12 / 171
第12話 決着
しおりを挟むフィオナは焦っていた。シャルロットは何か誤解をしている様だ。どうにかして、誤解を解かなくては……。
「シャルロット様っ、待って下さ……」
止めようと声を上げるが、興奮気味の彼女の耳には届かない。
そんな中、シャルロットが手を振り上げた。すると瞬間物凄い勢いの風が吹き抜ける。フィオナとオリフェオが呆気に取られる中、先程の鳥とは比べ物にならい程大きな鳥が現れた。全長1メートル以上はあるだろうか……。更に翼開長なら、フィオナの身体の倍近くありそうだ。
「いらっしゃいませ~、アトラス」
鳥の大きさにフィオナは、息を呑んだ。鋭い目付きでこちらを見ている。アトラスは首から下は茶や黒だが、その上は白く首回りはモフっとしていた。迫力はあるが、少し可愛いかも知れない。
グワッ‼︎
呑気にそんな事を考えていると、アトラスが、威嚇する様に鳴いた。その声にフィオナは身体をビクりとさせる。やはり、怖い……。
「さあ、アトラス。そこの下郎を懲らしめなさいませ!」
シャルロットの声を合図に、アトラスが羽をバタバタと広げると、そのまま飛ばずに突進して来る。その勢いと迫力に、フィオナの身体は強ばり動けない。
すると、瞬間身体がフワリと浮いた。オリフェオがフィオナを抱き上げたのだ。立たせてくれると、いきなり突き飛ばされた。
「っ⁉︎」
地味に痛い……。
突然の事に踏ん張れず、フィオナは少し離れた場所に尻餅をついた。いくら何でもこれは酷い、と思いながら顔をあげると、オリフェオはフィオナをまるで庇う様に前へ出てアトラスと対峙していた。
「⁉︎」
もしかして、助けてくれた……?
だが、あんなに大きく獰猛そうな鳥相手に、彼は丸腰だ。このままではオリフェオが、危険だ。
「オリフェオ殿下っ」
フィオナがそう叫んだと同時に、アトラスがオリフェオまで到達しそのまま襲い掛かる。
「え……」
と思われたが、オリフェオを素通りしてフィオナに向かって来た。
「ア、アトラス⁉︎何してますの⁉︎」
「待て‼︎相手は私だっ」
シャルロットとオリフェオの焦る声が聞こえて来た。フィオナは慌てて立ちがろうとするが……まさかの腰が抜けて立ち上がれない……。こんな時に、本当に情けない……。
そうしている間にも、アトラスが迫って来るのが見える。
もしかして、このまま食い殺されてしまうのかも知れない……そんな事を他人事の様にボンヤリと思った。
最期に、ヴィレーム様に会いたかったな……。
気が付けばアトラスが目の前にいた。シャルロットが手を構え、何かしようとしているのが視界に入る。オリフェオが急いでこちらへ向かってこようとしているのが見えた。何時もより流れる時間がゆっくりと感じた。
グワッ‼︎
「ヴィレーム、さまっ……」
フィオナは身を守る様にして、身体を縮こませる。目をギュッとキツく瞑り顔を伏せた。
◆◆◆
ガチャンッ。
「あ……」
ヴィレームの手からカップが滑り落ちた。まだ半分程残っていたお茶と割れたカップの破片が床に散らばる。
「何をなさっているんですか。仕事を増やさないで下さい」
怒られた……。
普通こう言う時、主人の心配をするものではないか?と不満に思うが、クルトはそう言う奴だ。ため息を吐く。
「ため息を吐きたいのは私の方です」
「……」
割れたカップを片付けながら、更に嫌味を言われた。ヴィレームは、暫くクルトが片付けている様子をボンヤリ眺めていた。
今日は頑張った甲斐あって、大分仕事が捗った。今夜はもう絶対仕事はしない!フィオナが帰って来たら、二人でのんびりイチャイチャして過ごす!
そんな風に考えたら、無意識に頬が緩んできた。
「ヴィレーム様、顔がダラシないですよ。まだまだ仕事がございます。気を抜かずにず、確りなさって下さい」
「……分かってるよ」
はぁ……早く、フィオナ帰って来ないかなぁ……。
「シャルロット様っ、待って下さ……」
止めようと声を上げるが、興奮気味の彼女の耳には届かない。
そんな中、シャルロットが手を振り上げた。すると瞬間物凄い勢いの風が吹き抜ける。フィオナとオリフェオが呆気に取られる中、先程の鳥とは比べ物にならい程大きな鳥が現れた。全長1メートル以上はあるだろうか……。更に翼開長なら、フィオナの身体の倍近くありそうだ。
「いらっしゃいませ~、アトラス」
鳥の大きさにフィオナは、息を呑んだ。鋭い目付きでこちらを見ている。アトラスは首から下は茶や黒だが、その上は白く首回りはモフっとしていた。迫力はあるが、少し可愛いかも知れない。
グワッ‼︎
呑気にそんな事を考えていると、アトラスが、威嚇する様に鳴いた。その声にフィオナは身体をビクりとさせる。やはり、怖い……。
「さあ、アトラス。そこの下郎を懲らしめなさいませ!」
シャルロットの声を合図に、アトラスが羽をバタバタと広げると、そのまま飛ばずに突進して来る。その勢いと迫力に、フィオナの身体は強ばり動けない。
すると、瞬間身体がフワリと浮いた。オリフェオがフィオナを抱き上げたのだ。立たせてくれると、いきなり突き飛ばされた。
「っ⁉︎」
地味に痛い……。
突然の事に踏ん張れず、フィオナは少し離れた場所に尻餅をついた。いくら何でもこれは酷い、と思いながら顔をあげると、オリフェオはフィオナをまるで庇う様に前へ出てアトラスと対峙していた。
「⁉︎」
もしかして、助けてくれた……?
だが、あんなに大きく獰猛そうな鳥相手に、彼は丸腰だ。このままではオリフェオが、危険だ。
「オリフェオ殿下っ」
フィオナがそう叫んだと同時に、アトラスがオリフェオまで到達しそのまま襲い掛かる。
「え……」
と思われたが、オリフェオを素通りしてフィオナに向かって来た。
「ア、アトラス⁉︎何してますの⁉︎」
「待て‼︎相手は私だっ」
シャルロットとオリフェオの焦る声が聞こえて来た。フィオナは慌てて立ちがろうとするが……まさかの腰が抜けて立ち上がれない……。こんな時に、本当に情けない……。
そうしている間にも、アトラスが迫って来るのが見える。
もしかして、このまま食い殺されてしまうのかも知れない……そんな事を他人事の様にボンヤリと思った。
最期に、ヴィレーム様に会いたかったな……。
気が付けばアトラスが目の前にいた。シャルロットが手を構え、何かしようとしているのが視界に入る。オリフェオが急いでこちらへ向かってこようとしているのが見えた。何時もより流れる時間がゆっくりと感じた。
グワッ‼︎
「ヴィレーム、さまっ……」
フィオナは身を守る様にして、身体を縮こませる。目をギュッとキツく瞑り顔を伏せた。
◆◆◆
ガチャンッ。
「あ……」
ヴィレームの手からカップが滑り落ちた。まだ半分程残っていたお茶と割れたカップの破片が床に散らばる。
「何をなさっているんですか。仕事を増やさないで下さい」
怒られた……。
普通こう言う時、主人の心配をするものではないか?と不満に思うが、クルトはそう言う奴だ。ため息を吐く。
「ため息を吐きたいのは私の方です」
「……」
割れたカップを片付けながら、更に嫌味を言われた。ヴィレームは、暫くクルトが片付けている様子をボンヤリ眺めていた。
今日は頑張った甲斐あって、大分仕事が捗った。今夜はもう絶対仕事はしない!フィオナが帰って来たら、二人でのんびりイチャイチャして過ごす!
そんな風に考えたら、無意識に頬が緩んできた。
「ヴィレーム様、顔がダラシないですよ。まだまだ仕事がございます。気を抜かずにず、確りなさって下さい」
「……分かってるよ」
はぁ……早く、フィオナ帰って来ないかなぁ……。
119
お気に入りに追加
1,590
あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる