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第一章:神の暇つぶし
53話ーとなりのニャル様
しおりを挟む主婦……奥さん……蒼と樹の奥さん………………み。
ハス様の一言によって連想ゲームをした二人は、それぞれの想い人との未来を思い描いた。
陽葵は、エプロン姿の自分が毎朝蒼に「ご飯にする?それとも……あたし、にしとく?」をする妄想。
綾華は、エプロン姿の樹が毎朝自分に「ご飯にする?それとも……僕を食べちゃう」をされる妄想。
思春期真っ只中の二人はそんな恥ずかしい妄想を自分勝手にして、これまた自分勝手に自爆したのだ。
顔を真っ赤にして湯気を出している二人に他の四人が駆け寄ると、蒼が陽葵を樹が綾華を抱き抱える。
「「『陽葵・綾華』!大丈夫!?」」
「「『蒼・樹』……だい、じょー、ぶ」」
ち────ん………………。
薄れ行く意識の中、陽葵と綾華が最後に見たのは心配そうにしている二人の姿であった。
◆◆◆
見知らぬ天井。
フカフカで暖かい布団。
右隣はスヤスヤと眠る綾華。
左隣には顔を赤らめて寝っ転がっているニャル様。
「おはよう。陽葵」
「んーー……っ!ふぁー…………おはよう、ニャル様……」
寝たまま目を擦っては身体を伸ばた陽葵は、寝起きの掠れた声でニャル様に挨拶を返した。
(…………ん?ニャル、様……?………………っ!?)
「きゃあああああああああああああ!!!!!!」
隣にニャル様が寝ていたことで驚愕した陽葵は、甲高い声で悲鳴を上げた。
その悲鳴をニャル様は驚いたことで反射的に目を瞑り、そして耳を手で閉じることで防いだ。
しかし右隣に寝ている綾華は耳を防げておらず、その苦しみから呻き声を上げて目を覚ます。
「んーーっ!!はぁ…………もぉ、何を騒いでいるのよ」
「ホントだよね。ボクも困っちゃうよ……」
寝起きの掠れた声で陽葵に苦情を入れた綾華に、肘枕をして寝ているニャル様が深く頷き同意した。
そんなニャル様に陽葵は、ガバッ!と布団から起き上がるとチョップを入れる。
「って!それはアンタの所為でしょうが!!」
「あだっ!……いててて。暴力はんたーい!」
ニャル様は陽葵にチョップをされた勢いで顔を一瞬仰け反らせると、右目を軽く手で抑えながら仰け反った顔を戻した。
「え……そ、そんなに痛かった…………?え、え、ごめん」
左目の涙袋には雫を孕んでおり、ニャル様の下睫毛から滴っているのだ。
そんなニャル様の姿を見てやり過ぎたと思ったのか、陽葵はオロオロとしながら分かりやすく狼狽えている。
その様子を見てニャル様は可笑しそうに笑った。
「ぷっ……あはははは!陽葵は素直で良い子だね!!」
「えっ…………?」
「だってさ、神であるボクに人間のキミがダメージを与えられる訳ないでしょ?さっきのは軽いジョークだよ」
「もう!もう!もーーーー!!!!」
「はははは!効かない効かない!!」
揶揄われた陽葵がムゥ……とむくれながら、ニャル様のことをポコポコと叩いた。
それに対して気にもかけてない様子のニャル様が笑っていると、先程までの間で布団を畳んでいた綾華が二人に話しかける。
「はいはい。そんなことしてないで、起きたんだから三人と集合しましょう?ニャル様、何か約束してるの?」
「ははは!!…………んっ?あぁ、約束してるよ?そうだね、それじゃあ行こうか……ご飯に!」
「ムゥ…………分かった……」
差し伸べるニャル様の手を陽葵が取ると、三人は夜を過ごした部屋を後にした。
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