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第4話 手懐けた野良犬に名前を名付ける

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 見た目が狼犬の野良犬に懐かれてしまった。
 わしゃわしゃと体を撫でてあげると喜んで尻尾がブンブン動いてる。

「こいつ、本当に毛並みがいいな」

 改めて見てみると、金色がかった毛並みは滑らかで品もある。
 とても賢そうだし、独り暮らしの俺に一匹くらい家族が増えてもいいかもな。

「じゃあ、俺についてくるか?」

 そう言うと、俺の言葉を理解しているのか『わうわう』と吠えて俺の横に並んで同じ速度で並んで歩いている。なんだか賢い狼犬だな。

 ダムドの街まで狼犬をお供にして戻っていく。
 街の入口に着くと小屋の前に立っていた顔見知りの門番のホルトさんが俺の姿を見つけて声をかけてきた。

「やあ、エリオ。薬草採取の帰りかい?」

「ええ、ギルドが上級薬作成に使用する薬草をいつもよりも高く買い取ってくれるらしいのでいっぱい採取してきたんですよ」

「そうか。エリオにとっては稼ぎ時だな」

「ハハ、今から買取査定が楽しみです」

「ところで、エリオの脇にいる狼犬はなんなんだ?」

『ウオン!』

 ホルトさんが俺についてきた狼犬を指差して尋ねてきた。

「コイツですか? 俺が薬草を採取してたらいつの間にかそばに近寄って来てたんですよ。魔獣なのか動物なのかわからないけど、俺を襲ってくる気配もないから、手持ちの肉をあげたら懐かれちゃって。仕方がないから俺が飼おうと思って連れてきたんです」

「そうか。でも、従魔でも飼い犬でも同じだが、決まりで街中で普段一緒に連れて歩くにはギルドに登録しなくてはいけないんだ。私は簡易鑑定スキル持ちだからその狼犬を鑑定して届け出に必要な申請書類を作ってやるよ」

「ありがとうホルトさん。じゃあ、よろしくお願いします」

 ホルトさんが簡易鑑定スキルで俺の脇に座っている狼犬の鑑定を始めた。
 でも、どういう訳か首を傾げて不思議がってるぞ。
 何かおかしいところでもあるのかな?

「なあ、エリオ。この狼犬は魔獣みたいだぞ。どこで拾ってきたのか知らないがよく手懐けられたな」

「そうなんですか?」

「ああ、そいつは既にエリオの従魔になっているみたいだ」

 俺の従魔?
 ホルトさんの話だとコイツは俺の従魔になっているらしい。
 俺には魔獣を手懐け使役するスキルもないのに何でコイツは従魔になってるんだ?
 それに、コイツは野良犬じゃなくて狼犬タイプの魔獣だったのか。

 そこで俺はつい最近会った流れの行商人のおっさんの言葉を思い出した。
 確かサービスで干し肉を貰った時にあのおっさんはこう言ってたよな。

『嘘か真か知らないがスキルがなくても魔物や魔獣を手懐けられるという干し肉じゃよ』

 ──あの言葉は本当だったのか?

「それで、コイツの見た目は狼犬に見えるけど狼系の魔獣なんですか?」

「それなんだがな。既に誰かの従魔になっている魔獣は鑑定スキルでもその従魔が持っているスキルや称号は見えないのだが、従っている主人と従魔の種族までは他人からも鑑定出来る。この魔獣は主の名前がエリオと判るだけで種族情報が鑑定でもなぜか出てこないのだ」

「そんなことってあるんですか?」

「いや、こういうケースは滅多にないと思うぞ。まあ、見たところ害はなさそうだし大丈夫だろう」

「それで、このままでもコイツをギルドで従魔登録出来ますか?」

「それは問題ない。この魔獣の主が既にエリオになっているのは確かだし、ギルドでおまえさんの従魔として登録出来るから心配はいらないよ」

 良かった。コイツを連れてきたは良いもののギルドで登録出来なかったら山へ戻すしかなかったからな。
 いや、戻すにしても既に俺に懐いてしまったコイツを山へ戻すのは俺自身の気持ちが許さない。

「このまま登録出来るのなら従魔登録に必要な申請書類ってやつをお願いします」

「ああ、わかった。でも、その前にエリオはこの従魔に名前を付けてくれ。申請には従魔の名前が必要なんだよ」

 名前か…コイツに相応しいのはどんな名前だろうか。
 あれこれと名前を思い浮かべるが、なかなかこれだといった名前が出てこない。
 暫くウンウンと唸りながら考えていたが、ようやくしっくりする名前を思いついた。

「なあ、おまえの名前は『コル』でどうだ?」

『ウオン!』

 おお、この名前を気に入ってくれたみたいだ。
 尻尾を大きくブンブン振って喜んでいる。

「よし、おまえの名前は『コル』だ。これからよろしくな」

『ウォオオン!』

「ホルトさん、そういう訳でコイツの名前は『コル』に決まりました。届け出に必要な書類ってやつを作ってくれませんか」

「そうか、この従魔の名前は『コル』か。私も良い名前だと思うぞ。書類は今作るから待っていてくれ」

 暫くすると、書類を書き終わったホルトさんから一枚の紙を渡された。

「エリオ。この紙をギルドに持っていけばその魔獣の従魔登録が出来る。鑑定者である私のサインと、従魔契約してある主と従魔の名前が書いてある。登録が済むと従魔である証として首輪が貰えるからそれをこの魔獣に付けるんだぞ」

「ありがとうホルトさん。手間をかけさせて申し訳ない」

「いいってことよ。これも仕事のうちだから気にするな」

 ホルトさんと別れた俺は、横に並んで一緒に歩いているコイツを登録しにギルドに向かった。
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