最強カップルの英雄神話~チート転生者と最強神姫の異世界ダンジョン攻略譚~

初心なグミ

文字の大きさ
上 下
35 / 40
ダンジョン・攻略篇(1~4層)

35話『対ヌボア』

しおりを挟む

 立毛状態でアドレナリン全開な、興奮状態のヌボアが此方に対して猛突進し。

『グルルルルル……』

 その角でかち上げようと、僕達目掛けて飛び上がった。

『グアッ!!』
 
 僕達は散開して避ける、避ける、避ける。
 ヌボアの足は速く、避けるときに角が頬を掠りかける。

「あぶなっ」

 避けた僕は体制を戻し、直ぐ様に神器を解放する。

「神器解放・魔術の神輪ヘカテイア

 此方を通り過ぎて行ったヌボアが、すかさず進行方向を勢い良く変え、土埃を上げながら猛突進をして来る。

『グルルルルルッ!』

 十匹全員が僕の方に突進して来た。
 突進を左斜め横方向の飛び込み前転で回避。
 すかさず仲間に攻撃の合図を送る。
 
「みんな! 僕にターゲットが向いてる! 今が畳み掛けるチャンスだよ!」

 僕は仲間の方に振り向いた。
 しかし僕の視界には、人一人映らない。

「・・・えっ?」

 ──仲間が居ない。
 
 そう思ったときだ。
 一瞬の隙を見せた僕の背中に、此方へ突進して来たヌボアの角が衝突し、かち上げられた。

「グヘ……ッ!」

 僕の身体は勢い凄まじく、宙高くへと飛ばされている。
 上へと押し出す力と、下へと押し戻す力の小競り合い。
 そのときに生まれる圧力が、僕の身体に伝わり蝕んだ。

 しかしこの感覚、何処かで経験したことがある……。
 そうだ、この感覚は確か……。
 ──トラックに轢かれたときの感覚だ。

「う"えっ、ぷ……」

 徐々に上へと押し出す力が弱まり、その力が下へと押し戻す力と拮抗したとき、僕は宙に浮かぶ。
 目に見えるは満点の青空。
 しかし、ソレを見ている僕の目は虚ろで、世界の動きがスローモーションに見える。
 やがて、拮抗していた力のバランスが崩壊して、僕は地面へと頭から自由落下した。

「う"ぇ"っ"……!」

 自由落下している僕は、辺りを見回す。
 下にはヌボアの群れが僕を待っている。
 そして近くの青草に、皆が隠れて居た。

(・・・って、おい! アイツら隠れてやがった!)

 僕の脳には、フツフツとした怒りが沸いてくる。
 それもそうだろう?
 だってアイツら、滅茶苦茶笑ってんだもん!!

 怒りに身を任せた僕は、宙で身体を半回転させることで体制を整え、下にいるヌボア目掛けて落ちる。

「おらっ! 死ねぇえええええ!!!」

 ド────ンッッッ!!
 自由落下で得た運動エネルギーと、目一杯の殺意を込めた必殺キック。
 それは、ヌボアの身体を貫通する威力を有し、着地地点付近に大量の土埃を上げた。

「コホッコホッ……コホッコホッ……」

 土埃が器官に入った僕は咳をし、目の前の土埃を払う様に手を横に振る。

「それにしても感触が生々しかったなぁ……コホッ……」
 
 やがて土埃が収まりを見せると、残った九匹のヌボアが僕を包囲し、円を描く様に周り始めた。

「殺意高いねっ!?」

 いや、それもそうか……。
 だって僕の下に、ヌボアだったモノが落ちてるし……。

 それはともかく……僕の仲間達は何時まで、隠れて居るつもり何だろうか?

 気になった僕は、ヌボアの足音が響く戦場で、仲間の方に大声で呼び掛ける。

「みんな、何で隠れてるのさぁ?! ソコに居るの、僕知ってるからねぇ!」

 僕はみんなが居る方向を向き、手を振った。
 するとエマが、可愛らしくちょこんと顔を出す。

「黙って隠れてしまいすまないな、ハルト!」

 おっと……
 飛び掛って来たヌボアを避けた。
 一瞬ヌボアにいった視線を、エマへと戻す。

「それなら助けてくださいよ!」

「すまんが、それは出来ない!」

 次々と襲い掛かって来るヌボア。
 それを右ステップで避け、半回転で避け、そしてバックステップで避けた。

「何でですかー!」

「一階層はハルト単体の実践演出なのだ!」

「えぇーっ! 聞いて無いよー!」

「ドッキリなのだから当たり前だろ! なに、本当に危うくなったら直ぐに助ける! 安心すると良い!」

「ドッキリて……」

 僕は頭を抑えながら、溜息をついた。
 すると、みんなの声が聞こえて来た。

「「「「「ハルトのちょっと良いとこ見てみたいっ!!」」」」」

 いや、古っ!!??

「昔のコンパですかコレ??!!」

 ヌボアの攻撃を避け、そうツッコミをしたときだ。 
 エマの声が聞こえてきた。

「ハルトー! 格好良いところを魅せてくれー!」

 それは、照れているエマの声。
 ニヤついてるアキレウスとプロメテウスに恥じ、その顔を赤らめつつモジモジしている。

「すうううううう……はああああああああああ……よし、本気でいくか……」

 熱病によって頭のリミッターが外れた僕は、ヌボアの攻撃を避けるのを辞め、回避から攻撃へと転じた。

「雷・水・風混合」

 後ろから飛び掛って来たヌボアの攻撃を、しゃがんで避けつつ、腹へのアッパーでお返しのカチ上げ。
 更に横から突進して来たヌボアの攻撃を、半回転して避けつつ、その角を掴んでカチ上げたヌボアにぶつけた。

「トリプル・嵐魔法」

 間断なく襲い掛かって来るヌボアに……
 殴って、回し蹴って、掴んで殴って投げた。
 やがて魔法の詠唱を終え、僕は魔法を使う。

「ユピテル」

 魔法を使った、そのとき・・・
 立ち込める様に黒い雷雲が出現し、無数の雷によってヌボアを燃やし尽くしたのだった。

ーーー

【世界観ちょい足しコーナー】
 
『ヌボア(食べれる)』
▶︎ヌーの角と鬣を持った、黒のイノシシ
▶︎大体10匹で群れを成す習性がある
▶︎1匹が混乱すると総動員で襲って来る
▶︎速さは85km
▶︎突進してくる
▶︎攻撃力が高く、当たるだけで致命傷
▶︎噛みごたえがあり、少々の獣臭さがある
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...