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第27話 リーダーとしての自覚

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 俺は守備隊の依頼を引き受ける事にした。
 エルケナーさんに俺の意思を伝え、正式に依頼の契約を交わす。一応だが守備隊のメインはこの街に元からいる人達で、俺と他の六人の外部委託組の人達は影の主力扱いとなった。エルケナーさん達が指揮する街の守備隊と連携しながら臨機応変に戦う許可を貰った。

 俺以外の委託契約を結んだ六人の顔ぶれに触れておこう。

 模擬戦で最初に戦ったおっさん剣士のバルミロさん。
 全身筋肉のガタイがでかいおっさん戦士のベルマンさん。
 魔法使いで姉のリタさんと槍使いで弟のロドリゴ君。
 そして、一番歳上で苦み走ったいい男の魔法剣士のラモンさんと、もう一人いた若い女性で魔法使いのミリアムさんだ。

 そして、剣士兼従魔使いの俺を入れて合計七人だな。
 立場としてはこの街に雇われた七人の助っ人というところか。

 守備隊の人達と顔合わせをした後、俺達七人は街が用意してくれた宿で作戦会議を兼ねた会合をする事になった。

 形式上、主力はエルケナーさん率いる街の守備隊という形になってはいるが、実力的に本当の主力は俺達になる。

 そりゃ、街からすれば元から街にいる人達よりも高額な金を出して雇ったのだから、俺達雇われ助っ人は犠牲を出してもその金に見合った働きをしてくれという訳だ。それで、宿に着いてこちら側も細かい詰めの話し合いをしようじゃないかと集まったのだが。

「この従魔可愛いね。特に毛並みが最高だよ」
「うふふ、撫で甲斐がありますね」

『『わおん』』

 えーと、見ての通りだが女性二人はコルとマナをもふもふと撫でるのに夢中のようだ。今までずっと黙っていたミリアムさんだが、宿に到着して落ち着くなり俺の了承を得るやいなやコルとマナをずっと撫で回している。そしてリタさんもミリアムさんに負けじと二匹を撫で回している。宿に来るまでほとんど喋らなかったミリアムさんだが、従魔がずっと気になっていたらしい。

「ハッハッハ、従魔使いは滅多にいねえからな。しかもエリオが連れている従魔はどことなく愛嬌があるもんな」

「確かにな。俺も傭兵稼業であちこちに行くが従魔使いはほとんど見ないな」

 筋肉おっさんのベルマンさんが豪快に笑い、バルミロさんも頷いて納得している。
 何だか皆さん緊張感があまりないんだけど大丈夫かな。
 とりあえず、俺が進行役を買って出るしかないか。

「えー、皆さん。こちらに注目してくれ!」

 手を叩きながら皆に呼びかける。
 思い思いに寛いでいた人達だったが、俺の呼びかけに気づいて皆こちらに顔を向けてくれた。無視されなくて良かった。もしされてたらテーブルをひっくり返していたところだったよ。

「さっきエルケナーさん達と守備隊との連携について話しましたが、俺達も各人の戦い方や連携とか含めて細かい動きについて詰めの話をしましょう」

「エリオさん格好いいっすね。何だか僕達のリーダーっぽいっすよ」

 いやいや、俺を持ち上げても何もあげないよロドリゴ君。

「リーダーかどうかは置いといて、皆さん得意な戦い方とかあります? それによって役割分担を決めましょうよ」

「ガッハッハッ! 俺はこの強靭な筋肉で盾を使い壁役をこなしながらこの斧で相手を豪快に叩きのめすスタイルだ。壁役は任しとけ!」

 ベルマンさんは見たまんまだな。

「フッ、俺は持ち前の速さと剛剣で敵を斬り倒すタイプだな」

 バルミロさんは速さだけでなく強さもあるもんな。

「あたしとロドリゴは壁役がいれば大活躍出来るよ。あたしの魔法とロドリゴの槍捌きはどこへ行っても引く手あまたさ」

 綺麗なお姉さんと凛々しい弟君コンビも戦力として強力だよな。
 そういえば、ラモンさんとミリアムさんは歳が離れているがどういう関係なんだろう。そして何が得意なんだろうか。

「エリオ殿よろしいかな。私の戦い方は片手剣と盾を使い状況を見極めながら臨機応変に動くタイプです。魔法も使えますぞ。あと、雑事や交渉事も得意ですな」

「えーと、私は風魔法や聖魔法が使えます」

 ラモンさんは万能タイプでミリアムさんは聖魔法を使えるのか。俺も持ってるし治療関係は問題なさそうだな。

「そして俺が剣士兼従魔使い。これなら相手が多くても大丈夫そうですね。前衛の壁役はベルマンさん、攻撃はバルミロさん、ロドリゴ君と俺で、ラモンさんは後衛を庇いながら中段で全体把握。リタさんとミリアムさんは後衛布陣でいいですか?」

「異議なし!」

「ハッハッハ! 俺は戦い慣れてるからどんな相手でもどんと来いだ」
「フッ、俺も腕が鳴るぜ!」
「リーダーのエリオさんよろしくっすね」

「ロドリゴ君。俺は戦いの経験もそんなにないし、リーダーの器じゃないって」

 俺がそう言うと、リタさんがすかさず俺の言葉を否定してきた。

「何を言ってんのさ。あたしはこう見えても人を見る目はあるんだ。自覚がないみたいだけどあんたには人を惹き付ける特別な雰囲気があるし、大勢の人を束ねて率いていくような大きな将器を感じるよ。過去の偉人達も皆最初はそんなもんさ。孤児だったり肉屋だった人間が大将軍の地位に上り詰めたり、元々は街のゴロツキだった人が仲間達の助けを得ながら国を興して初代皇帝になった人だっているからね。あんたには皆があんたの為に役に立ちたいと思わせるような何かを持ってるよ」

「そうですな。エリオ殿には言葉では言い表せないような魅力や風格がありますぞ」
「私もそう思います」

『『ワウ!』』

「はあ、わかりましたよ。上手く言いくるめられてるような気がするけどリーダーとしての自覚を持って何とか頑張ります。当然、皆さんの協力あってこそですけどね。頼みますよ」

 何だかなぁ…この前まで底辺だった俺がリーダーと呼ばれるなんてね。

「ハッハッハ、心配するな。俺たちが支えてやるからよ」

「ところで、皆はあまり緊張感がないけど相手を舐めてる訳じゃないよね?」

「フッ、舐めてなんかいないさ。今は緊張感がないように見えるが、こういうのはメリハリを付けないとな。四六時中気を張っていたら肝心の戦いの前に精神を擦り減らしてしまう。こういう緩い時間も必要だと思うぞ」

 バルミロさんの言葉に皆が頷いてるな。
 言われてみればその通りかもしれない。
 よし、俺もリラックスしよう。俺は俺なりにリーダーとして出来る事をやればいい。

「そうだね。俺もそうするよ」

 でも、俺の癒し成分のコルとマナは相変わらずリタさんとミリアムさんに捕まっていて当分手放してもらえそうもなかった。俺のモフ分補給はまだ当分の間お預けのようだ。
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