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第5章
Bon voyage ~バイク旅~
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慎重にサイドスタンドにバイクをもたれかからせて、キーをOFFに回しエンジンを切った。
この駐車場自体が、傾斜があり店の裏の入り口近くは特に傾斜が強いので、バイクには優しくない
駐車場である。
バイクに跨ったまま、涼はスマホのミュージックプレーヤーをOFFにし、
ヘルメット左のインカムをタッチしてスイッチをOFFにした。
続いて、グローブを外すとヘルメットのシールドを開けた。
バイクから降りるとキーを抜き、ヘルメットの中にグローブを押し込むと
バイクのリアにあるメットホルダーに掛けるとロックした。
そして、そのまま、髪の毛を手櫛でオールバックにかき揚げながら入り口方向に歩いて行った。
ドライブスルーの車列の間を抜けて、店内へと入って行くと、すぐのテーブルに
朝マックを食べている住谷永司が居た。
「びいらく」のサブリーダーで、ガッチリ体形、身長は180センチ位で短髪のツーブロックに
刈り上げられている。
年齢は30歳と聞いている。
いつも、年下の涼のサポートをしてくれている頼れる人物である。
今日は、黒のSINPSONのジャケット着ている。
年下の涼から挨拶をした。
「お早うございま~す!」
「おぐあようごぐあいます。」
住谷は微笑みながら、ハンバーガーを口に押し込んでいた。
「永ちゃんはいつも早いですね~~~。ちょっと、私も朝マック買ってきますわ。」
そう言うと涼は、左奥のカウンターの方へ歩いて行った。
暫くすると両手にトレーを持って帰って来た。
永司の横を通り過ぎると、テーブルにトレーを置き、向かい側に座った。
「涼さん、まだまだ、朝晩は冷えますね。ウインタージャケットを着て来て正解ですわ・・・」
涼は軽く返事をすると、自分のホットコーヒーにミルクとスティックシュガーの半分を入れて
白いプラスティック製のマドラーとも、スプーンとも判別出来ない物で、かき混ぜてから、
ソーセージエッグマフィンの包み紙を開いて、かぶりついた。
一連の行動が終わると、それを見ていた永司が話を続けた。
「今日は、涼さんと、修ちゃんとゆっきーさんの4人ですかね?」
「やっぱり、GW前と言うのは参加者が少ないですね~~~~」
マフィンを飲み込んだ涼が口を開いた。
「いや、朝一にゆっきーさんからLINE電話があって、お兄さんも来るそうですよ。第二で。」
「兄さんって、隼乗りの本田さんですよね?」
「そうそう。はやぶたさんです・・・あははは・・・」
永司も涼につられて笑っていた。
10分位経過しただろうか。
扉を押して、一人の髭面の男が入って来た。
身長は165cmぐらいで3センチほどの短髪頭にBATSUのブラックフェイクレザーの
ライダースジャケットを着ている。
扉の方を向いて座っている永司が右手を少し上げて、名前を呼んだ。
「修ちゃん、こっちこっち。。」
涼も振り返って、修平を見ると手を上げて、挨拶をした。」
「修ちゃん、おはよう。いつもギリやね~~~~あはは・・・。」
涼に皮肉を言われて、顔に始末悪い様子が出てる男は、保田修平、25歳である。
二人に向かって、修平が挨拶をする。
「お早う。まだ、時間前ですよね?」
「うん!確かに13分前ですよ・・・・あはは。」
涼が茶化した返事をした。
「僕もコーヒーだけでも買ってきますわ。」
修平はそう言うと奥に消えていった。
それから10分程した、AM8:00前にマクドナルドの出入り口から、
涼達3人の男が出てきた。
3人はそのまま駐車場の奥に停まっている3台のバイクを、目指して歩いた。
三人はそれぞれのバイクの前でヘルメットを被り、身支度を始めた。
住谷永司のバイク、シルバーのFJR1300はアクラポビッチの二本出しサイレンサー、
GIVIのモノキーケースV47のトップケース。
ロングスクリーン、そしてZUMO660のナビをハンドルセンターに取り付けている。
一方、保田修平は赤色のドゥカティのモンスター696に専用のシートバッグとメーターバイザーを装着している。
涼は、右手の親指と人差し指で輪っかを作った手を、永司の前に突き出しながら言った。
「永ちゃん、インカムのスイッチOK?」
「涼さん、話しながら走りましょか?Hな話でも・・・あはははは・・・・」
永司の返事に涼も微笑んで、今度は修平の顔を見ながら話しかけた。
「修ちゃん、レーダー探知機たのみますよ・・・。」
「わかってますよ~~~~。今、スイッチ入れますよ。」
修平はそう返事すると、HJCのトロフィーのヘルメット左に取り付けてあるユピテルのZ120B
レーダー探知機のスイッチを入れた。
涼も話をしながら、スマホをバイクに取り付けて、セットするとインカムのスイッチを入れた。
出発の用意が出来た3人は涼が先頭となり、その後に修平、最後尾に永司が走り出した。
少しの間、1号線を大津向いて走った後、湖西道路(161号線)に向かって走って行った。
涼はミュージックを聞いていたが、トンネルを出た辺りで、永司との
インカム通話のBluetoothに切り替えた。
「もう、流石に音楽は飽きましたわ・・・・少し話ながら走りますか?」
「了解です。何の話します?あははは・・・・」
「恋話でもしますか?永ちゃんの・・・・・あははは。」
「それだったら、涼さんとゆっきーの話でも聞きたいですね~~~~」
こんな話をしてる間に、修平はミュージックを聞きながら顎でリズムをとっているので
その滑稽な姿に、二人は笑うのを我慢出来ずに噴出した。
「ぶっ~~~~~。あははははははは・・・・・。」
20~30分走っていると、真野ICの標識が見えてきた。
ICといっても、現在は無料のバイパスなので、125cc以上のバイクなら、
自由に通行が可能である。
「永ちゃん、降りるよ~~~」
涼はそう言うと、左ウインカーを出してICを下って行った。
突き当りの信号を左折して、後は道なりに鯖街道(367号線)に出るまで走るだけである。
永司が涼に話しかけた。
「それで、涼さん、話の続きわ?・・・聞きたいなぁ~~~~~」
「えっ?ゆっきーとの事?」
「そうそう!」
「別に特別なことはないですよ。ただ、時々ゆっきーが見てるなぁ~と、
視線を感じる時はありますけど・・・」
「それそれ!俺も時々涼さんを見てるゆっきーを見かける事ありますから。」
確かに、涼の容姿はイケメンの部類に入る。と言うより、かなりイケメンであるので
女性なら、10人中8人は好意を持つであろう。
「でもね~、永司さん、俺、暫くは彼女を作る気無いですよ。それに、リーダーの俺が
メンバーの女の子と付き合ったりしたら、びいらくの空気が悪くなるでしょ?」
このコミュニティは、女性と男性の割合は、ほぼ半々なので、女性陣のパワーは圧倒的である。
「じゃ、そう言う事にしときましょか?でも、ゆっきーを傷つけずに、
納得させるのはムズイですよ。」
「そうですよね~~。でも俺にも今、仲の良い女性がいますしね~~~。」
こんな会話をしている間に、バイクは右折して鯖街道へ入る交差点の手前まで来ていた。
丁度、赤信号で3台のバイクは先頭の乗用車の前に出て並んだ。
「永司さん、ここからは快走路なんでインカムを切りますよ?お気に入りのミュージックを
聞きながら流して走りたいんで。」
「了解で~す。気持ち良く走りましょか?合流場所は道の駅くつき本陣でしたよね?」
「そうです!じゃ、行きましよか~~~~。」
涼はそう言うと、インカムを指でタッチして音楽に切り替えると、青信号と共に右折して走り出した。
涼のヘルメットの中では8ビートの女性シンガーの歌声が鳴り響いている。
いきなり、切り返しのコーナーが連続する。
涼のライディングの基本は安全に気持よく流すことであるので、三速が基本で、
コーナー手前でもアクセルワークで、エンジンブレーキを利かせるだけである。
それでもオーバースピードの時は、少しリアブレーキを踏む。
勿論、コーナーリング中は僅かにアクセルは開けてテンションをかけているし、
コーナー出口手前から少しアクセル捻り、そのまま、立ち上がって行くが、
長い直線であってもそれ以上はアクセルを開く事は無い。
コーナーを攻めると言う走りには程遠いライディングではあるが、これが思ったよりも気持ちよく
そして、早く走れるのが不思議である。
びいらくのメンバーの殆どが涼のこの走りを真似ている。
メンバー曰く、エコ運転で燃費とエンジンにも優しいらしい。
3台のバイクは一定のスピードで、遅い車があれば上手くスルーして追い越して行く。
幾つかの集落を抜け、もうすぐ川沿いの道に出る切り返しが必要な連続コーナーの
手前に差し掛かったところ前方でライダースジャケットを着た中年の男性が、
走行車線の真ん中で両手を広げて、止まれと言うジェスチャーをしている。
涼はシフトダウンとブレーキングを繰り返しながら、インカムをタップして、永司に話掛けた。
「永ちゃん、これは何かあったよ。」
「事故と違いますかね?」
永司が即答した。
とりあえず、三人はバイクのハザードランプを出し、バイクを停めた。
涼はヘルメットシールドを開けて、バイクから降りると、その中年男性に話しかけた。
「事故ですか?大丈夫ですか?」
男性は焦りながら、返答した。
「すみません。4台で走行中に仲間2台が次のコーナーで事故りまして・・・・・」
「救急車を呼びましょうか?」
「ありがとう御座います。もう一人の仲間が助けに行ってるので、大丈夫です。」
「そうですか。では、行きますので・・・・。」
涼はそう言とう、バイクに戻り、その事を2人に話してからバイクに跨った。
涼達の後ろには既に2台の乗用車が停まっていた。
涼達が走り出すと、先ほどの男性は軽く会釈していた。
徐行しながら、一つ目の右コーナーを抜けると、次の左コーナーの対向車線側の
山肌の下に一台、その手前に一台のバイクが倒れている。
一人は対向車を停めながら、携帯で話しをしているようで、もう一人は
レザージャケットこそ白く擦り切れているが
元気なようで、倒れたままの男性のシールドを開けて話しかけていた。
その横を涼達が静かに走ると、前方左端に1台のバイクが停めてあった。
恐らく、携帯で話しながら対向車を止めている男性のバイクであろう。
「永ちゃん、あの事故は想像つくね~~~」
「あっ!私も言おうと思ってたんですよ。」
「じゃ、永ちゃんがどうぞ・・・・。」
永司が話始めた。
「あくまで、私の推測ですよ~~~~。」
「わかってますって・・・あははは。」
「最後尾で私たちのバイクを止めてた男性と、先頭で対向車を止めてた男性は
ベテランライダーですよね?そして、間で倒れてた男性と看病していた男性はどちらも、
リターンライダーでしょ?」
永司は話を続けた。
「走行中は先頭とケツ持ちがベテランで、中2人がリターンか初心者と言うところですよね?
先頭に付いて走っていた二番手のライダーが早い切り返しが必要な連続コーナーで、
減速と切り返しが出来なくて急ブレーキの末に転倒して対向車線まで、滑って行き
ガードレールに激突した感じですね。」
涼が相槌を打った。
「俺もそう思うよ。そして、三番手がそれを避けようとして、ブレーキング、転倒ってとこかな?」
永司が付け足した。
「その証拠に、先頭とケツは転倒していないからねぇ~。
それにしても、二番手は思いっきり、パニくってたんだろうな~~~。」
そして、涼が締めくくった。
「俺たちも調子にのって、スピードを出してると・・・・・・・・気を付けましょ。」
その時、涼の脳裏には4年前の事故が走馬灯のように流れたが、もう終わった事だと
自分に言い聞かせて、その気持ちを押し込めた。
この駐車場自体が、傾斜があり店の裏の入り口近くは特に傾斜が強いので、バイクには優しくない
駐車場である。
バイクに跨ったまま、涼はスマホのミュージックプレーヤーをOFFにし、
ヘルメット左のインカムをタッチしてスイッチをOFFにした。
続いて、グローブを外すとヘルメットのシールドを開けた。
バイクから降りるとキーを抜き、ヘルメットの中にグローブを押し込むと
バイクのリアにあるメットホルダーに掛けるとロックした。
そして、そのまま、髪の毛を手櫛でオールバックにかき揚げながら入り口方向に歩いて行った。
ドライブスルーの車列の間を抜けて、店内へと入って行くと、すぐのテーブルに
朝マックを食べている住谷永司が居た。
「びいらく」のサブリーダーで、ガッチリ体形、身長は180センチ位で短髪のツーブロックに
刈り上げられている。
年齢は30歳と聞いている。
いつも、年下の涼のサポートをしてくれている頼れる人物である。
今日は、黒のSINPSONのジャケット着ている。
年下の涼から挨拶をした。
「お早うございま~す!」
「おぐあようごぐあいます。」
住谷は微笑みながら、ハンバーガーを口に押し込んでいた。
「永ちゃんはいつも早いですね~~~。ちょっと、私も朝マック買ってきますわ。」
そう言うと涼は、左奥のカウンターの方へ歩いて行った。
暫くすると両手にトレーを持って帰って来た。
永司の横を通り過ぎると、テーブルにトレーを置き、向かい側に座った。
「涼さん、まだまだ、朝晩は冷えますね。ウインタージャケットを着て来て正解ですわ・・・」
涼は軽く返事をすると、自分のホットコーヒーにミルクとスティックシュガーの半分を入れて
白いプラスティック製のマドラーとも、スプーンとも判別出来ない物で、かき混ぜてから、
ソーセージエッグマフィンの包み紙を開いて、かぶりついた。
一連の行動が終わると、それを見ていた永司が話を続けた。
「今日は、涼さんと、修ちゃんとゆっきーさんの4人ですかね?」
「やっぱり、GW前と言うのは参加者が少ないですね~~~~」
マフィンを飲み込んだ涼が口を開いた。
「いや、朝一にゆっきーさんからLINE電話があって、お兄さんも来るそうですよ。第二で。」
「兄さんって、隼乗りの本田さんですよね?」
「そうそう。はやぶたさんです・・・あははは・・・」
永司も涼につられて笑っていた。
10分位経過しただろうか。
扉を押して、一人の髭面の男が入って来た。
身長は165cmぐらいで3センチほどの短髪頭にBATSUのブラックフェイクレザーの
ライダースジャケットを着ている。
扉の方を向いて座っている永司が右手を少し上げて、名前を呼んだ。
「修ちゃん、こっちこっち。。」
涼も振り返って、修平を見ると手を上げて、挨拶をした。」
「修ちゃん、おはよう。いつもギリやね~~~~あはは・・・。」
涼に皮肉を言われて、顔に始末悪い様子が出てる男は、保田修平、25歳である。
二人に向かって、修平が挨拶をする。
「お早う。まだ、時間前ですよね?」
「うん!確かに13分前ですよ・・・・あはは。」
涼が茶化した返事をした。
「僕もコーヒーだけでも買ってきますわ。」
修平はそう言うと奥に消えていった。
それから10分程した、AM8:00前にマクドナルドの出入り口から、
涼達3人の男が出てきた。
3人はそのまま駐車場の奥に停まっている3台のバイクを、目指して歩いた。
三人はそれぞれのバイクの前でヘルメットを被り、身支度を始めた。
住谷永司のバイク、シルバーのFJR1300はアクラポビッチの二本出しサイレンサー、
GIVIのモノキーケースV47のトップケース。
ロングスクリーン、そしてZUMO660のナビをハンドルセンターに取り付けている。
一方、保田修平は赤色のドゥカティのモンスター696に専用のシートバッグとメーターバイザーを装着している。
涼は、右手の親指と人差し指で輪っかを作った手を、永司の前に突き出しながら言った。
「永ちゃん、インカムのスイッチOK?」
「涼さん、話しながら走りましょか?Hな話でも・・・あはははは・・・・」
永司の返事に涼も微笑んで、今度は修平の顔を見ながら話しかけた。
「修ちゃん、レーダー探知機たのみますよ・・・。」
「わかってますよ~~~~。今、スイッチ入れますよ。」
修平はそう返事すると、HJCのトロフィーのヘルメット左に取り付けてあるユピテルのZ120B
レーダー探知機のスイッチを入れた。
涼も話をしながら、スマホをバイクに取り付けて、セットするとインカムのスイッチを入れた。
出発の用意が出来た3人は涼が先頭となり、その後に修平、最後尾に永司が走り出した。
少しの間、1号線を大津向いて走った後、湖西道路(161号線)に向かって走って行った。
涼はミュージックを聞いていたが、トンネルを出た辺りで、永司との
インカム通話のBluetoothに切り替えた。
「もう、流石に音楽は飽きましたわ・・・・少し話ながら走りますか?」
「了解です。何の話します?あははは・・・・」
「恋話でもしますか?永ちゃんの・・・・・あははは。」
「それだったら、涼さんとゆっきーの話でも聞きたいですね~~~~」
こんな話をしてる間に、修平はミュージックを聞きながら顎でリズムをとっているので
その滑稽な姿に、二人は笑うのを我慢出来ずに噴出した。
「ぶっ~~~~~。あははははははは・・・・・。」
20~30分走っていると、真野ICの標識が見えてきた。
ICといっても、現在は無料のバイパスなので、125cc以上のバイクなら、
自由に通行が可能である。
「永ちゃん、降りるよ~~~」
涼はそう言うと、左ウインカーを出してICを下って行った。
突き当りの信号を左折して、後は道なりに鯖街道(367号線)に出るまで走るだけである。
永司が涼に話しかけた。
「それで、涼さん、話の続きわ?・・・聞きたいなぁ~~~~~」
「えっ?ゆっきーとの事?」
「そうそう!」
「別に特別なことはないですよ。ただ、時々ゆっきーが見てるなぁ~と、
視線を感じる時はありますけど・・・」
「それそれ!俺も時々涼さんを見てるゆっきーを見かける事ありますから。」
確かに、涼の容姿はイケメンの部類に入る。と言うより、かなりイケメンであるので
女性なら、10人中8人は好意を持つであろう。
「でもね~、永司さん、俺、暫くは彼女を作る気無いですよ。それに、リーダーの俺が
メンバーの女の子と付き合ったりしたら、びいらくの空気が悪くなるでしょ?」
このコミュニティは、女性と男性の割合は、ほぼ半々なので、女性陣のパワーは圧倒的である。
「じゃ、そう言う事にしときましょか?でも、ゆっきーを傷つけずに、
納得させるのはムズイですよ。」
「そうですよね~~。でも俺にも今、仲の良い女性がいますしね~~~。」
こんな会話をしている間に、バイクは右折して鯖街道へ入る交差点の手前まで来ていた。
丁度、赤信号で3台のバイクは先頭の乗用車の前に出て並んだ。
「永司さん、ここからは快走路なんでインカムを切りますよ?お気に入りのミュージックを
聞きながら流して走りたいんで。」
「了解で~す。気持ち良く走りましょか?合流場所は道の駅くつき本陣でしたよね?」
「そうです!じゃ、行きましよか~~~~。」
涼はそう言うと、インカムを指でタッチして音楽に切り替えると、青信号と共に右折して走り出した。
涼のヘルメットの中では8ビートの女性シンガーの歌声が鳴り響いている。
いきなり、切り返しのコーナーが連続する。
涼のライディングの基本は安全に気持よく流すことであるので、三速が基本で、
コーナー手前でもアクセルワークで、エンジンブレーキを利かせるだけである。
それでもオーバースピードの時は、少しリアブレーキを踏む。
勿論、コーナーリング中は僅かにアクセルは開けてテンションをかけているし、
コーナー出口手前から少しアクセル捻り、そのまま、立ち上がって行くが、
長い直線であってもそれ以上はアクセルを開く事は無い。
コーナーを攻めると言う走りには程遠いライディングではあるが、これが思ったよりも気持ちよく
そして、早く走れるのが不思議である。
びいらくのメンバーの殆どが涼のこの走りを真似ている。
メンバー曰く、エコ運転で燃費とエンジンにも優しいらしい。
3台のバイクは一定のスピードで、遅い車があれば上手くスルーして追い越して行く。
幾つかの集落を抜け、もうすぐ川沿いの道に出る切り返しが必要な連続コーナーの
手前に差し掛かったところ前方でライダースジャケットを着た中年の男性が、
走行車線の真ん中で両手を広げて、止まれと言うジェスチャーをしている。
涼はシフトダウンとブレーキングを繰り返しながら、インカムをタップして、永司に話掛けた。
「永ちゃん、これは何かあったよ。」
「事故と違いますかね?」
永司が即答した。
とりあえず、三人はバイクのハザードランプを出し、バイクを停めた。
涼はヘルメットシールドを開けて、バイクから降りると、その中年男性に話しかけた。
「事故ですか?大丈夫ですか?」
男性は焦りながら、返答した。
「すみません。4台で走行中に仲間2台が次のコーナーで事故りまして・・・・・」
「救急車を呼びましょうか?」
「ありがとう御座います。もう一人の仲間が助けに行ってるので、大丈夫です。」
「そうですか。では、行きますので・・・・。」
涼はそう言とう、バイクに戻り、その事を2人に話してからバイクに跨った。
涼達の後ろには既に2台の乗用車が停まっていた。
涼達が走り出すと、先ほどの男性は軽く会釈していた。
徐行しながら、一つ目の右コーナーを抜けると、次の左コーナーの対向車線側の
山肌の下に一台、その手前に一台のバイクが倒れている。
一人は対向車を停めながら、携帯で話しをしているようで、もう一人は
レザージャケットこそ白く擦り切れているが
元気なようで、倒れたままの男性のシールドを開けて話しかけていた。
その横を涼達が静かに走ると、前方左端に1台のバイクが停めてあった。
恐らく、携帯で話しながら対向車を止めている男性のバイクであろう。
「永ちゃん、あの事故は想像つくね~~~」
「あっ!私も言おうと思ってたんですよ。」
「じゃ、永ちゃんがどうぞ・・・・。」
永司が話始めた。
「あくまで、私の推測ですよ~~~~。」
「わかってますって・・・あははは。」
「最後尾で私たちのバイクを止めてた男性と、先頭で対向車を止めてた男性は
ベテランライダーですよね?そして、間で倒れてた男性と看病していた男性はどちらも、
リターンライダーでしょ?」
永司は話を続けた。
「走行中は先頭とケツ持ちがベテランで、中2人がリターンか初心者と言うところですよね?
先頭に付いて走っていた二番手のライダーが早い切り返しが必要な連続コーナーで、
減速と切り返しが出来なくて急ブレーキの末に転倒して対向車線まで、滑って行き
ガードレールに激突した感じですね。」
涼が相槌を打った。
「俺もそう思うよ。そして、三番手がそれを避けようとして、ブレーキング、転倒ってとこかな?」
永司が付け足した。
「その証拠に、先頭とケツは転倒していないからねぇ~。
それにしても、二番手は思いっきり、パニくってたんだろうな~~~。」
そして、涼が締めくくった。
「俺たちも調子にのって、スピードを出してると・・・・・・・・気を付けましょ。」
その時、涼の脳裏には4年前の事故が走馬灯のように流れたが、もう終わった事だと
自分に言い聞かせて、その気持ちを押し込めた。
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