最強カップルの英雄神話~チート転生者と最強神姫の異世界ダンジョン攻略譚~

初心なグミ

文字の大きさ
上 下
24 / 40
フィアナ騎士団・入団篇

24話『お姫様は純粋です』

しおりを挟む

 意識が覚醒し、闇に一筋の光が差した。
 ボヤけて掠れた視界は、徐々に色を付けていく。
 目に映るのは、左に直角した世界。
 それは、僕が半胎児型で寝ていることを示唆し。そんな僕の背中には今、柔く、温かい感触が在るのだ。
 その感触からは何かが脈打つ感覚があり、それを感じていることに一種の安らぎすらもある。

「んぅぅ~………………」

 眠気に唸った僕は、感触の方へと身体を向けた。
 するとそこには、寝息を立てて眠っている、愛らしい表情のエマが居たのだ。
 そんなエマは下着しか身に付けておらず、毛布から身体がはだけているのを見て、毛布をそっと掛け直した。

「ふふっ。可愛い……」

 エマの頭を撫で、柔く微笑んだ。
 そんな僕は心とも無く、──エマを抱き寄せた。
 肌と肌が触れ合う、温かな感触。
 それは僕の心を安らげつつ、同時に、僕を淫らな気持ちにさせたのだ。

(エマ……可愛い。好き、大好き、愛してる。僕と同じベッドで寝てるってことは、キスくらい良いよね……?)

 どうしようも無い愛欲を抱いた。
 その唇を、彼女の唇へと近づけた。
 しかしそのとき、ふと我に返った。

 すうぅぅぅぅぅぅぅぅ……………………。
 んんんんんんんん??????????

(僕が、エマさんと、一緒に、寝ている、…………?)

 寝惚けた頭に、すーっと血の気が引いていく。
 やがて、状況判断を終えて全てを理解したとき、募りに募った過去の蛮行と現状が明確になり、──吃驚きっきょうした。

「うわあああああああああ!!!!!!!」
 
 ベッドから転げ落ち、テーブルに頭を打った。

「いてて…………あれ? 痛くない?」

 普通ならばテーブルに頭を打ったとき、それ相応の痛みに襲われる筈なのだが……。
 これまたどうして、痛みが微塵も無いのだ。

「んー……僕の身体の感覚、バグったのかなぁ……?」

 自分の頭を撫で、僕が疑問を呈しているときだ。
 僕の声で起こしてしまったであろうエマが、その目を擦りながらベッドから起き上がったのだ。

「んっ、ふぁぁぁぁぁ………おはよう、ハルト…………」

「お、おはよう…………ヌッ!!??」

 なんと言うことでしょう……。
 何色にも染まらぬ上下両方の純白が、その姿を突如として僕の目の前に、顕したではありませんか……。

「あっあっあっあっあっ…………ブハー!!」

 あまりの美しさに感極まってしまった僕は、その度し難い興奮故に鼻血を吹き、そして倒れた……。

「どうしたのだハルト!!??」

 殺虫剤を撒かれて倒れた虫の如く、その手足をピクピクさせる僕に、エマは急いで駆け寄って来てくれた。
 だがしかし、追い討ちとでも言おうか……。
 此方に駆け寄ったときに揺れたエマのアレが、凄く凄かったためだけに、誇り高き童帝の僕には刺激が強く……
 
「ど……童帝オタクには、刺激がつよ……みっ」

 そう言って、死んでしまった……。

「ハ、ハルトーーーーー!!!!!!」

 こんなんで死ぬ訳無いだろ!
 いい加減にしろよ僕!!

「ふぅ……死にかけた」

「ハ、ハルトーーーーー!!!???」

 いや……鼻血の出過ぎで、普通に死ぬとこだったわ。
 ハルトの死因! 女子の下着を見て興奮し、出血死!
 とか……普通にヤバ過ぎて、親に顔向け出来ない……。

 と、そんなことを思っていると……。
 エマが僕の肩に手を添え、目を見ながら、その心配を呈してくれた。

「ハ、ハルトよ……だ、大丈夫なのか?」

「大丈夫って鼻血のこと? それなら全然大丈夫だよ!」

 大丈夫の意味は分からないが、エマが僕のことを心配してくれているのだ。
 そのことが嬉しく、出来る限り元気に答えると、エマは胸をそっと撫で下ろす。

「そ、そっかぁ……昨日のこともあったし、凄くビックリしたぞ……」

「ん? 昨日のことって?」

「・・・ん? 覚えていないのか?」

「んー……部屋に入ったところから、記憶が無いや……」

「そ、そっか……うん。それなら、知らない方が……」

 顎に手を当て、ボソッと呟くエマ。
 ──それなら、知らない方が……。
 その言葉の意味は気になるが、今はそれよりも、もっと気になってしまうことがあるのだ。
 そう、その気になることと言うのは、──下着である。

「あのー、エマさん……。それよりもですね、寝るときは何時も下着なんです?」

「あ? あぁ……そうだが? それが、どうかしたのか?」

「い、いえ……そのー……下着姿は、意中の男性以外に見せるものではありませんよ…………」
 
 うぅ……顔がアツいよぉ……。
 あまりの恥ずかしさに、僕は顔を塞ぎ込んだ。
 すると、不思議に思ったらしいエマが、首を傾げながらその口を開く。
 
「そう言うものなのか……んー、確かに小さい頃はよく、お父様とお風呂に入っていたのだが……最近は、お父様に断られるようになったな……」

「いやそういう問題!?」

「違うのか?」

「違うよ! それにさっ! 意中じゃない男と一緒に寝るのも良くないよ! 変なことが合ったらどうするのさ!」

「変なこと?」

「へ、変なことって言うのは……そ、その……こ、子どもが出来ちゃったりとか!!」

(何言ってんだ馬鹿ヤローー!!! 僕は馬鹿なのか? 大馬鹿ヤローなのか!? すすすす好きな人にこんなことを言うなんて、正気じゃないよ僕!!!)

 自虐に対する後悔と羞恥。
 それらが脳内でグツグツ煮え滾り、僕の頭はショート寸前だったのだ。
 しかしそれは、僕以上に純粋なエマの一言で、オーバーヒートすることになる……。

「ハハハ! ハルトは面白いな! 一緒に寝ただけで子どもが出来る訳無いだろう?」

 た、確かに……。
 子どもが出来るにはその……

「此処には畑が無いではないか!」

 そうそう畑畑……

「えええええええ!!!!????」

「何を驚いているのだ? この世界は滅亡してしまうかも知れない……いや、させないが。私とて王族なのだ。その様なことは小さい頃から、お父様とお母様に教えて貰っているぞ!!」

「おっふ…………」

 お、親バカだぁ……。
 いや……しかし、学校で教わる筈だ。
 そうだ、学校で教わらない訳が無い!
 僕だって、学校で知ったんだもん!!

「え? 学校とかでは習わなかったの?」

「あぁ、ソレなんだが……私が登校した日は、何故かその様な授業は無かったのだ。まぁ……私は王族として、一般教養さ知っているからな! 不要だろう!」

 お、親バカだぁ……(二回目)。
 これは駄目だ……。
 教えたら殺されるヤツだ。

「そ、そっかぁ……」

「あぁ! それに実際、子どもが実る畑があるぞ?」

 そう言って服を着たエマに連れられ、城の付近を示す地図を見た所、立ち入り禁止区域として本当に合った。
 しかも出来たのは、ここ十年くらいのことらしい……。
 これが本当なのか、はたまた、親バカ故の蛮行なのかは知らないが、僕はこんなことを思った。

(あ、この王様やべー……)

 そうして今日が始まった僕は、エマと二人で『ギルド』なる所と、『騎士団本部』なる所へと行くのだった……。

―――
 
【可哀想な生き物図鑑No1・ハルト】

ハルト君は可哀想なことに、その容姿からな人からモテていたのだが……。女が女から、男が男からハルトを守るとか言う、ハルトからすれば傍迷惑な騎士団が存在し、ハルトの好みそうな性格の人に、な嫌がらせをした。その嫌がらせと言うのが、コピペ告白の強制やら、身体部位入りチョコやら、物品盗難やら、リスカの写真やら……であり。その結果として、ハルトが告白にOKしたことは一度も無く、純粋過ぎるハルト君は童帝のままである。ちなみにその騎士団の団長と言うのが、例の腐女子と例の男友達だったのは、ハルトが知らないココだけの話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

冒険者学園の落ちこぼれ、異世界人に憑依されて無双する

BIRD
ファンタジー
クラスメイトからいじめられる日々を送る少年アルキオネ。 いじめっ子たちはダンジョン研修の際に、アルキオネに謎の魔法陣の上に立つことを強要する。 それはランダムで変な呪いを付与する魔法陣として知られるものだった。 嫌がるアルキオネがいじめっ子たちに突き飛ばされて魔法陣の上に倒れたとき、魔法陣は輝き、何かが体内に入り込んだ。 『え? ここ何処? まさか異世界転生か?!』 知らない何者かの声が脳内に響く。 同時に、知らない世界の記憶が流れ込んできた。 アルキオネに憑依したのは星野昴流という異世界人で、トラックに轢かれて転生したらしい。 昴流が入り込んで以来、アルキオネは身体の支配権を奪われ、自分の意思とは無関係に行動し、思ってもいないことを喋り、いじめっ子たちを返り討ちにするほど飛び抜けた身体能力や魔法の才能を得ていく。 異世界転生で知らない人の身体に入っちゃった転生者と、それを見守る本来の身体の持ち主。 ダブル視点でお送りします。 ※第5回次世代ファンタジーカップにエントリー予定です。 2025.3.1 登場人物紹介とPROLOGUEを公開

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...