上 下
27 / 171

第27話 リーダーとしての自覚

しおりを挟む
 俺は守備隊の依頼を引き受ける事にした。
 エルケナーさんに俺の意思を伝え、正式に依頼の契約を交わす。一応だが守備隊のメインはこの街に元からいる人達で、俺と他の六人の外部委託組の人達は影の主力扱いとなった。エルケナーさん達が指揮する街の守備隊と連携しながら臨機応変に戦う許可を貰った。

 俺以外の委託契約を結んだ六人の顔ぶれに触れておこう。

 模擬戦で最初に戦ったおっさん剣士のバルミロさん。
 全身筋肉のガタイがでかいおっさん戦士のベルマンさん。
 魔法使いで姉のリタさんと槍使いで弟のロドリゴ君。
 そして、一番歳上で苦み走ったいい男の魔法剣士のラモンさんと、もう一人いた若い女性で魔法使いのミリアムさんだ。

 そして、剣士兼従魔使いの俺を入れて合計七人だな。
 立場としてはこの街に雇われた七人の助っ人というところか。

 守備隊の人達と顔合わせをした後、俺達七人は街が用意してくれた宿で作戦会議を兼ねた会合をする事になった。

 形式上、主力はエルケナーさん率いる街の守備隊という形になってはいるが、実力的に本当の主力は俺達になる。

 そりゃ、街からすれば元から街にいる人達よりも高額な金を出して雇ったのだから、俺達雇われ助っ人は犠牲を出してもその金に見合った働きをしてくれという訳だ。それで、宿に着いてこちら側も細かい詰めの話し合いをしようじゃないかと集まったのだが。

「この従魔可愛いね。特に毛並みが最高だよ」
「うふふ、撫で甲斐がありますね」

『『わおん』』

 えーと、見ての通りだが女性二人はコルとマナをもふもふと撫でるのに夢中のようだ。今までずっと黙っていたミリアムさんだが、宿に到着して落ち着くなり俺の了承を得るやいなやコルとマナをずっと撫で回している。そしてリタさんもミリアムさんに負けじと二匹を撫で回している。宿に来るまでほとんど喋らなかったミリアムさんだが、従魔がずっと気になっていたらしい。

「ハッハッハ、従魔使いは滅多にいねえからな。しかもエリオが連れている従魔はどことなく愛嬌があるもんな」

「確かにな。俺も傭兵稼業であちこちに行くが従魔使いはほとんど見ないな」

 筋肉おっさんのベルマンさんが豪快に笑い、バルミロさんも頷いて納得している。
 何だか皆さん緊張感があまりないんだけど大丈夫かな。
 とりあえず、俺が進行役を買って出るしかないか。

「えー、皆さん。こちらに注目してくれ!」

 手を叩きながら皆に呼びかける。
 思い思いに寛いでいた人達だったが、俺の呼びかけに気づいて皆こちらに顔を向けてくれた。無視されなくて良かった。もしされてたらテーブルをひっくり返していたところだったよ。

「さっきエルケナーさん達と守備隊との連携について話しましたが、俺達も各人の戦い方や連携とか含めて細かい動きについて詰めの話をしましょう」

「エリオさん格好いいっすね。何だか僕達のリーダーっぽいっすよ」

 いやいや、俺を持ち上げても何もあげないよロドリゴ君。

「リーダーかどうかは置いといて、皆さん得意な戦い方とかあります? それによって役割分担を決めましょうよ」

「ガッハッハッ! 俺はこの強靭な筋肉で盾を使い壁役をこなしながらこの斧で相手を豪快に叩きのめすスタイルだ。壁役は任しとけ!」

 ベルマンさんは見たまんまだな。

「フッ、俺は持ち前の速さと剛剣で敵を斬り倒すタイプだな」

 バルミロさんは速さだけでなく強さもあるもんな。

「あたしとロドリゴは壁役がいれば大活躍出来るよ。あたしの魔法とロドリゴの槍捌きはどこへ行っても引く手あまたさ」

 綺麗なお姉さんと凛々しい弟君コンビも戦力として強力だよな。
 そういえば、ラモンさんとミリアムさんは歳が離れているがどういう関係なんだろう。そして何が得意なんだろうか。

「エリオ殿よろしいかな。私の戦い方は片手剣と盾を使い状況を見極めながら臨機応変に動くタイプです。魔法も使えますぞ。あと、雑事や交渉事も得意ですな」

「えーと、私は風魔法や聖魔法が使えます」

 ラモンさんは万能タイプでミリアムさんは聖魔法を使えるのか。俺も持ってるし治療関係は問題なさそうだな。

「そして俺が剣士兼従魔使い。これなら相手が多くても大丈夫そうですね。前衛の壁役はベルマンさん、攻撃はバルミロさん、ロドリゴ君と俺で、ラモンさんは後衛を庇いながら中段で全体把握。リタさんとミリアムさんは後衛布陣でいいですか?」

「異議なし!」

「ハッハッハ! 俺は戦い慣れてるからどんな相手でもどんと来いだ」
「フッ、俺も腕が鳴るぜ!」
「リーダーのエリオさんよろしくっすね」

「ロドリゴ君。俺は戦いの経験もそんなにないし、リーダーの器じゃないって」

 俺がそう言うと、リタさんがすかさず俺の言葉を否定してきた。

「何を言ってんのさ。あたしはこう見えても人を見る目はあるんだ。自覚がないみたいだけどあんたには人を惹き付ける特別な雰囲気があるし、大勢の人を束ねて率いていくような大きな将器を感じるよ。過去の偉人達も皆最初はそんなもんさ。孤児だったり肉屋だった人間が大将軍の地位に上り詰めたり、元々は街のゴロツキだった人が仲間達の助けを得ながら国を興して初代皇帝になった人だっているからね。あんたには皆があんたの為に役に立ちたいと思わせるような何かを持ってるよ」

「そうですな。エリオ殿には言葉では言い表せないような魅力や風格がありますぞ」
「私もそう思います」

『『ワウ!』』

「はあ、わかりましたよ。上手く言いくるめられてるような気がするけどリーダーとしての自覚を持って何とか頑張ります。当然、皆さんの協力あってこそですけどね。頼みますよ」

 何だかなぁ…この前まで底辺だった俺がリーダーと呼ばれるなんてね。

「ハッハッハ、心配するな。俺たちが支えてやるからよ」

「ところで、皆はあまり緊張感がないけど相手を舐めてる訳じゃないよね?」

「フッ、舐めてなんかいないさ。今は緊張感がないように見えるが、こういうのはメリハリを付けないとな。四六時中気を張っていたら肝心の戦いの前に精神を擦り減らしてしまう。こういう緩い時間も必要だと思うぞ」

 バルミロさんの言葉に皆が頷いてるな。
 言われてみればその通りかもしれない。
 よし、俺もリラックスしよう。俺は俺なりにリーダーとして出来る事をやればいい。

「そうだね。俺もそうするよ」

 でも、俺の癒し成分のコルとマナは相変わらずリタさんとミリアムさんに捕まっていて当分手放してもらえそうもなかった。俺のモフ分補給はまだ当分の間お預けのようだ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

処理中です...