最強カップルの英雄神話~チート転生者と最強神姫の異世界ダンジョン攻略譚~

初心なグミ

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ダンジョン・攻略篇(1~4層)

39話『五人の精霊と契約した話』

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 ダンジョンに足を踏み入れる数日前のこと。
 僕はアルテミスさんと一緒に、──教会へと来ていた。
 
「アルテミスさん。付き添いをしてくれて、ありがとうございます! 一人だと、少し不安なので……」

「なに、斯様なことくらいで感謝せんで良い」

「アルテミスさん……!」

 やっぱりアルテミスさんよ!
 その美貌は然ることながら、器も大きくて優しいし。
 そして何かある毎に、みんなを心配してくれるのだ。
 まさにフィアナ騎士団の、──ママ的な存在である。

 そんなアルテミスさんの、海の様な懐の広さに僕が感極まっていると、アルテミスさんは僕を見た。

「そんなことよりも余は、ハルトが精霊と契約することが出来るのか……はたまた、出来たとしてどの属性の精霊であるのか。それが気になるのじゃ」

 そうなのだ、僕達が教会に足を運んだ理由は、僕が精霊との契約をするためなのだ。
 一体何故、僕が精霊と契約をするのか?
 それは・・・精霊と契約をすることで、ダンジョンを攻略するときの、圧倒的な力になるからである。

 それこそ、精霊と契約出来れば……
 精霊を介して大気中の魔素を吸収、そして魔法力を底上げすることも可能であり。
 その他にも、魔法では無くスキル寄りで、精霊と合体することも出来れば、精霊を解放することも出来る。
 要は精霊との契約は火力アップであり、してるのとしてないのとでは、力に雲泥の差が出来るのだ。

 だからこそ僕は今、こうして、アルテミスさんと一緒に教会に来て居るのである。

「んー……どうですかね? それ、僕自身が結構気になっていたりします。まぁ、当たり前ですけど」

「それもそうじゃのう……と、目的地に着いたか」

 会話をしていた僕達は、目的地へと辿り着いていた。
 辺りに見えるは複数のチャーチチェアに、騎士団本部でも見た女神ヘラ様のステンドグラス。
 そして・・・天井から光が注ぐ、──祭壇だ。
 
 その光景の、何と神秘的なことか。
 言葉では表しきれない情景に、胸が高鳴りをみせる。
 
「めっちゃ神秘的で、綺麗ですね……」

 ザ・ファンタジーを目の前にした僕は、その胸に秘められた感動を共有し、アルテミスさんの方を見た。
 すると僕の目には切望の眼差しで祭壇を見ている、そんなアルテミスさんの姿が映ったのだ。

「あれ……? どうかしたんですか?」

「いや、ちーとばかしな……。そんなことよりもハルト、捧げる祈りの言葉は覚えておるか?」

 あ、話を逸らした……。
 でも……そうだよね。誰しもさ、他人に言いたく無いことの一つや二つあるよね。
 ならここは、聞くのも野暮ってものか……。

「はい、大丈夫です! めっちゃ暗記してます!」

「そうか……それならあの、精霊の祭壇に祈ると良い」

「はいっ!」

 精霊の祭壇の前に跪くと、目を閉じて手を組み出来る限り凛々しいポーズで、僕は精霊に祈りを捧げる。

現世うつしよを形作りし五の元素よ。我が一生に準ずる運命にあるのならば、古の契約のもと我が精神に宿りて、未来を切り開かんとす我に、その力を捧げたまえ」

 僕が捧げるは、運命に対する覚悟の祈り。
 それを聞き届けた精霊が僕を見て、その運命に興味を惹かれたとき、精霊との契約が成されるのだ。

(あぁ……緊張する。契約出来なかったらどうしよう……)

 得体の知れない不安が脳裏を過ぎる。
 そんな僕には何色も存らず、まるで海の暗闇に精神が沈んでいるかのようだ……。
 
 やがて身体の感覚が、透き通る風の様に消えた。
 すると僕の目の前に、五人の少年少女が現れた。
 
 その五人の少年少女はそれぞれが、赤色・水色・黄色・緑色・橙色で形作られている。

「へぇー! キミ凄いね!」

 そう赤色の男の子が……

「そうね! キミ凄いわ!」

 そう水色の女の子が……

「凄過ぎして引いちゃう!」

 そう黄色の女の子が……

「ねぇキミ、一体どんな前世をしているんだい?」

 そう緑色の男の子が……

「少なからずキミはね、人五倍は辛い目にあうね」

 そう橙色の男の子が、──言った。

(へぇ……僕、人五倍は辛い目にあうのか……って?!)
 
「人五倍も!?」

「もーっ、橙ちゃん! 嘘は、めっ! でしょ!」

 ホッ……嘘だったのか……。

「この人はねっ、人百倍は辛い目にあうわ!」

「うんうん、そうだよね。辛い目にあうとしたら、人百倍くらいだよね・・・って! それじゃ増えてるよ!!」

「むぅ……折角僕が、気遣って嘘ついたのに……」

「うん、ありがとね?! ならせめてさっ! 最後まで否定して欲しかったよね!?」

 そう前のめり気味に僕が言うと、五人の少年少女は僕のことを蔑む様に見て暴言を吐き捨てる。

「「「「「ドMかよ、キモ……」」」」」

「ドMじゃないよ!!!!!?????」

 はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
 なんだろう、なんなんだろうコレ……。
 新手の虐めか何かですかね?

「まー良いや……そう言うキミ達はさ、一体何者なの?」

 僕の問い掛けに五人の少年少女は、素っ頓狂な表情で互いに見詰め合い……そして、みんな揃って言うのだ。
 ──『火・水・雷・風・土』の精霊だよ?
 と、何を今更感を出しながら……。

「えっ、ガチ? あっ・・・でも、それもそうかも……」

「まーなぁ……実際キミが俺達を呼んだしな~」

 ですよね~……。
 自分で精霊に契約を持ち出しといて、キミ達何者なの?って発言はヤバいよね……。

 そう項垂れていると、水色の女の子が緑と橙色の男の子の方を見て、その疑問を呈した言葉を紡ぐ。

「そー言えばさ……何でこの人は人間なのに、緑君と橙君がここに居るの?」

「「「「そー言えばそうじゃん!」」」」

 核心をついた水色の女の子の言葉に、思わず当人である緑君と橙君までハッとしている……。
 
「確か風と土の精霊ってさ、それぞれがエルフとドワーフにしか懐かないんだよね?」

「懐くって……言い方よ……」

「あっ……ゴメン……」

「まぁ良いけど……だってそもそもさ、こうやって精霊が人類の前に現れること無いし」

 橙色の男の子の言葉に、僕は驚愕とした。

「えっ、そうなの!?」

「まぁね……」

 そう言って一拍置いた橙色の男の子。
 そんな橙色の男の子は、みんなの方を向いて言う。

「てかさみんなも多分、この人の運命に惹かれて此処に現れたんだよね?」

「「「「うん……」」」」

 だって……

「凄いメラメラと燃える運命を感じたから……」

 そう赤色の男の子が……

「波立つ海の様な波乱な運命を感じたから……」

 そう水色の女の子が……

「天を揺がす稲妻の様な運命を感じたから……」

 そう黄色の女の子が……

「未来へ進む追風の様な運命を感じたから……」

 そう緑色の男の子が、──言った。

「でしょ? 僕だって、大地に大樹を芽吹かせる様な運命を感じたから、こうして契約に応じようとしてる。それにこの人の運命を見たときさ、みんなで度肝を抜かして驚愕したでしょう? つまりはさこの人……」

 ──この世界の運命を背負ってるんだよ。

 そう言った橙色の男の子の言葉に、みんなは納得した様な表情で頷いている。
 しかし、この世界の運命を背負っているとは、何と言い得て妙な言葉なのだろう。
 だってさ僕、実際に女神ヘラ様から、「この世界を頑張って救ってねー!」って言われてるから……。

「自分で言うのも何だけど、実際そうなんだよね。だって僕ってさ一応、女神ヘラ様の使徒的な存在だし……」

「「「「「えええええええ!!!???」」」」」

 めちゃくちゃ驚くじゃん……。
 さっきの運命を見る云々って何なんだ……。
 まぁ良いけどさ……。

「ガチ?! それなら納得だよ!」

「そうなの?」

 うんうんと頷く、五人の少年少女。
 そんな五人の少年少女は、一人ずつ僕の頭に触れた。

「よしっ! それなら早速……。俺は火の精霊! 俺は名前が無いから火と呼んでくれ! ヨロシクな!」

 そう言った火の精霊は、僕の精神へと飽和した。

「次は私ね……私は水の精霊です! 私も名前がありませんので、水とでも呼んでください! ヨロシクね!」

 そう言った水の精霊は、僕の精神へと飽和した。

「私は雷の精霊よ! 雷とでも呼んで頂戴! 一応言っておくけど、私が最強だから! 私を優遇しなさい!」

「分かったよ。じゃあさ一番最初は、雷を頼るね!」

「ふんっ! それで良いんだから!」

 そう言った雷の精霊は、僕の精神へと飽和した。

「僕は風の精霊。風とでも呼んでください。貴方が独りのときでも、僕達が着いていますよ」

「うん、ありがとう。頼りにしてるね」

「はい。貴方の運命に、幸があらんことを……」

 そう言った風の精霊は、僕の精神へと飽和した。

「はぁ……やっぱり最後かぁ……」

「そうみたい……ゴメンね?」

「いや、別に大丈夫。ちなみに僕は、知ってると思うけど土の精霊だぞ。土君とか、橙ちゃんとでも呼んでね」

「うん、分かったよ」

「きっとキミは、色んな災難に見舞われるだろう。でも挫けないでさ、護りたい何かの為に頑張ってよ。その何かを護れるのはさ、キミだけだから」

 そう言った土の精霊は、僕の精神へと飽和した。

「うん……分かった……」

 そうして意識が覚醒した僕は、アルテミスさんに結果を報告して、そして騎士団本部へと一緒に帰った。

 みんな、めちゃくちゃ驚いてて面白かったなぁ……。

◆◆◆

 羽をパタつかせているラビバードが、四方八方から此方へと飛び込んで来る最中。
 精霊合体《スピリット・アドバンス》を宣言した僕は、契約した精霊に語り掛ける様に、その名を呼んだ。

「いくよ! 雷ちゃん!!」

(ふんっ、ちゃんと呼んだわね! 任せなさい!)

 心の内から聞こえて来た言葉と共に、
 僕は精霊合体《スピリット・アドバンス》を完全化させる!

「──雷形態タケミカヅチッッッ!!」

 このとき・・・
 僕の髪と瞳が、黒色から黄色へと染まっていた。
 僕の全身から、黄色のオーラが放出されていた。
 視界を埋め尽くす攻撃を全て、──避けていた。
 
―――

【世界観ちょい足しコーナー】

○精霊契約
精霊との契約とは、精霊が人間個人の持つ運命に興味を惹かれたときに、その運命を共にすることを条件に、その運命に立ち向かう力を、その契約者に与えることである。

精霊
「ぼく、キミの運命を見届けたい!だからね、キミに力を上げるね!」
人類
「やったぁ!これで力が手に入ったぞー!」

この世界は全て、ダンジョンを中心に回っている。
そのため、ここに出てくる個人の運命の意味は、その人間とダンジョンとの運命にある。
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