うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人

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第12話 決着

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フィオナは焦っていた。シャルロットは何か誤解をしている様だ。どうにかして、誤解を解かなくては……。

「シャルロット様っ、待って下さ……」

止めようと声を上げるが、興奮気味の彼女の耳には届かない。
そんな中、シャルロットが手を振り上げた。すると瞬間物凄い勢いの風が吹き抜ける。フィオナとオリフェオが呆気に取られる中、先程の鳥とは比べ物にならい程大きな鳥が現れた。全長1メートル以上はあるだろうか……。更に翼開長なら、フィオナの身体の倍近くありそうだ。

「いらっしゃいませ~、アトラス」

アトラスの大きさにフィオナは、息を呑んだ。鋭い目付きでこちらを見ている。アトラスは首から下は茶や黒だが、その上は白く首回りはモフっとしていた。迫力はあるが、少し可愛いかも知れない。

グワッ‼︎

呑気にそんな事を考えていると、アトラスが、威嚇する様に鳴いた。その声にフィオナは身体をビクりとさせる。やはり、怖い……。

「さあ、アトラス。そこの下郎を懲らしめなさいませ!」

シャルロットの声を合図に、アトラスが羽をバタバタと広げると、そのまま飛ばずに突進して来る。その勢いと迫力に、フィオナの身体は強ばり動けない。
すると、瞬間身体がフワリと浮いた。オリフェオがフィオナを抱き上げたのだ。立たせてくれると、いきなり突き飛ばされた。

「っ⁉︎」

地味に痛い……。

突然の事に踏ん張れず、フィオナは少し離れた場所に尻餅をついた。いくら何でもこれは酷い、と思いながら顔をあげると、オリフェオはフィオナをまるで庇う様に前へ出てアトラスと対峙していた。

「⁉︎」

もしかして、助けてくれた……?

だが、あんなに大きく獰猛そうな鳥相手に、彼は丸腰だ。このままではオリフェオが、危険だ。

「オリフェオ殿下っ」

フィオナがそう叫んだと同時に、アトラスがオリフェオまで到達しそのまま襲い掛かる。

「え……」

と思われたが、オリフェオを素通りしてフィオナに向かって来た。

「ア、アトラス⁉︎何してますの⁉︎」

「待て‼︎相手は私だっ」

シャルロットとオリフェオの焦る声が聞こえて来た。フィオナは慌てて立ちがろうとするが……まさかの腰が抜けて立ち上がれない……。こんな時に、本当に情けない……。

そうしている間にも、アトラスが迫って来るのが見える。

もしかして、このまま食い殺されてしまうのかも知れない……そんな事を他人事の様にボンヤリと思った。

最期に、ヴィレーム様に会いたかったな……。

気が付けばアトラスが目の前にいた。シャルロットが手を構え、何かしようとしているのが視界に入る。オリフェオが急いでこちらへ向かってこようとしているのが見えた。何時もより流れる時間がゆっくりと感じた。

グワッ‼︎

「ヴィレーム、さまっ……」

フィオナは身を守る様にして、身体を縮こませる。目をギュッとキツく瞑り顔を伏せた。





◆◆◆


ガチャンッ。

「あ……」

ヴィレームの手からカップが滑り落ちた。まだ半分程残っていたお茶と割れたカップの破片が床に散らばる。

「何をなさっているんですか。仕事を増やさないで下さい」

怒られた……。
普通こう言う時、主人の心配をするものではないか?と不満に思うが、クルトはそう言う奴だ。ため息を吐く。

「ため息を吐きたいのは私の方です」

「……」

割れたカップを片付けながら、更に嫌味を言われた。ヴィレームは、暫くクルトが片付けている様子をボンヤリ眺めていた。

今日は頑張った甲斐あって、大分仕事が捗った。今夜はもう絶対仕事はしない!フィオナが帰って来たら、二人でのんびりイチャイチャして過ごす!
そんな風に考えたら、無意識に頬が緩んできた。

「ヴィレーム様、顔がダラシないですよ。まだまだ仕事がございます。気を抜かずにず、確りなさって下さい」

「……分かってるよ」

はぁ……早く、フィオナ帰って来ないかなぁ……。



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