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過去を乗り越えて

爆弾処理と新たな仲間

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 カイルの何気ない一言に場の空気が凍った。えっ何その話、初耳である。いや待てよ、そういえばリザがフードをとった所を見たことないな。もしかして、リザは獣人なのか?それなら俺は何回モフモフのチャンスを逃したのだろう。なんか悔しいな。

「いや、知らない。」

「何で知らないんですか。リザちゃん、そうだよね?」

 カイルがリザに聞くとあからさまにリザは固まってしまった。

 この反応はもしかして本当なのか!?ミミとユキは態度的に知ってたっぽいな。なんてことだ、どうやら俺はハブられてたようだ。俺が本当かどうか気になってしまいソワソワしているのを見かねたのかユキはリザに耳元で話かける。すると震えていたリザが口を開く。

「コウさんに、、、大事な、、、お話があります。実は、、、私は、、、獣人なんです。黙っていて、、、ごめんな、、、さい。」

 リザは今まで脱ぐことがなかったフードをとる、そこには綺麗な毛並みの金色の耳があった。うわ~、モフモフしたいな、そんな邪な考えていると。

「コウ、リザが獣人なのを言わなかったのは私のせいなの。リザを責めないで、そしてリザをこれからもここにおいてやって。」

「ユキちゃん、、、いいんです。嫌だと、、、思うから、、、出ていきます。」

 獣人だったことを教えてもらえなかったことが悲しくはあるが何故出ていくなんて話になるんだろう?

「もちろんここにいていいに決まってるじゃないか。リザは家族だろ。できれば耳やシッポを触らせて欲しい。」

 ついつい欲望まで漏れ出してしまったが、家族が一緒にいるのは当たり前なんじゃないだろうか?俺の考えがズレてるのかな、なんて思っていると、リザの目からポロポロと大粒の涙が溢れ始める。まさか、耳やシッポを触られるのがそんなに嫌だったなんて、大誤算である。セクハラだったのかなとドキドキしているとリザが話しかけてくれた。

「コウさんは、、、嫌じゃ、、、ないんですか?」

 嫌?何故俺が嫌なのだろう。耳やシッポをモフモフするのはドンと来い。オールオーケーである。もしかして嬉し泣きの可能性があるのか。それなら、俺のやることは1つだ。

 俺は心を落ち着け、心を無にする。一切の雑念を捨て、リザの耳をまず1撫でする。撫でた瞬間に雷に打たれたような感覚に陥る。なんていう肌触り、俺はモフモフの魔力に耐えられず、ひと目もはばからずに一心不乱に耳をモフる。

「ひやぁん。ゔ~。」

 リザの口から可愛らしい声が漏れているが、モフモフの魔力に贖えない。俺がエンドレスでモフっていると後ろからユキに思いっきり叩かれた。
 
「コウ、何やってんの、リザから離れなさい。」

 俺は無理矢理リザから引き離される。

「貴方ね、何をやってんの。人が真面目に話してるのに、なにリザの耳を気安く触って。セクハラよ!」

 ユキにより強制的にリザから引き離された俺は我に返る。モフモフ、何と恐ろしいんだろう、理性が飛んでいた。

「だって、モフモフするのが嫌じゃないかって聞かれたから。やっていいのかな~て。」

「誰もそんな話してないわ。リザは獣人が嫌じゃないかって聞いたの。信じられない!」

 なんだ、モフモフが嫌じゃないかって質問じゃなかったのか。俺は悪くない、モフモフの魔力がわるいんだ。

「ごめんな、リザ。」

 俺が頭をよしよししようとすると、リザはモフモフを恐れたのか俺の手を避ける。ショックである、娘によしよしを嫌がられるのはこんな気持ちなのか、、、切ないな。

「リザ、何で獣人だからって気にしてるか分からないが、リザは家族なんだずっとここにいていいに決まってるじゃないか。」

 リザは戸惑いながら、こちらを見上げる。もの凄く不思議なものを見る目に変わっている。何故こんな顔をされているのだろう、だが目から涙が消えたので少し安心した。

「よしよし大丈夫、ユキ?変態の魔の手にかかって可愛そうに。リザ、ずっとここにいていいってよ、安心して。」

「ユキちゃん、ありがとう。コウさん、黙ってて、、、ごめんなさい。獣人、、、なのに、、、家族っていってくれて、、、ありがとう、、、ございます。でも、耳やシッポは、、、恥ずかしいので、、、いつもは。たまになら、、、いいです。」

 恥ずかしそうにモジモジしながらリザが見上げてくる。なんだろうこの愛らしい生き物は、ぎゅーてしたい。しかし、ユキの目が怖いので泣く泣く諦める。

 その後、何で獣人だと問題かを聞いたら、どうやらこの国、ザルツヘン王国では人間族以外は差別されているようだ。あの王は無能そうだったもんな、ろくなことしないな。

 その後、カイルはミミやユキ、リザに質問攻めにされ、アクトやハルも帰ってきて子供達の時間へと変わった。



 寝る時間になったのでカイルを部屋へと連れて行く。カイルはずっとミミにまとわりつかれていたので、解放された頃にはぐったりしていた。

 部屋に着くと、カイルに話しかけられる。

「獣人を家族って言ったり、奴隷に一緒の料理を食べさせたり、貴方は馬鹿なんですか。」

「馬鹿とは失礼な、俺は自分の気持ちに馬鹿正直なだけなんだよ。一緒に暮らすっていうことは家族になるってことだろ、それならご飯も一緒に食べるだろ。それが俺の当たり前だ。」

「馬鹿ですね、しかもただの馬鹿じゃなく大馬鹿だとおもいます。自分の気持ちに馬鹿正直ですか、、、。難しいですね。」

 神様にまた貰った命だから悔いがないようにってできるんだよな。1回目の人生なら絶対できなかった。そう考えたら難しいよな。

「そうだな、難しいな。」

「そうですよね、、、、。」

 また沈黙が支配する。ここまでかなと思い、出ていこうか悩んでいたら、カイルがこの沈黙を破った。

「なんで俺を買ったんですか?」

「お前が才能に溢れていたからだ。」

「嘘ですね。やっぱり銀狼族だったから珍しかったからですか?」

「嘘なもんか、銀狼族?そんなの知るか。俺はお前にキラリと光るものを見たから仲間にしたんだ。だって俺は銀狼族なんて今日初めて聞いたからな。」

「マリーさんに知ってるようなことを言ってたじゃないですか。」

「あんなの、ただマリーさんの話に乗っかっただけだよ。」

「そうなんですか。俺に金貨2枚の価値なんてないですよ。」

「ハハッ、カイルお前はまだ自分の価値をわかっていない。俺はカイルが金貨2枚なんて、なんて見る目がないんだと思ったぞ。」

「リリア1人に辛い思いをさせてる俺にそんな価値なんて、、、。」

「お前はまだ自分の中に眠る無限の可能性がわかってない。俺がお前に新しい景色を見せてやる。」

「ふん、貴方にそんなことができるんですか?やれるものならやってみてください。」

「それじゃあこれからよろしくな、カイル。」
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