私と貴方の後追い物語~貴方を殺したのは私達で、私達を殺したのは私でした~

初心なグミ

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遺書

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 彼の死体には、幾つもの刺傷と、幾つもの殴打された古傷が合ったらしい。
 
 刺傷は腕、脚、腹、胸、喉。
 刺傷は、自殺する際に自分で刺したものだと、警察がそう言っていた。
 
 殴打された古傷は、全身にあったという。
 古傷は、私の父親が殴った跡、学校での虐め、彼の両親が虐待して出来たものだった。

 そして、関係者だからと警察に話を聞いたとき、警察に彼の遺書を渡された。

―――
 
 ○○へ。
 子どもと君を置いて先に逝くようなパパでゴメン。
 許してくれとは言わない。
 僕のことを覚えてくれとは言わない。
 むしろ許さないで欲しいし、忘れて欲しい。
 そうだ、こんなクズのことなんて、忘れてくれ。
 
 そう言えば僕さ手紙で、君の両親に言われて、君に会えなかったって書いたよね。
 実はあれさ、嘘なんだよ。
 本当は君の両親、特にお母さんの方にはさ、君の傍にいて欲しいって言われてたんだ。
 それを僕が断ったんだよ。
 だってそうだろう?
 まだ子どもな僕達がさ、どうやって子どもを育てるの?
 正直無理だと思ったよ、僕は。
 だからさ、そんな現実から逃げたくて、君に合うことが出来なかったんだ。
 こんな弱い僕でゴメンね。
 昨日の君はさ僕と違って、ちゃんとママだったよ。
 少なからず、僕にはそう見えた。
 
 昨日さ、君たちを人目のつかない場所に誘ったでしょ?
 あれ実はさ、二人を殺して自分も死ぬ予定だったんだ。
 ポケットにナイフが入ってたから、それで……。
 でもさ、そんなこと出来なかったんだ。
 君との子どもを抱いたとき震えたよ。
 なんて可愛いんだろうって……。
 そりゃそうだよね。
 だってさ、世界で一番愛してる君との子どもだもん。
 可愛くない訳ないし、僕が守るんだって、そう思った。
 そう思ったけど、やっぱり僕には背負えなかった。
 君達を僕が幸せに出来る気がしなかった。
 
 君は妊娠するとき学校を休んでたけどさ、僕は学校に通っていたんだよ。
 まだ義務教育中だからさ、仕方無くね。
 学校に行った僕はさ、何時も通りに過ごせるんだって、そう思ってたんだ。
 でもそんなこと無かったよ。
 君の両親が先生に妊娠の件を言ったことでさ、口の軽い先生が妊娠の件を皆に言ったんだ。
 友達とかクラスメイトとか、そんなんじゃなくて、集会で学校の皆に言ってたよ。
 だからさ僕、皆に色んなこと言われたんだ。
 「キモイ」とか「死ね」とか、「学校来んな」とか……色々だね。
 殴られ、蹴られ、居ないものとされ、虐められ。
 別にこんなの気にしなければ良いだけだからさ、君と生まれてくる子どものことを考えたら大丈夫だった。
 大丈夫だった筈なんだ……。
 でもさ、不意に耳にした「あいつのせいで人生狂った○○と子どもが可哀想」ってのでさ、耐えられなかった。
 図星だったんだよ。
 性欲に負けた僕のせいで、君の人生を狂わせたんだ。
 本当ならさ、大人になって稼げるようになってから、そういうことはするべきだった。
 だって僕、二人すらも守れない子どもだから……。
 
 つまり何が言いたいかってさ、孤独に精神病ませただけで自殺する馬鹿でゴメンね。
 性別さ僕知らないけど、子どもも、君も、二人共心から愛しているよ。
 僕のことなんて忘れてね。
 By‪✕‬‪✕‬。

―――

 彼を殺したのは、私達だったのだ。
 私の心の中で何かが崩壊する音がした。
 私は、遺書と子どもを何度も交互に見る。
 私が子どもを産んだから彼は死んで、彼が愛してくれたから子どもが産まれて……。

 どうすればよかったの。
 どうすればよかったの!
 どうすればよかったの?
 どうすれば、よかったの……

 産まなければよかったの?
 生でヤらなければよかったの?
 そもそも、彼を愛さなければよかったの?

 解らない、判らない、分からない。

「わ"か"ん"な"い"よ"ぉ"ぉ"ぉ"───っ!!!」

 悲観、不安、絶望、それらの悪感情が私の心を犯す。
 二人しか居ない家には、私の嗚咽と、子どもの泣き声だけが木霊していた。
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