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プロローグ
4話『グレースの全貌』
しおりを挟むここグレースには、神の試練と呼ばれている塔が、国の中心に聳え立って在る。
ダンジョンとはそれ即ち、──神の遺産である。
古来より王国に伝わって来た文献によると、ダンジョンの名を『バベルの塔』と言い、『神に到達せしめる頂きである』と、記されている。
雲の上まで突き抜けている、ダンジョン。
外部から壁を破壊して侵入することも、内部から壁を破壊して脱出することも出来ない。
一度足を踏み入れてしまえば、来た道を戻るしか帰る方法が無いのだ。
しかし、そんなダンジョンを一人だけ、踏破した人物が居た。
その人物こそが、グレースの初代国王、──『ヘラクレス』その人である。
ヘラクレスはダンジョンを踏破し、神に認められ、一国の王となったのだ。
王となったヘラクレスは、ダンジョンから持ち帰って来た財宝で、天下統一を成した。
そうして出来たのが、『人間』と『土の妖精族』と『風の妖精族』が共に生活をする国、グレースである。
世界に一つしか無い国グレースでは、一切の争いを禁じられている。
それはもちろん、他種族間でも、同種族間でも、だ。
それを破ったモノは捕まり、強制的にダンジョン内へと放り出される。
王国を守護する先鋭の騎士団により、ダンジョンの奥深くへと……。
それは一般人にとって、実質的な死刑である。
だからこそ民は、平和に、平穏に暮らしているのだ。
しかし国民の中には、死にたがりの変わり者が居る。
その死にたがり共は『クラン』と言う集団を作り、自らの足でダンジョンに踏み入れるのだ。
そのような死にたがり共を、人は『冒険者』と言う。
その名の通り、命懸けで人生を冒険する馬鹿野郎共だ。
それ以上に相応しい肩書きは無いだろう。
そんな冒険者がダンジョンに入る理由は、大きく分けて二つ存在する。
一つ。ダンジョン内にあるアイテムや、モンスターが落とすアイテムを売り、──莫大な資金を得て生活する為。
二つ。ダンジョンを踏破することで、──地位と名誉を手に入れる為。
大概が、この二つである。
そうなのだ、大概が、この二つなのだ。
つまり、例外が存在する。
その例外と言うのが、世界最強の騎士が率いる世界最強の騎士団、──『フィアナ騎士団』だ。
フィアナ騎士団は未知の資源の為、文献に記されている世界の滅亡を阻止する為、ダンジョンに挑み続けている。
そんな騎士団だが、幼少期の頃に検査を受け、十二段階あるレベルの中の三以上で、強制的に入団させられてしまうのだ。
──四年後に訪れる世界の滅亡に、足掻く為に。
ダンジョンだが、ヘラクレスが踏破した日から六百六十年の間、五階層に到達した者は居なかった。
しかし、四階層の守護神『スフィンクス』を倒し、見事五階層に足を踏み入れた者が現れる。
それこそが、王国最強の騎士団率いる世界最強の騎士、『エマ・グレース』だ。
生まれた時から神なる力を持ち、十歳の時には世界最強の称号と共に、神の如く強さから『神姫』と言う二つ名が付けられた。
そんな神姫が率いるフィアナ騎士団は今、五階層のエリアボスに挑戦しようとしていた。
◆◆◆
階層の奥深くには、大きな扉がある。
扉の種類は階層によって異なりはするが、変わるのは見た目だけだ。
その扉は当然、私達が居る毒沼エリアにも存在する。
第五階層には毒の沼が広がってあり、生息しているモンスターも毒系しか居なかったのだ。
そんな階層である、エリアボスへと通じる扉も、毒々しいことこの上ない。
「何とも、毒々しいのう……余は苦手じゃ」
一番右側に立って居るのが、『アルテミス・マクドバ』。
銀のミディアムヘアと碧眼の、気品溢れるエルフだ。
背中には金の弓を装備しており、右腰には金の短剣を装備している。
「ボクも、苦手です……」
一番左側に立って居るのが、『プロメテウス・オディナ』。
赤のマッシュヘアと赤目の、可愛らしい男の娘だ。
「ふぉっふぉっふぉ。大丈夫よ、ワシに任せろ」
左側から二番目に立って居るのが、『ヘファイストス・マウル』。
とんがり帽と髭がポイントの、ドワーフだ。
重厚な戦斧を、肩に担いで持っている。
「ヘファイストスさんが大丈夫だって言うと俺、めちゃくちゃ安心するっす」
「副団長様が何か言ってるわい。ふぉっふぉっふぉ」
右側から二番目に立って居るのが、『アキレウス・マックルー』。
金のショートヘアと碧眼の、イケメン副団長だ。
背中に槍を装備しており、左腕に盾が装備されている。
「そうだな。こと言う私も、みんなのおかげでココまで来ることが出来た。みんなと居ると安心する」
「最強の団長がそれを言うからね、ボク参っちゃうよ」
「ははは、そう言うな、私らの仲じゃないか」
そして最後に、威風堂々とした佇まいで中心に立って居るのが、『エマ・グレース』。
白のセミロングヘアと赤目の、美人団長だ。
鞘に入っている直剣を、左腰に装備している。
世界最強である私達は扉の前に着くと、先程までの緩い空気を消し、瞳に闘志の光を宿した。
「みんな、行くぞ!!」
「「「「おうっ!!」」」」
鬨の声と共にヘファイストスが扉を開けると、私達は扉の向こうへと足を踏み入れる。
その扉には大きな文字で『Хюдора』と、そう在った。
―――
【世界観ちょい足しコーナー】
○世界観
『年号』
▶︎ハーキュリーズ歴
▶︎今はハーキュリーズ歴662年である
『世界の状況』
▶︎ ハーキュリーズ歴666年までにダンジョンの頂きに到達していないと、世界が滅亡すると記されている
▶︎上記の為、フィアナ騎士団が挑み続けている
▶︎馬鹿野郎がダンジョンに挑んで命を散らす世界
○ダンジョン
ダンジョンの創られた理由は不明である。
バベルの塔と呼ばれているダンジョンは、計十二階層あると言われている。
○種族
『人間』
▶︎短命故に一番数の多い種族
▶︎様々な魔力を持つ
▶︎エルフとドワーフに威力負けする
『エルフ』
▶︎妖精族である
▶︎風の精霊に好かれる
▶︎長寿で美男美女
▶︎精霊を操る
『ドワーフ』
▶︎妖精族である
▶︎土の精霊に好かれる
▶︎とんがり帽と小さい身体がポイント
▶︎力が強い
▶︎技術に精通する職人
▶︎鍛治職人になることが多い
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