上 下
62 / 98
第一章:神の暇つぶし

53話ーとなりのニャル様

しおりを挟む

 主婦……奥さん……蒼と樹の奥さん………………み。
 ハス様の一言によって連想ゲームをした二人は、それぞれの想い人との未来を思い描いた。
 陽葵は、エプロン姿の自分が毎朝蒼に「ご飯にする?それとも……あたし、にしとく?」をする妄想。
 綾華は、エプロン姿の樹が毎朝自分に「ご飯にする?それとも……僕を食べちゃう」をされる妄想。
 思春期真っ只中の二人はそんな恥ずかしい妄想を自分勝手にして、これまた自分勝手に自爆したのだ。
 顔を真っ赤にして湯気を出している二人に他の四人が駆け寄ると、蒼が陽葵を樹が綾華を抱き抱える。

「「『陽葵・綾華』!大丈夫!?」」

「「『蒼・樹』……だい、じょー、ぶ」」

 ち────ん………………。
 薄れ行く意識の中、陽葵と綾華が最後に見たのは心配そうにしている二人の姿であった。

◆◆◆

 見知らぬ天井。
 フカフカで暖かい布団。
 右隣はスヤスヤと眠る綾華。
 左隣には顔を赤らめて寝っ転がっているニャル様。

「おはよう。陽葵」

「んーー……っ!ふぁー…………おはよう、ニャル様……」
 
 寝たまま目を擦っては身体を伸ばた陽葵は、寝起きの掠れた声でニャル様に挨拶を返した。
 
(…………ん?ニャル、様……?………………っ!?)

「きゃあああああああああああああ!!!!!!」

 隣にニャル様が寝ていたことで驚愕した陽葵は、甲高い声で悲鳴を上げた。
 その悲鳴をニャル様は驚いたことで反射的に目を瞑り、そして耳を手で閉じることで防いだ。
 しかし右隣に寝ている綾華は耳を防げておらず、その苦しみから呻き声を上げて目を覚ます。

「んーーっ!!はぁ…………もぉ、何を騒いでいるのよ」

「ホントだよね。ボクも困っちゃうよ……」

 寝起きの掠れた声で陽葵に苦情を入れた綾華に、肘枕をして寝ているニャル様が深く頷き同意した。
 そんなニャル様に陽葵は、ガバッ!と布団から起き上がるとチョップを入れる。
 
「って!それはアンタの所為でしょうが!!」

「あだっ!……いててて。暴力はんたーい!」

 ニャル様は陽葵にチョップをされた勢いで顔を一瞬仰け反らせると、右目を軽く手で抑えながら仰け反った顔を戻した。

「え……そ、そんなに痛かった…………?え、え、ごめん」
 
 左目の涙袋には雫を孕んでおり、ニャル様の下睫毛から滴っているのだ。
 そんなニャル様の姿を見てやり過ぎたと思ったのか、陽葵はオロオロとしながら分かりやすく狼狽えている。
 その様子を見てニャル様は可笑しそうに笑った。
 
「ぷっ……あはははは!陽葵は素直で良い子だね!!」

「えっ…………?」

「だってさ、神であるボクに人間のキミがダメージを与えられる訳ないでしょ?さっきのは軽いジョークだよ」

「もう!もう!もーーーー!!!!」

「はははは!効かない効かない!!」

 揶揄われた陽葵がムゥ……とむくれながら、ニャル様のことをポコポコと叩いた。
 それに対して気にもかけてない様子のニャル様が笑っていると、先程までの間で布団を畳んでいた綾華が二人に話しかける。

「はいはい。そんなことしてないで、起きたんだから三人と集合しましょう?ニャル様、何か約束してるの?」

「ははは!!…………んっ?あぁ、約束してるよ?そうだね、それじゃあ行こうか……ご飯に!」

「ムゥ…………分かった……」

 差し伸べるニャル様の手を陽葵が取ると、三人は夜を過ごした部屋を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...