒は軽度で酷い頭痛や吐き気、中度から重度で意識の消失や痙攣、そして重度で死に至る。
　そこに痛みが無いだろうか？
　──否である。
　青酸中毒の場合、軽度なら一酸化炭素中毒と症状が大概同じなのだ。
　が、重度になると肺水腫はいすいしゅや呼吸停止に陥る。
　肺水腫とは、肺の中に水分が溜まることで呼吸困難になり最悪の場合死に至るのだ。
　そこに痛みが無いだろうか？
　──否である。
　そんな有名な毒物を凶器だと樹は予想したのだ。
　しかし、この倉庫にはストーブも青酸カリもない。

「でもさ、それココに無くないか？」

「まあ、そうだね……」

「じゃあ、ここの探索は終わりかしら？」

「うん。多分そうじゃない？めぼしい物も無いし」

　この倉庫内にある何の変哲もない一般的な物に、四人は何も思わなかった。
　──何となくあるだろうと言う固定概念に。
　──何となくそうなるだろうと言う憶測に。
　囚われてしまったのだ。

「それじゃあ、次は一階の探索しようぜ！！」

「「「おーーーーーーーーーーー！！！」」」

　ここの探索を終えたと思い込んでいた四人には、冬華の零した言葉は聞こえない。

「あれ？こんなに農薬使われていたっけ？それに最近は特に畑仕事してなかったのに、なんでスコップに土が着いてるんでしょうか？私、この前綺麗にしたのになあ……」

　その声は四人の鬨の声ときのこえへと絆され、溶けて消えたしまったのであった。
　
―――

【死体の状態】
〇縄に首を吊られた状態
〇頭が膨張しており、顔が赤黒くなっている
〇首が伸びて黒くなってる
〇死斑が中毒性を示す赤色
※自殺に見立てた他殺。一酸化炭素中毒と青酸中毒での毒殺の可能性あり

【写真から見た現場】
〇部屋の窓が閉まっており密室状態
〇争った形跡もなく部屋は綺・麗・だ
〇パソコンと本が入っている本棚がある

【登場人物】
〇西園寺　奈津子（30歳）
▶︎被害者の妻
▶︎豪華な装いを着ている
〇西園寺　俊夫（32歳）
▶︎被害者
▶︎奈津子の夫
〇西条　由紀子（38歳）
▶︎中年女性のメイド
▶︎冬華の母
〇西条　冬華（18歳）
▶︎女子のメイド
▶︎冬華の娘

　
【探索エリア】
　
『外』
　
○家庭菜園場
▶︎ キャベツやトマトなどの野菜が植えられている
○花壇
▶︎ バラ（赤黄青）やラベンダーなどの花が植えられている
▶︎ 踏みつけられてボロボロなラベンダー
○倉庫
▶︎使われて少なくなっている農薬
▶︎土が付着しているスコップ
▶︎様々な植物の種
▶︎肥料

『一階』
　
○調理室
○ダイニングホール
○談話室
○由紀子の部屋
○冬華の部屋

『二階』

○奈津子の部屋
○俊夫の部屋
▶︎パソコン
▶︎本棚