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第31話 都市コウトに到着

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 依頼の報酬を貰い、ギルド長に推薦状を書いてもらった俺達。
 暫く滞在した後、依頼が完了した小さな街を出発して目的の都市コウトに向けて歩みを進めている。

 ちなみにギルドの計らいで俺の強さに合わせるようにギルドランクは飛び級でBランクに上がった。それに見合うものとしての理由付けに首領を倒すなど賊徒討伐に目覚ましい働きをしたという名目でギルドから特別に表彰された。余談だが、ベルマンさんやバルミロさんは俺が今までDランクだった事にとても驚いていたっけ。

「しかし、俺達の中で一番強いエリオが俺達よりも低い待遇だったとはな。ギルドは人を見る目がねえな」

「フッ、強者の中にはわざとランクを上げない者やランク自体に興味がない者もたまにいる。エリオもそっち側の人間だったのだろう」

 いやいや、本当の事を言うと俺はついこの前まで底辺で薬草拾いと馬鹿にされてたんだってば。コルとマナを手懐けたおかげで底辺からの逆転人生が始まった訳でね。

 まあ、自分からは進んで話す気はないけどさ。でも、いざ自分が強くなってみると、俺的にはランクとかそういうものはどうでもよくなってきたのも事実だ。自分を取り巻く環境も変化して心に余裕が出来ると考え方も劇的に変わるものだな。

「なあ、コル、マナ」

『『わう?』』

 ハハ、いきなり俺に話しかけられて従魔達は不思議そうな顔をしているな。

「ところで、コウトの街について誰か知ってる人はいる?」

「エリオ殿、コウトの街なら一度行った事があるので私が少し知っていますぞ」

 ラモンさんが知っているのか。事前に予備知識なしで行くよりも、前もって何かしら少しでも知っておけば心構えも違ってくるからな。他の人は名前だけは聞いた事はあるけど初めて行く街らしいし。

「コウトは街というよりは、若干小ぶりですが都市ですな。まあ、便宜上コウトの街と呼びますが、古い時代から存在する歴史のある街です。先ごろ崩壊したキルト王国が成立する以前から栄えた街で商工業が盛んです。街の横を流れるガリン河を利用した水運で南にあるサゴイの街とは定期航路が繋がっています。郊外には畑も多く今まで過去に大きな戦乱に巻き込まれた事がなかったので平和で安定した土地だったといえるでしょうな。なので、コウトに置かれていた駐屯兵も数が少なかったはずですぞ。ただ、現在の不安定な情勢に対応するべく今回の募集に至ったと思いますな」

「ラモンさん、とても分かり易い説明ありがとう」

 なるほど、コウトは歴史のある古い街なのか。
 これは行くのが楽しみだな。

「ガッハッハ、色街もありそうで楽しみだ」
「フッ、酒場もいっぱいありそうで酒場巡りが出来そうだな」

「エリオにはあたしとミリアムがいるのだから色街は必要ないだろ。もしも色街に行ったらただじゃおかないからね!」
「そうですよ、私達がいるのだから色街へは行っちゃ駄目ですよ」

 その言い方だとリタさんとミリアムさんが俺の相手になるの?
 彼女達の中では俺はどういう立場になってるんだろうか。まあ、いいか。

 小さな街を出てから一週間が経過した頃、ようやくお目当てのコウトの街が見えてきた。街の周囲は高い石壁に囲まれ外からだと街の中の様子はあまりわからないな。ただ、何個か高い建物の屋根が壁の上に飛び出して見えている。

 街道を通る馬車や人が多くなっていたから街が近いのは薄々感じてたけどね。

「あそこがコウトの街か」

「僕と姉貴が生まれ育った北にあるテムル国の街ビヨンと同じくらいの規模っすね。こっちは暖かいから楽でいいっすよ」

 へー、この姉弟は北にあるテムル国の出身なんだ。

「さあ、エリオ殿。コウトの街に入りましょう」

 入り口の門で手続きをして街の中に入っていく。道は綺麗な石畳で作られていて歩きやすい。石や木で作られた家々が立ち並び、煉瓦作りの家もたまに見受けられる。街の中は無機質な建物だけではなく、木々が植えられた公園があちこちにあり緑の葉が見る者の目を癒してくれている。露店が店を出している広場の中心には大きな噴水があり、太陽の光を浴びて噴水の水がキラキラと光っていた。

 道を歩く人や広場や公園で休んでいる人などの多さを見ると、ここが小ぶりながらも都市と言われるのも納得だ。

 俺の傍らにいるコルとマナも、この街への期待感か尻尾を振りながら街のあちこちを首を振りながら眺めていた。

「とりあえず、この街での宿を探しましょう。従魔も泊まれる宿があればいいんだけど。もし、なかったら俺だけどこかの家を借りてそこへ泊まります」

「大丈夫ですよエリオ殿。これくらいの大きさの街には従魔も一緒に泊まれる宿が必ず何軒かあります。街の案内所に聞いてみましょう」

「もし万が一従魔と一緒に泊まれる宿がなかったらあたしがエリオと一緒に野宿してあげるからさ。エリオ一人にはさせないから心配はいらないよ。こう見えてもあたし料理は得意なんだよね」

「エリオさん、姉貴はこう見えても本当に料理が得意なんすよ。そこらの料理人には全然負けていないっす。人は見かけによらないっていう言葉があるじゃないっすか。それはまさしく姉貴の為にあるような言葉っすよ」

「うるさい! ロドリゴはいつも一言余計なんだよ!」

 この姉弟、本当に面白いよな。
 でも、リタさんが料理が得意なんて意外だ。将来誰かと一緒になったら良い奥さんになりそうだね。

「ふふ、私も負けていられないですね」

 何に対してやる気になってるのか知らないけどミリアムさんの顔が怖いぞ。

 その後、街の案内所で従魔も同じ部屋に一緒に泊まれる宿を紹介してもらい、各々同じ宿に宿泊する事が出来た。お金はこの前の賊徒討伐報酬のおかげで、かなり懐が暖かくなっているので暫くの間は余裕で泊まれるだろう。

 従魔も泊まれる宿に一人部屋を確保した俺は部屋に入って旅装を解く。今頃は皆それぞれ自分達の部屋に着いてほっとしている頃合いだろうな。

 さて、今日はゆっくり休んで旅の疲れを取り、明日はギルド長に書いてもらった推薦状を持ってこの街の担当者のところに行かないとな。

 果たしてどんな感じなのか期待と不安が半々ってところだ。
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