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異世界での新生活

もやしではありません

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 昨日呑み過ぎて少し頭が痛い。
 ジルも俺が起きたすぐ後に目を覚ました。
 ジルも二日酔いで頭が痛そうだったがこの後パーティーでの話し合いがあるらしく、鑑定等の話は夕方からジルの部屋でやることになった。

 俺はジルからいい武器屋や防具屋、道具屋を教えてもらった。
 防具屋や道具屋は他の店より安いかららしいが、武器屋は腕が良いかららしい。
 それならと俺は武器屋へ向かった。



 武器屋に入ると中にはドワーフの親父が愛想なくカウンターに座っていた。

 そう、ドワーフである!
 ファンタジー世界お約束のドワーフである。
 この世界に来て始めてのファンタジー生物に感動してまじまじと見ていると、それが気に触ったようで睨まれた。

「武器を見にきてないなら帰れ!」

 凄い剣幕で怒鳴られてしまった。

 なぜ城で剣を貰った俺が武器屋にやってきたかというと、俺のステータスに原因があった。
 やったー、剣だと思い、試し振りをしてみたら重さに耐えられずふらつき、使いこなせないことが判明したんである。
 そう、俺の力が低すぎてロングソードは振れなかったのである。
 
 これでは戦闘にならないので俺でも使える武器と素材採取や剥ぎ取り用のナイフを探しに来たのである。

 まずは俺が使えそうな武器っていうのが、わからないから店主のドワーフに聞いてみるか。

「店主、魔物退治など冒険者の仕事で使いたいんだが、ロングソードより軽い武器はあるか。」

「冒険者だ、お前のような筋肉のないヒョロヒョロの男が魔物なんか倒せるか。」

 ヒョロヒョロ、ショックである。
 確かに攻撃力は大変低いかもしれない、だがけっしてヒョロヒョロなわけではない。
 小さなプライドである。

「店主、この店は客を選ばないといけない位の品数しかないみたいだな。」

 小さなプライドを傷つけられ、嫌味を吐いて帰ろうとするとドワーフが俺が帰るのを止めた。

「ちょっと待て、今なんて言った。この店の品数が少ないだ。よくも言いやがったな、表に出ろ。」

 『おおっ分かった』と言いかけたが自分のステータスが子供以下なことを思い出した。
 表に出たらボコボコである、話を逸らさねば。

「この店の品数が多いことは分かっています、それなら俺が使えそうな武器がありますよね。」

「あるに決まってるだろ。冒険に使う初心者用の軽い武器だな。アーミングソードやククリ刀辺りが使えるだろうが、森なんかにも入るだろうから枝払いなんかを考えればククリ刀だろうな。」

 そしてドワーフは俺にアーミングソードとククリ刀のコーナーを見せてきた。

 アーミングソードと言われどんなものかわからなかったが、どうやらロングソードの短い物だった。

 かっこよさではアーミングソードだが便利さではククリ刀らしい。
 どうするか悩んだが専門家の意見をとりいれ、ククリ刀にすることにした。

 少し眺めたがどれがいいかなんか俺が見てもわからない。
 全部鑑定するのもけっこうMPを使って疲れるからやりたくない。ドワーフの店主に聞くか。

「店主のオススメはこの中ではどれですか。」

「オススメだ、お前みたいなヒョロヒョロにはこの辺りのククリ刀だろうな。」

 ドワーフは俺に刃渡り50cm位のククリ刀を3本出してきた。とりあえず、鑑定してみる。

青銅のククリ刀(鋳造)
攻撃力    11

鉄のククリ刀(鋳造)
攻撃力    30

鉄のククリ刀(鍛造)
攻撃力 41
製作者ボーナス 攻撃力+5%

 鑑定していて、3本目を見た時吹き出してしまった。
 攻撃力も鋳造より鍛造の方が高い、そして製作者ボーナスが凄かった。
 さすがジルオススメの武器屋である。
 青銅も歴史の授業で習った気がするけど、異世界では現在でも現役なようである。

 鋳造の武器にはボーナスなんてないので、鍛造で作ったこの製作者の力なんだろう。
 でも鍛造は時間や技術がいるし、性能がいいから高いだろうな。

「2本目3本目のククリ刀は鉄なんですね、特に3本目の鍛造のククリ刀は本当に良い物です。作った人の腕が良いんでしょう、鋳造と比べ圧倒的だ。この鍛造のククリ刀はものすごくいいものなので、いいお値段しますよね。」

「ほう、見ただけで違いがわかるのか。ただのヒョロヒョロの坊主だと思っていたが、少しは見どころがあるみたいだな。そのククリ刀を作ったのは俺だ。」

 やっぱり自分の作品を褒められるのは嬉しいのだろう、ドワーフの親父は少し照れくさそうに言った。

「さすがジルさんオススメのお店ですね、本当に腕がいいんですね。」

「ジルだと。お前、疾風のジルの知り合いか?」

「疾風のジル?かはわかりませんが、Aランク冒険者のジルさんに薦められてここに来ました。」

「なんだ、あいつの知り合いか。俺の名前はガバルだ、次から名前で呼べ。金額だったな、そのククリ刀は青銅の鋳造が銅貨10枚、鉄の鋳造が銀貨1枚、鉄の鍛造が銀貨5枚だ。どうする。」

 けっこう高いな、でも大量生産とかはできそうにないから値段はこんなものなんだろう。
 俺の攻撃力を考えたら鍛造の鉄のククリ刀1択である。
 お金はある、命はお金では買えないのである。
 それならもっといい武器を使う方がいいのでは?
 服屋で売り払った金がある、まだ金には余裕があるのだ。

「ガバルさん、この鍛造の鉄のククリ刀が1番いいと思ってるんですが、ガバルさんの腕ならもっといい物がありますよね。」

「これよりいい物だ、お前にはまだ早い。しっかり使いこなせるようになってもう1度同じことを言え。」

 凄い剣幕で怒られてしまった。
 仕方ない、レベル制限があると思って我慢しよう。

 これだけ見せてもらったが、問題は俺の筋力で鉄のククリ刀を振れるかである。
 鉄の剣より短いとはいえ、少し不安である。
 恥を忍んでお願いするか。

「ガバルさんすみません、このククリ刀を少し振ってもいいですか?」

「いいぞ、振ってみろ。」

 ガバルのお言葉に甘えてククリ刀を振ってみる。
 剣の時は真っ直ぐ振るのさえ難しかったが、このククリ刀なら真っ直ぐ振ることはできた。
 少し振ってみて、これならなんとかなりそうだと1人満足し、ガバルを見たら呆れた顔をしていた。

「ガバルさんどうかしましたか?」

「お前本当にそのへっぴり腰で冒険者になるつもりか?」

 どうやら俺はかっこよく振っていたつもりだったが、へっぴり腰だったらしい。
 少し恥ずかしい。

「これから上達するんだよ。このククリ刀に決めた、これをくれ。」

「お前がいいのならいいが、後はナイフだったな。どうする?」

「オススメを教えてくれ。」

 その後ガバルのオススメを見せてもらい、鉄の鋳造のナイフを予備もいれ2本を買うことにした。
 銀貨6枚を払い、防具屋へ向かった。
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