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ダンジョン・攻略篇(1~4層)

35話『対ヌボア』

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 立毛状態でアドレナリン全開な、興奮状態のヌボアが此方に対して猛突進し。

『グルルルルル……』

 その角でかち上げようと、僕達目掛けて飛び上がった。

『グアッ!!』
 
 僕達は散開して避ける、避ける、避ける。
 ヌボアの足は速く、避けるときに角が頬を掠りかける。

「あぶなっ」

 避けた僕は体制を戻し、直ぐ様に神器を解放する。

「神器解放・魔術の神輪ヘカテイア

 此方を通り過ぎて行ったヌボアが、すかさず進行方向を勢い良く変え、土埃を上げながら猛突進をして来る。

『グルルルルルッ!』

 十匹全員が僕の方に突進して来た。
 突進を左斜め横方向の飛び込み前転で回避。
 すかさず仲間に攻撃の合図を送る。
 
「みんな! 僕にターゲットが向いてる! 今が畳み掛けるチャンスだよ!」

 僕は仲間の方に振り向いた。
 しかし僕の視界には、人一人映らない。

「・・・えっ?」

 ──仲間が居ない。
 
 そう思ったときだ。
 一瞬の隙を見せた僕の背中に、此方へ突進して来たヌボアの角が衝突し、かち上げられた。

「グヘ……ッ!」

 僕の身体は勢い凄まじく、宙高くへと飛ばされている。
 上へと押し出す力と、下へと押し戻す力の小競り合い。
 そのときに生まれる圧力が、僕の身体に伝わり蝕んだ。

 しかしこの感覚、何処かで経験したことがある……。
 そうだ、この感覚は確か……。
 ──トラックに轢かれたときの感覚だ。

「う"えっ、ぷ……」

 徐々に上へと押し出す力が弱まり、その力が下へと押し戻す力と拮抗したとき、僕は宙に浮かぶ。
 目に見えるは満点の青空。
 しかし、ソレを見ている僕の目は虚ろで、世界の動きがスローモーションに見える。
 やがて、拮抗していた力のバランスが崩壊して、僕は地面へと頭から自由落下した。

「う"ぇ"っ"……!」

 自由落下している僕は、辺りを見回す。
 下にはヌボアの群れが僕を待っている。
 そして近くの青草に、皆が隠れて居た。

(・・・って、おい! アイツら隠れてやがった!)

 僕の脳には、フツフツとした怒りが沸いてくる。
 それもそうだろう?
 だってアイツら、滅茶苦茶笑ってんだもん!!

 怒りに身を任せた僕は、宙で身体を半回転させることで体制を整え、下にいるヌボア目掛けて落ちる。

「おらっ! 死ねぇえええええ!!!」

 ド────ンッッッ!!
 自由落下で得た運動エネルギーと、目一杯の殺意を込めた必殺キック。
 それは、ヌボアの身体を貫通する威力を有し、着地地点付近に大量の土埃を上げた。

「コホッコホッ……コホッコホッ……」

 土埃が器官に入った僕は咳をし、目の前の土埃を払う様に手を横に振る。

「それにしても感触が生々しかったなぁ……コホッ……」
 
 やがて土埃が収まりを見せると、残った九匹のヌボアが僕を包囲し、円を描く様に周り始めた。

「殺意高いねっ!?」

 いや、それもそうか……。
 だって僕の下に、ヌボアだったモノが落ちてるし……。

 それはともかく……僕の仲間達は何時まで、隠れて居るつもり何だろうか?

 気になった僕は、ヌボアの足音が響く戦場で、仲間の方に大声で呼び掛ける。

「みんな、何で隠れてるのさぁ?! ソコに居るの、僕知ってるからねぇ!」

 僕はみんなが居る方向を向き、手を振った。
 するとエマが、可愛らしくちょこんと顔を出す。

「黙って隠れてしまいすまないな、ハルト!」

 おっと……
 飛び掛って来たヌボアを避けた。
 一瞬ヌボアにいった視線を、エマへと戻す。

「それなら助けてくださいよ!」

「すまんが、それは出来ない!」

 次々と襲い掛かって来るヌボア。
 それを右ステップで避け、半回転で避け、そしてバックステップで避けた。

「何でですかー!」

「一階層はハルト単体の実践演出なのだ!」

「えぇーっ! 聞いて無いよー!」

「ドッキリなのだから当たり前だろ! なに、本当に危うくなったら直ぐに助ける! 安心すると良い!」

「ドッキリて……」

 僕は頭を抑えながら、溜息をついた。
 すると、みんなの声が聞こえて来た。

「「「「「ハルトのちょっと良いとこ見てみたいっ!!」」」」」

 いや、古っ!!??

「昔のコンパですかコレ??!!」

 ヌボアの攻撃を避け、そうツッコミをしたときだ。 
 エマの声が聞こえてきた。

「ハルトー! 格好良いところを魅せてくれー!」

 それは、照れているエマの声。
 ニヤついてるアキレウスとプロメテウスに恥じ、その顔を赤らめつつモジモジしている。

「すうううううう……はああああああああああ……よし、本気でいくか……」

 熱病によって頭のリミッターが外れた僕は、ヌボアの攻撃を避けるのを辞め、回避から攻撃へと転じた。

「雷・水・風混合」

 後ろから飛び掛って来たヌボアの攻撃を、しゃがんで避けつつ、腹へのアッパーでお返しのカチ上げ。
 更に横から突進して来たヌボアの攻撃を、半回転して避けつつ、その角を掴んでカチ上げたヌボアにぶつけた。

「トリプル・嵐魔法」

 間断なく襲い掛かって来るヌボアに……
 殴って、回し蹴って、掴んで殴って投げた。
 やがて魔法の詠唱を終え、僕は魔法を使う。

「ユピテル」

 魔法を使った、そのとき・・・
 立ち込める様に黒い雷雲が出現し、無数の雷によってヌボアを燃やし尽くしたのだった。

ーーー

【世界観ちょい足しコーナー】
 
『ヌボア(食べれる)』
▶︎ヌーの角と鬣を持った、黒のイノシシ
▶︎大体10匹で群れを成す習性がある
▶︎1匹が混乱すると総動員で襲って来る
▶︎速さは85km
▶︎突進してくる
▶︎攻撃力が高く、当たるだけで致命傷
▶︎噛みごたえがあり、少々の獣臭さがある
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