上 下
73 / 98
第一章:神の暇つぶし

63話ー【殺人事件の謎】ボロボロのラベンダー

しおりを挟む

「「「「す、すげぇ……」」」」

 外の探索エリアに着いた四人は、その広さに言葉を失っていた。
 立ち尽くして目を点にしている四人に、冬華はクスリと笑うと外の探索エリアの案内を始める。

「ふふっ……ここ広いですよね。私も初めて見た時、皆さんと同じ様な反応をしました。……と、話が脱線してしまいましたね。今から皆さんに、ここの案内をします。こちらへどうぞ」

 まず最初に四人が案内されたのは家庭菜園場。
 家庭菜園場からは肥料の匂いがして、キャベツやトマトなどの野菜が植えられている。
 
「ここで採れた野菜達は、よく皆で食べるんです。結構瑞々しくて美味しいんですよ?」

「ホントに美味しそう……このトマト食べても良い?」

「良いですよ、陽葵さん!」

「じゃあ僕も」

「うわ、ずりぃ!俺も!」

「そんなに横着しないの……私もー!」

「「「綾華もじゃねーか!!」」」

「テヘペロッ!」

「ふふっ……トマトは逃げませんよ?トマトを食べながら次に移りましょう。こちらへどうぞ」

 押し合いながらトマトを巡って争っている四人に、冬華は可笑しそうにクスリと笑うと手先で方向を示す。
 その方向には花壇があった。
 屋敷へと続く出入口付近にある花壇には、バラやラベンダーなどの花が植えられている。

「ここの花壇には左側から順番に赤、黄、青のバラと、ラベンダーが植えられていますねちなみにここの家庭菜園場と花壇、全部お母さんが一人でしているんですよ?」
 
 ガブ、ブチュリ……。
 と、そんな咀嚼音を出している四人が冬華の説明を聴きながら色々見ていると、冬華が足を止めて声を荒らげる。

「お母さんの趣味らしい、です……って!何ですかこの有り様は?!」

 冬華の視線の先には綺麗なラベンダーが……いや、ボロボロなラベンダーがあったのだ。
 花壇の土には足跡があり、ボロボロになった原因が踏み付けられたことだと分かる。
 土に散り、土で汚れているラベンダーの花弁。
 ポッキリと折れているラベンダーの茎。
 抉られた様に荒らされている花壇の土。
 それらを目の当たりにした冬華は泣き崩れ、四人はトマトを食べるのを辞めた。

「何でこんなことになってるんですかぁ……このラベンダーは奈津子様が俊夫様を想って大事にしていたモノだったのにいいいいいいいいいいい!!!!」

「「「「………………」」」」

 四人からは言葉が出ない……いや、出せなかったのだ。
 こんなにも泣いて悲しんでいる女の子に、安い慰めの言葉を掛けられるだろうか?
 ──否。
 少なくとも四人には掛けれなかったのだ。
 しかしそんな四人は、膝をついて泣いている冬華の高さまでしゃがむと、それぞれがトマトを持っていない左手で冬華の頭を、冬華の背中を、冬華の肩を優しく摩った。
 ボロボロのラベンダーに横目を向けながら。

ーーー

【死体の状態】
〇縄に首を吊られた状態
〇頭が膨張しており、顔が赤黒くなっている
〇首が伸びて黒くなってる
〇死斑が中毒性を示す赤色
※自殺に見立てた他殺。一酸化炭素中毒と青酸中毒での毒殺の可能性あり

【写真から見た現場】
〇部屋の窓が閉まっており密室状態
〇争った形跡もなく部屋は
〇パソコンと本が入っている本棚がある

【登場人物】
〇西園寺 奈津子(30歳)
▶︎被害者の妻
▶︎豪華な装いを着ている
〇西園寺 俊夫(32歳)
▶︎被害者
▶︎奈津子の夫
〇西条 由紀子(38歳)
▶︎中年女性のメイド
▶︎冬華の母
〇西条 冬華(18歳)
▶︎女子のメイド
▶︎冬華の娘

 
【探索エリア】
 
『外』
 
○家庭菜園場
▶︎ キャベツやトマトなどの野菜が植えられている
○花壇
▶︎ バラ(赤黄青)やラベンダーなどの花が植えられている
▶︎ 踏みつけられてボロボロなラベンダー
○倉庫

『一階』
 
○調理室
○ダイニングホール
○談話室
○由紀子の部屋
○冬華の部屋

『二階』

○奈津子の部屋
○俊夫の部屋
▶︎パソコン
▶︎本棚
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

毎月一本投稿で、9ヶ月累計30000pt収益について

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
9ヶ月で毎月一本の投稿にて累計ポイントが30000pt突破した作品が出来ました! ぜひより多くの方に読んでいただけた事についてお話しできたらと思います!

ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド
キャラ文芸
 沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。  大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。  沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

僕は今日から狐の女の子になった

恋愛
「一緒に行こう」とある日の夜、立派な耳と尻尾を持った男に拐われた伊吹。人間も性別もやめちゃうことに!

処理中です...