最強カップルの英雄神話~チート転生者と最強神姫の異世界ダンジョン攻略譚~

初心なグミ

文字の大きさ
上 下
36 / 40
ダンジョン・攻略篇(1~4層)

36話『無き気配の襲来』

しおりを挟む

 攻撃魔法には、組み合わせる魔力によって、幾つかの属性が存在する。
 例えば嵐属性の攻撃魔法『ユピテル』。
 嵐属性は、雷と水と風を三つの魔力を複合させた、トリプル属性魔法と呼ばれている。
 そんな嵐属性の魔法は、持続力と殺傷能力の高い広範囲攻撃魔法で、その代償として消費魔力量が多い。
 そのためヌボアを焼き尽したユピテルは、残った余力の雷撃を僕の方へと落ちた。

「あっ、オワタ・・・うぎゃあああああ!」

 激しい光を放つ雷撃が当たり、身体がビリビリする。
 ドカンッからのビリビリ……ドカンッドカンッからのビリビリビリビリ……。
 やがてユピテルの効力が失くなると、辺りを照らしていた光が消え、アフロヘアーになった僕が姿を現す。

「何で魔法の使用者にダメージが……トホホ……」

 半分涙目で口から、ケホッと煙を吐き出した。
 その姿は滑稽であり、物凄く憐れだ。
 ──自分で自分が、虚しくなる程に。

「痛みは無かったけどさぁ……こんなん、ギャグ漫画でしか見たこと無いよぉ……服とかにもダメージ無いし……」

 僕はアフロヘアーになった髪を手で溶かしつつ、そんな泣き言を零した。
 僕の近くに、十匹のヌボアだったモノが倒れている。
 雷撃が止み終わったのを確認した仲間が、僕の方へと呆れた様子で駆け寄って来た。

 みんな、そんなに呆れてどうしたのだろうか?
 アルテミスさんに至っては、手で頭を抑えてるし……。

「ん? みんな、どうかしたのー?」

「いや、なんだ……ハルトなら一人でも大丈夫だとは分かっていたのだが……」

 手で頭を抑えていたエマがヌボアを見る。

「トリプル属性魔法を使うとは思わなくてな……」

 エマがそう言うと、みんな揃って大きな溜息を吐いた。

「「「「「はぁ……」」」」」

「そんな溜息つく!?」

 ここまで呆れられると、もはや清々しい。
 此方のツッコミも捗ると言うものだ。
 いや、まぁ……前の世界で僕、ツッコミとかしたこと無かったけどね……。
 かと言って、ボケ役だったのかと問われれば、別にそうでも無いし。

 と……そんなことを考えていると、プロメテウスとアキレウスが顔を見合って言う。

「だって、ねぇ……?」

「そうっすねぇ……」

「「オーバーキル『だ・っす』よねぇ?」」

「そんな口を合わせて言うっ?!」

 やっぱりこの二人仲良いなぁ……。
 そう戦々恐々とした、そのときだ。
 僕の耳に新事実が入ってきたのだ。

「まぁ……それも仕方あるまいて。何せこの二人は、元祖ホモプだしのう」

「えぇぇ??!! やっぱりいいいい!!!???」

「「ちっぎゃああああうっっ!!!」」

 二人の方を見て、僕は大きく驚いてみせた。
 すると、その僕なりのボケに対して反応し、二人が全力否定のタックルをして来たのだ。

「グヘ……ッ!!」

「ハルトッ!?」
 
(痛い、滅茶苦茶痛い……こーれ、ヌボアの突進を余裕で超えてます……特にアキレウスの方が!!)

 バタッ……。
 僕は二人によって、地面に押し倒された。
 僕の目には心配そうに見ているエマ、微笑んでいるヘファイストスさん、頭を摩って起き上がる二人が映った。

「いてて……」

「かぁーっ……ハルト、やっぱり丈夫っすね……」

「ハルト、立てるか……?」

 そう言ったエマが僕に、その手を差し伸べた。
 僕はその手を取り、感謝を述べて立ち上がる。

「ありがとう、大丈夫だよ」

「そっか……それもそうだな、ハルトは強いからな!」

「そう言われると照れる……」

 ポリポリと頬をかき。
 ちょっとだけ、こそばゆいな……。
 そう思ったとき、アルテミスさんと話す、ヘファイストスさんの声が聞こえてきた。

「アルテミスよ……あまり、そう弄るもんじゃないわい」

「あれは余なりの、ただのジョークじゃ」

「ジョークでもじゃよ。人に言われて嫌なことなぞで、心から面白がれる人間などおらんよ」

「確かに……それもそうじゃな……」

 はえー……ヘファイストスさん、滅茶苦茶良いこと言うじゃん。
 まぁ……良いことを言い過ぎて、言われた二人が却って申し訳無さそうにしてるけど……。

「そうじゃ……アルテミスとて、『貧乳クソババアが若作りしててワロタ』とか言われたら嫌じゃろ?」

 すうううううう…………んんんんんんんんん????

(あれー? 何でヘファイストスさん、滅茶苦茶良いこと言ってたのにそんなこと言っちゃうかなー? んー?)

 アルテミスさんは俯きながら、握られている拳をプルプルと震わせており。
 それを見たヘファイストスさん以外の四人が、顔を青ざめながらガクブルしていた。
 
「あのー……ヘファイストスさん。さっきからアルテミスさんの握られた拳が、プルプルと震えてますよ?」

「ん? アルテミスがワシの言葉に、手が震えるほど感動したのかのお? ふぉっふぉっふぉっ!」

 このとき、四人の十八歳はこう思った。

『絶対ちげえええええええ!!!!????』

「むしろ怒りマックスって感じですよ!!!! 噴火寸前の火山と同じ空気感じますよ!!!!」

 そうツッコミを、僕が入れたときだ。
 ──ドカンッッッ!!
 まるで大地が割れたかと錯覚する音と共に、屈強なヘファイストスさんが無様に倒れた。
 それは紛れもないアルテミスさんのゲンコツで、威力の高さに僕達は唖然とするばかりだ。
 
「どうやら余の手によって死にたい、そんなドワーフがいるらしいからのう。今すぐあの世に送ってやる!!」

 怒りマックスのアルテミスさんが、その拳を倒れているヘファイストスさんに、振り下ろそうとしたとき。
 ──グルルルルル。
 そんな、喉を鳴らした様な音が聞こえ……そして、その音の正体はアルテミスさんへ、──襲い掛かった。

『ガウッ!!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...