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フィアナ騎士団・入団篇

18話『城への道すがら』

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 僕達は今、物凄く大きい『グレース城』の前に居る。
 そのグレース城と言うのは、グレースの初代国王であるヘラクレスが建てたモノであり。
 国であり世界である『グレース』の、象徴とも言える神聖な建物でもあるのだ。
 そんな城への道すがら、フィアナ騎士団の面々について知ったことが幾つかある。

 まずは、フィアナ騎士団団長のエマ。
 お姫様である彼女は、生まれた頃から凄まじい力を魂に宿しており、その強さから『神姫』と呼ばれている。
 そんな彼女は、数百年間に渡って停滞していたダンジョンの攻略を進めた、張本人でもあるらしいのだ。
 そして彼女自身も気取った態度を取らず、フレンドリーに接することから、民衆からの人気も高いと……。
 ──これ、僕の恋は叶うんですかね?

 二人目は、フィアナ騎士団副団長のアキレウス。
 彼は初代フィアナ騎士団団長『フィン・マックルー』の家系生まれ、小さい頃から武芸に秀でており。
 なんでも、エマとは小さい頃からの付き合いで、親友と書いてライバルと読む仲だと言うとのことだ。
 そんな彼は、人類の中でエマの次に強く。
 その強さと、初代団長の意志を継ぐ者として、『英雄』の二つ名を持っているのだとか。

 三人目は、ヘファイストスさん。
 ヘファイストスさんは何と、最期のドワーフ王である『コナン・マウル』の末裔だと言うのだ。
 しかもその人は、フィアナ騎士団の初期団員でもあると言うのだから、それはもう驚いた。
 そんなヘファイストスさんは、長年の時を経て得た知識の豊富さから、『識者』の二つ名を持っているのだとか。

 四人目は、アルテミスさん。
 僕はココ最近で、何十回と驚いているのだが……。
 アルテミスさんも何と、最期のエルフ王の末裔らしい。
 その名を『ディアリン・マクドバ』と言い、これまたフィアナ騎士団の初期団長なのだ。
 そんなマクドバ家に生まれた者は、『予知』と『千里眼』の能力を持って生まれると言う。
 そしてアルテミスさんは、その能力から『星詠』の二つ名を持っているのだとか。

 ちなみにヘファイストスさんとアルテミスさんは、同じ異種族の王家の末裔として、幼馴染の関係らしい。
 ──この二人の関係、なんか好き何だよなぁ。

 そして最後に、プロメテウス。
 プロメテウスもまた、フィアナ騎士団の初期団員『ディルムッド・オディナ』の家系だと言う。
 そんなプロメテウスは、小さい頃から身体が弱く。よく同年代から、色々と心配されていたらしい。

 ──もうココまで来たらさ、運命だよね……。
 と、僕が言ったら。頬をポリポリとかいて、「自分達も驚いたよねWWW」と、みんなで口を合わせて言った。

 そんな仲の良いみんなだが、この中でプロメテウスだけが唯一、二つ名を持っていないらしい。
 まぁ……コアなファンからは『男の娘』だとか、『性癖クラッシャー』だとか、散々言われてるらしいが……。
  ちなみにこれは、瞳を曇らせた本人が、僕に直接的に言ったことだ。
 それを聞いた僕は内心で合掌しつつ、その話の流れで例の不死鳥について話した。

◆◆◆

「そう言えばさっきさ、エマさん以外は死んでたって。そう言ってたよね?」

「あぁ、そうだ。あのときハルトが来なければ、最悪私達は全滅していた……。そして私達が全滅すれば、ダンジョンに太刀打ち出来る者が居なくなり、この世界の滅亡にも繋がるのだ。再三言うが、本当に助かった」

 僕に微笑むエマ。
 そんなエマの表情は、悲壮に支配されており。
 その笑みが張り付いたものだと、知り合ったばかりの僕でも直ぐに分かった。

「役に立てて良かったよ……って! 今はそう言うことじゃなくてね? プロメテウスだけが、不死鳥みたいに生き返ったんだよ!」

 心憂いているエマを楽しませる為に、わざとらしく楽しげに僕が話すと、アルテミスさんが反応した。

「ハルトよ、不死鳥とは何じゃ?」

 僕にそう尋ねたアルテミスさんは、横目でチラチラとエマのことを見ており、心配していることが分かる。
 
 なんて言うか、ヘファイストスさんと言い、アルテミスさんと言いさ。
 何だろうね? まるで親みたいだよね。
 
 そんなことを考えつつも僕は、アルテミスさんの質問への返答を探していた。

「んー……そうだなぁ。不死鳥を簡単に言うと、『不死身の火の鳥』ですかね?」

「不死の鳥で不死鳥って、割かしそのままっすね」

 クスッと笑いながら言うアキレウス。
 そんなアキレウスの言葉に、僕は内心で「分かる」と頷きつつも、その話を続ける。

「うん。それはそうなんだけど、不死鳥には幾つかの特徴が合ってね。自分を火で燃やして、その燃えた灰の中から生き返るんだよ」

「ほう? それで?」

 意外にも、アルテミスさんが食い付いてきた。
 顎に手を当てて何かを考えている彼女は、僕のことを物珍しそうに見ている。

「それで、プロメテウスも同じ様に火で燃えて。灰になったかと思えば光って、そしたら生き返ってた」

 その言葉の一言一言を紡ぐ度に、プロメテウスの身体がプルプルと震え出す。
 やがて、その言葉を言い終えると、小刻みに震えていたプロメテウスの身体がピタリと止まった。

「も、もももももしかしてボクって!!」

「確証は無いけど、不死の能力があるんじゃない?」

 プロメテウスは、その溜まりに溜まった興奮を、壊れたポンプの様に一気に放出し、飛び上がる。

「や、や……ややや……やったぁああああああ!!!」

 それはもう、言葉通りに飛び上がった。
 まるで、新しい玩具を買って貰う子どもの様だ。
 その喜びに対して微笑ましく思っていると、プロメテウスが僕の手を取って言う。

「ありがとうハルト!! これでやっと、みんなから『アイツをメス堕ちさせたい』とか」

 おろ?

「『プロメテウスは俺の嫁』とか」

 おろおろ?

「『二つ名・俺のsay奴隷』とか言われなくなるよ!!」

 おろおろおろおろおろおろおろ?????

 ・・・あまりにも高度な言い分だ。
 純粋な僕の頭がパンクしてしまう。

(いや……ちょっと待てよ? これ聞き間違い説ある?)

 そう思い立った僕は、微かな希望を胸に、その瞳を他の団員に向けるが……。
 うん、みんな遠い目をしてたよ。

 そうして、現実ってやつを目にした僕は、温かな涙を流しながら、プロメテウスに抱きついていた。

「う、うぅ……元気、出してねぇ…………グスッ。ぼ、僕達が付いているからねぇぇ…………」

「うぅ…………ハルトオオオオオオオ!!!!」

「「おーん、おんおんおん。おーん、おんおんおん」」

 こうして友情を築いた僕達は、グレース城までその足で歩いて行ったのだった。
 
 ちなみにだが、その様子を見ていた腐女子が、新たなホモプの誕生に歓喜し、布教して回ったと言うのだ。
 そんなホラー地味た話を、当の本人の二人が知ることになるのは、近しい未来での話である。

―――

【世界観ちょい足しコーナー】

久しぶりにやって参りました。世界観ちょい足しと言いながら、ガッツリネタバレ&伏線を貼っているこのコーナーが!!一体どのくらいの人が、ココまで見ているのでしょうか?それは、読者様のみが知る世界で御座いますね。
さて今回は、グレースについての世界観ちょい足しをして行こうかなと思います。

○グレース
主にレンガ造りの家が多く、道路もコンクリートで舗装されている。当然街には電柱や電線、下水道等々があり。学校だって存在します。ちなみにエマ・アキレウス・プロメテウスの三人は、まだ十八歳と言うこともあり『神英学園』と言う学校に通っていたり……。とまぁ、そんな文明の進んだグレースでは、いわゆるオタク文化と言うのが娯楽として普及しています。何故かって?ダンジョンに挑むことすら出来ない凡人には、挑むことが出来る英雄を見守ることしか出来ず、精神的ストレスが溜まるからですね。だからこそオタク文化が発展した様ですよ?え?そもそもどうやってオタク文化が出来たかって?何処かの誰かが大事に溜め込んでいた日本文化の宝物を、何処かの誰かが奪って外に持って行ったからじゃないですかね?
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