魔王の右腕 ~平和に向けての巡り旅~

Amasylia

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温泉

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ルーゼがぐっすり眠ってしまっている。
身体強化で魔力を使いすぎたようだ。
夜中のことだった。

「うぅ・・・苦しいよぅ」

うなされている?
額の汗がすごい。明らかに異常だ。
ルーゼの身体の中で何かが起きてる。
魔力暴走はないようだ。
遺伝子を調べてみるか。
・・・これは魔王因子が活性化している。
こいつが原因か・・・でもなんで急に活性化した?
別に悪いものではないんだがな。
ん?これは勇者因子?聖剣を持って覚醒したのか?
なんてこった。魔王と勇者の血筋がルーゼだとはな・・・
このままだとルーゼがルーゼじゃなくなってしまう。

『お前ら揃いも揃って俺の邪魔しやがって。
せっかくだ、お前らの力を徹底的に利用させてもらう』

遺伝子改造は俺の得意分野だ。

『よしできたぞ。手こずらせやがって』

身体強化は副作用を俺に流すよう調整した。
俺には副作用の類は一切きかないからな。

光と闇魔法は本来両方とも使えない。俺だって光魔法は使えたが闇魔法は魔王の身体を通して使っていた。
その時魔王因子を取り込んで無理矢理使えるようにしたくらいだ。
魔王は闇魔法、勇者は光魔法が使えた。
今のルーゼなら受け入れられると考え因子の暴走を抑制するようにして遺伝子情報を組み替えた。
もはや見た目はハイエルフの別の生き物である。

「シヅキ?」
『ルーゼ起きたか?体調はどうだ?』
「大丈夫だよ。苦しいのがなくなったみたい」
『それはよかった。
簡易的だが風呂を用意した。たまたま地中に源泉があってな。引っ張ってきた』
「なんかいつものお湯より白く濁っている?」
「とりあえず入ってみろ」
ふぁあ・・・身体に染みこんでいくみたいで気持ちいいよ」
『この地域は昔は温泉があってな。
みんなよく入ってたものだ』
「そうなんだ」
『この時代の人間は風呂には入らないのか?』
「うん。貴族はどうかわかんないけど私たちのような冒険者や一般市民は川や湖で身体を洗ってるよ。
私も冬場湖に入って一度凍りかけちゃって危なかったんだけどね」
『そんなもんなのか・・・』

ちょっとこの世界の文明に手を加えてみるか。



『今日はサーフィンで体感を鍛えるぞ』
「何をすればいいの?」
『俺がルーゼの魔力を使ってこの湖に波を起こす。
サーフボードに乗って波乗りをするんだ』
「サーフボード?
でもかなり水の温度冷たいよ?」
「そのための装備を用意した。
一角獣のウェットスーツだ。これに着替えてもらう」
「どう着るの?」
『足をこの中に入れて首まで引っ張るんだ』
「これがウェットスーツ?」
『似合っているじゃないか?』
「身体に密着していて不思議な感じ」
『それには一角獣の皮が使われていて身体を寒さから守ってくれる』
「すごい。水の冷たさを感じない。
だんだん慣れてきたみたい」
『ルーゼいいぞその調子だ』


水の上では身体強化をフルで使うと失敗する。加減が大事なんだ。
重心を鍛える訓練でもある。
使いこなせれば大きな力となる。

「シヅキ楽しいよ」


ギルドに来た。

「温泉ですか?」
「そう温泉を引き込んでみんなが身体を洗える場所を作るの」
「うーんそうですね・・・」
「なんの話をしているんだ?」
「バリスさん。
銭湯って温泉を楽しめるところを作りたいの」
「温泉?あの暖かいお湯のことか?」
「そうみんなで浸かるとあったまるよ」
「もうすぐ夏は終わるからな」
「設計図書いてきたんだ」
「どれどれ?いいんじゃないか?
ギルマスのところに持っていってやろう。
俺も用事があるんでな」

するとギルマスがものすごい勢いでこっちにきた。

「おーーーい?!ルーゼの嬢ちゃん?!
この温泉が腰痛にきくとは本当のことかね?!」
「うん。私も筋肉痛だったけど温泉に浸かったら治ったよ?」
「よし今すぐ作るぞ。町中の大工を呼んでくるんじゃ。
冒険者は今すぐトレントを狩り尽くしてくるのじゃ」
「わかりました。クエストを発注します」


3日かけて街総出で大きめの銭湯がギルドの隣に作られた。

「いい湯だな。作ってよかったなギルマス」
「あのルーゼの嬢ちゃんがいっておったからのぅ
作ってよかったわい。
是非他の街にもf普及したいのぅ」
「オーガと戦って大怪我したと言うが次の日にはピンピンしていたらしいな」
「この前も湖で大波を起こして板に乗って遊んでいたと言うしのぅ」
「ほんと規格外だよな」
「もしやエルフではなくハイエルフなのではないかのぅ。
それだとエルフどもが押し寄せてくるぞ?」
「まぁ今は大丈夫なんじゃないか?」
「実はのぅ。ルーゼが街の設備関係の情報を渡したらとんでもないものが返ってきた」
「なんだ?」
「完璧な街の上下水計画じゃ・・・」
「この街が抱えている問題を的確につき解決策を提示しておる。
上水は井戸を掘り魔石で水を引き上げる自動ポンプじゃ。今鍛治ギルドに作ってもらっとる」
「待てよ汚水はどうするんだ?」
「スライムを浄化プールに突っ込んで繁殖させて浄化させるそうだ・・・」
「あのクソ雑魚スライムを使うのか?!」
「冒険者を使ってスライムを生かして集めるのじゃ。
お前が指揮を取れ」
「わかった。ちなみにルーゼは報酬に何が欲しいて言ってるんだ?」
「おやつじゃ・・・」
「おやつだと?!」
「おやつがたくさん欲しいと言っておる」
「そんなもん金貨があれば食い放題じゃないか?」
「わからぬ。いまいち何を考えてるのかわからん。
金貨をやると言ったのに頑なにおやつがいいと聞かんかった」
「ワシは領主の坊主と料理ギルドに掛け合ってくる」


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