舞姫アフターストーリー

初心なグミ

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③粛清と後悔

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ドアの取ってに手を添えドアを開けると、エリスがいた。
しかし、6年前に見た影はそこにはなかった。
綺麗だった金色の髪はボロボロ。
可愛らしかった顔はやつれ。
細くも暖った手腕に肉はない。
私は、言葉が出なかった。
帰る時はいたはずのお母さんの姿はなく、変わり果てたエリスだけがいたからだ。
しかしこうなってしまったのは、私の責任だ。
ならばその責任を果たさなければならない。
こちらに気づかず座り果ててるエリスに、一歩、また一歩と近づく。
どんどん距離が近いているというのに、エリスが気づく気配が全くない。
何て話しかけたら良いかと考えながら近き、エリスとあと一歩の距離で止まる。
座り込むエリスの横でエリスの顔の高さまでしゃがみ、話しかける。
「エリス…。私は豊太ろ……っ?!」
名を名乗った瞬間、エリスは私のことをギロッと睨みつけた後襲ってきた。
「いやぁぁああ!!!許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないぃぃ!散々私を苦しめておいて、何しに来た!絶対に許さない!お母さんの痛みを知れっ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
狂乱状態になり、私を覆い被さるように馬乗りになる。
彼女はその小さく、弱く、乏しく貧しい手で私の首を絞めた。
彼女が私に遺恨を吐く中で、お母さんという言葉が出てきた。
お母さんの痛みを知れ、と。
なるほど確かに、お母さんがいたのならもう少しはマシだったのかもしれない。
つまりはお母さんが過労死か何かで亡くなったのだろう。
ならばそれは、私の責任だ。
「やっ…め…。くる、しい……」
私の首を絞めようとするその手を、自分の手でどかそうするが、そこで私は思った。
これが報いであると。
そして、それに納得した。
本当はもっと早く来れたはずなのに私が意気地無しなせいで1年遅れてしまったのだから。
私のせいでお母さんが死に、そのせいでエリスが独りになる。
私は何と愚かなのだろうか。
とはいえそれは過去の話で今はどうにもならないのが現実。
ならばせめて死んで詫びよう。
昔の人は自分が償えない様な罪を犯した時、腹を切っていたらしい。
ははは、日本に居ても辛いだけ、そしてドイツに来たらエリスに殺される。
何と愉快な人生であったか。
私が1番幸せを感じた時を一緒に過ごした伴侶に殺されるのだ、笑いたくもなる。
どうせ殺されるのなら潔く殺されよう。
だがその前に、エリスに素直な気持ちを伝えよう。
そうしないと、本当に独りになってしまう。
私はエリスの手を抑えていた手を外して、精一杯の思いでエリスに伝える。
「独り…にさせて、ごめ…ん。でも…わた、しは…あの、世で…エリス、のこと…を、見て、いるよ」
私を現世に繋ぎ留めていた糸は解けて消えた。
そして、消えゆく視界の中私が見たのは、3人が幸せそうにしている写真と、エリスの泣き顔であった。

③ENDーー粛清と後悔
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