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第55話 ラモンさんやカウンさんとの話し合い

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 一夜明けて次の日の朝。

 今日から俺の部隊勤務が再開する。
 休みはそれなりに充実していたと言えるだろう。
 だけど、昨日夜ご飯を食べた食堂での出来事を思い出すと頭が痛くなる。

 とりあえず、ベッドから起き上がろう。身体能力と自然回復力が滅茶苦茶上がってるおかげなのか、最近は体の状態がすこぶる良い。仮に睡眠時間が少なくても昨日の疲れを次の日に持ち越すという事がそれほどないのだ。そもそもあまり疲れなくなってきてるからな。ただ精神的なものはその限りではないようだ。

 起き上がった俺は身支度を整え簡単な朝食を作るべくコルとマナを連れて一階へ降りていく。すると、まるで計ったかのようなタイミングで鍵を開ける音の後に玄関のドアが開く音がした。

「エリオ、起きてるか!」
「エリオさん、朝ですよ!」

『主様、リタさんとミリアムさんですよ』
『エリオ様の朝食を作りに来たようですね』

『ああ、そうみたいだな』

 朝から美女二人に合鍵を使われて訪問される。これは精神的に嬉しいと言うべきなのかどうなのか。そこには、俺の家へ入ってくるリタとミリアムの二人の姿があった。

「今日はエリオの家で料理を作るよ。すぐに終わるからそこに座って待ってな」
「作り置きのパンと、手軽に出来る材料も持ってきましたから」

 そう言って早速俺の家で調理を始める二人。俺は椅子に座って二人の後ろ姿を眺めているだけだ。手際よくテキパキと動く二人は見ていて格好いい。手軽なものという割には見るからに旨そうな食事が用意された。温かいスープとパン。そしてカリッと焼いたソーセージと目玉焼きに塩胡椒とオリーブオイルを使った香草とトマトとチーズのサラダ。コルとマナの分の簡単な食事も作ってくれたようだ。三人で椅子に座りテーブルを囲んで食べたがそのどれもがとても旨かった。二人の作る料理は文句のつけようがない。

「二人ともありがとう」

「「どういたしまして」」

「そういえば、二人にも言っておきたい事があるんだ。昨日、ベルマンさんとバルミロさんと街の食堂に行って食事をしたんだけど、その時に食堂に居合わせた街の人の話が聞こえてきてさ。どこの部隊かわからないけど街の人に対して傍若無人な振る舞いをしている部隊員がいるらしいんだ。もし君達がそんな人を見かけた、もしくは何かの拍子に話に聞いたならば俺かカウンさんかラモンさんに知らせて欲しいんだ」

「そんな奴がいるんだね。あたし達が捕まえてあげようか?」
「それは困りましたね。私とリタさんで捕まえればいいんですか?」

「リタもミリアムも例え見つけたとしても手を出さなくていい。君達が強いのは百も承知してるけど、もし君達に万が一の事があったら俺としては悔やんでも悔やみきれないからさ」

「へー、あたしを心配してくれてるんだ。それは嬉しいね」
「私の身を案じてくれてありがとうございます」

「じゃあ、これでこの話は終わりだ。また部隊の執務室で会おう」

 リタとミリアムはコルとマナを思う存分撫でた後、これからロドリゴとラモンさんにもここで作った食事を持ち帰って食べさせる為に自分達の家に戻って行った。

『コル、マナ。ご苦労さん』

『あの二人は撫で上手なので問題ありません』
『弟が言うようにリタさんもミリアムさんも撫で方が上手いですね』

 コルとマナのフォローも忘れちゃいけないからな。従魔達も嫌がっていないので大丈夫そうだ。さて。朝の食事も済んで昼からの勤務まではまだ時間がある。俺もその時間を利用してモフ分補給をしておくか。

 そして、昼前になったので部隊勤務用に身支度を整え、腰に短剣を差して借家近くの駐屯所まで歩いて行く。この時間は俺と同じく駐屯所に向かう第三部隊の隊員もちらほら見えるな。執務室でカウンさんやラモンさんと話し合った後は、部隊員全員にも訓示をしておくべきだろう。俺の部隊から不届き者が出るのは絶対に避けたい。

 駐屯所に到着した俺は専用施設内にある執務室に向かう。部屋に到着すると既に副隊長のカウンさんと参謀役のラモンさんが先に来ており、二人は俺の到着を笑顔で出迎えてくれた。

「カウンさん、ラモンさん。二人ともリフレッシュ出来たのかお元気そうですね」

「兄者こそ元気にしてましたか?」
「エリオ殿、娘が迷惑をかけていませんか?」

「はい、俺は元気ですよ。ラモンさん、迷惑なんてとんでもない」

「ハハ、兄者は大活躍しましたので疲れを取るには良い休暇になったようですな」
「エリオ殿、ありがとうございます」

 この二人といると落ち着くな。馬が合うってやつだろうか。

「それで早速なんですが二人に相談があるのです」

「それがしに相談…ですか?」
「相談とはどのような事でしょう?」

「はい、実は昨日の夜にベルマンさんとバルミロさんと一緒に食堂で飯を食ったんです。その時に別のテーブルにいた男二人組が話している会話が俺達にも聞こえてきました。その内容を聞くと、どこの部隊かは不明ですが住民やお店の人に暴力を振るっている者がいるらしいのです」

「兄者、それは本当ですか?」
「それが本当なら大問題ですな」

「二人組に聞いた感じでは本当ではないかと。俺が直接見た訳じゃないので絶対に確実とまでは言えませんが」

「むむ、なんて事をしてくれるんだ」
「エリオ殿、我々はそれが事実であるという前提で動いた方がよろしいかと」

「そこでお二人に相談なんです。一応、今日の部隊集合の場で第三部隊にそういう人がいるいないに関わらず訓示や指導をしようとは思っているのですが…」

「それがしも賛成です。どれだけの効果があるかどうかわかりませんが、部隊長である兄者からの訓示や指導は必要でしょう」

「ラモンさんは何かありますか?」

 俺の問いかけに暫く思案をしていたラモンさんだが、何かを思いついたように顔を上げて話し始めた。

「そういえば、部隊が出来てまだ日も浅くしっかりとした部隊規則というものがまだありませんな。こう言ってはなんですが、さすがに部隊員それぞれ過去に冒険者や傭兵を経験している者達ですから、ギルドの規則と同じように暗黙の了解としてこれくらいは皆わかっているだろうと各々の判断に任せていた部分があります。それに加えて賊徒の襲来でそっちにかかりきりになったのもありますな」

「すみません。部隊長である俺自身も反省すべきだと思っています。それと部隊員として雇われた自分達には街やギルドの規則は当て嵌まらないと言い逃れされる可能性もありますよね」

「いや、これはエリオ殿だけの問題ではなく私も含めて部隊全体の反省ですな」

「兄者、そしてラモンよ。それがしも責任を痛感しておる。どうすれば良い?」

「ラモンさんが言うように、とりあえず部隊規則を作らないといけないな」

「エリオ殿、私が基本的な部分だけ押さえた規則草案を作っておきます。あまり厳しくしすぎても隊員から不平不満が出そうですし、緩すぎても意味がありませんからな。普通に毎日過ごしていれば守れそうな草案が出来上がったらエリオ殿とカウンとも相談の上、各部隊長及び統括官を交えて中身を詰めていきましょう」

「お願いしますラモンさん」

 とりあえず、草案はラモンさんに任せておけば大丈夫だろう。周りの人達の支えがあってこその俺なんだと改めて思った。
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