魔王の右腕 ~平和に向けての巡り旅~

Amasylia

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ルーゼはご機嫌斜め

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食事の後、二人で話したいとお父様の執務室に呼ばれた。
朝の光景を見られお父様との二人きりは落ち着かなかった。
冷静にならなきゃと自分に言い聞かせても、挙動不審になってしまう。

「エストレヤ。」

「ひゃっひゃい。」

言い直しても噛んでしまった。

「…アティラン様は…記憶を失われてからいつもあんな感じなのか。」

「…はぃ」

「…アティラン様で本当に大丈夫なのか?流されてないか?」

「ぼっ僕はグラキエス様と一緒にいたいです。」

緊張しながらも一生懸命お父様に僕の気持ちを伝えた。

「私だって二人を反対しているわけではない…だが、心配なんだ。もう少し自重すべきじゃないか?」

「…ぅっ…はぃ。」

朝の…だ。
あれは僕も良くなかったなと反省しています。

「身体だけの関係は危険だ。」

「………。」

身体だけの関係…。

「飽きられ、捨てられる。そうなって欲しくないんだ。」

「…はぃ。」

お父様は意地悪で言っているのではなく、僕達の関係を見て心配してくれてるんだ。

「…現実問題、何かのきっかけでアティラン様の記憶が戻った場合どうする?」

「…どうする…。」

僕はその事を考えないようにしていた…。
そんなことが起きたら僕が捨てられるのは決まっていたから…。

「婚約解消するかどうかは私達にだって権利があるんだ、このような場合爵位は関係ない。」

立場上爵位の下の者からの婚約解消は言い出しにくいことが多々ある。
不貞や金銭問題など証拠があるものは滞りなく離しは進むが、感情問題の場合は拗れることが多い。
暴力を受けたとしても金や権力で揉み消す事が出来るのが貴族だ。
爵位が高ければ大抵の事が許されてしまう。

「婚約解消は…。」

したくない…。

「…今ここで決めなさいと言うことじゃない。そういう可能性もあるというのを覚えておきなさい。」

「…はぃ」

可能性がある…。

「婚約解消したくないのなら私も協力するが、無理に続けることもないんだ。今のアティラン様は記憶喪失という事態に見舞われ、エストレヤが全てのように見える…。その感情が変わった時エストレヤに無理をして欲しくないんだ。」

お父様が僕の事を心配してくれるのがわかる…。
物語で呼んだことがあるが、記憶喪失になった主人公達は大抵が記憶が戻る。
戻らなかったとしても元の生活に向かうことのが多い。
忘れたままは…。

「………。」

「エストレヤ…一人で抱え込まずいつでも相談して来なさい。」

「…はぃ。」

執務室を後にし部屋に戻れば、当然のようにグラキエス様がソファに座って待っていた。

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