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名前はエデン〜後〜

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 皆で昼飯を食べ終わった後、俺達は再び視察へと戻った。予定外に時間をとられたが、リンと少し距離が縮まったし、昼飯を皆喜んで食べてくれていたからよしとしよう。町の名前も考えないといけないが、とりあえず次の目的地はタマちゃん農園だ、農園の近くは大きく変わり、魔物達のための家を建てた。外観や内観を変えただけで建物の作り自体は変えていない。ただ収容可能数は今後も考えて200人の収容は可能だ。魔物達の部屋にも全室シャワーを取り付け、魔物達にも毎日のお風呂を義務付けた。魔物に入浴の文化はないのでしっかりと教えこみ、町の衛生面は完璧になった。

 魔物達の住居も通り過ぎ、やっとタマちゃん農園へと到着した。このタマちゃん農園なんだが絶対におかしい。何がおかしいかというと絶対に普通の植物より成長が早いと思うのだ。この間農園を作り植えたばかりのはずの植物が既にだいぶ成長していた。さすが異世界なんでもありだなと思ったがタマは一応ダンジョンマスターだ、何か変な力とか使ってるんじゃないかと疑っている。

「お~い、タマ~!」

 タマは俺の方に気づくとトテトテとやってくる。今は畑仕事中なので幼女の姿だ。ただ幼女の姿には似つかわしくないツナギに麦わら帽子、そして首にはタオルを巻くという完全なる農家ファッションなのだ。俺が農業についてにわか知識を語っていたら、目を輝かせたタマのお願いで作ってやった。

 タマの幼女の姿はレアでこの農園と俺の部屋以外では小狐の姿なのだ。理由は幼女姿だとユリやリンにおもちゃにされてしまう為、なかなか変身しないのだ。

「タクミ様、どうしたんですか?」

 タマは俺が来たことが不思議だったようで、キョトンとした顔で首を傾げる。幼女の姿でのその表情は反則である。カワイイなんてタマに言うと調子にのるから言わないけどな。

「今日はダンジョンの視察をしてるんだ。農園の方はどうだ?」

「スケルトンとゴブリン達が頑張ってくれてるので、順調です!」

 ダンジョン拡張の際にタマに頼まれてゴブリンとスケルトンの数を50匹ずつ増やした。するといつの間にかタマちゃん農園が拡大していた。俺がいない間にタマはやりたい放題である。
 これから人も増えるからいいんだけどな。人が増えれば増えるだけ食料調達が必要になる。皆のお腹を膨らませるためにこれからもタマには頑張って欲しい。

「今は何を作っているんだ?」

「今は小麦とジャゲーモ、タモネギ、キャベッツ、キャロッテです!みんなスクスク育っているんですよ!」

 タマは目をキラキラさせながら語ってくる。楽しいことをやっている人特有の熱量である。熱中できることがあることはいいことだ。

「タマ、困ったことや、やって欲しいことはないか?」

「困ったことですか?そうですね、、、畑を増やしたいのでダンジョンを持っと広げてください。そしてスケルトンとゴブリンを増やしてください。それともっと新しい野菜を育ててみたいです。それに野菜作りに詳しい人の力をお借りしたいんですが。」

 タマは強欲だな、1番注文が多かった。まあ、これから自給自足は大事になるから力は入れていくけどな。
 こんなタマだが態度が大きくなってきただけでなく、体にも大きな変化が起こったのだ。なんと、タマの尻尾が1本から2本に増えていたことだ。
 最初は見間違いかなと思ってタマを捕まえてしっかりと観察したが間違いなく2本生えていた。理由をタマに聞くと嬉しそうに尻尾を振りながら教えてくれた。どうやらダンジョンが成長した影響でダンジョン内の魔力が増えたことでダンジョンマスターのタマも成長し、魔力が増えて尻尾が生えてきたようだ。ニヤニヤが止まらないタマをモフり倒してやった後、ポチも羨ましそうに見ていたのでポチもモフり倒してやった。

 自給自足のために酪農とかも始めたいと思っているので、タマに提案してみる。
 
「タマ、今タマには農園を頑張ってもらっているんだが、これから酪農とかも始めていこうと思っているんだがタマはどう思う?」

「酪農ですか!?始めてもいいんですか?」

 タマは目をキラキラさせて酪農に食いついてきた。夜に俺の知ってるいる農業の知識や酪農についてタマにしつこく話を聞かれて話をしているのが原因だろうな。やる気があることは良いことだ、だがタマの負担になりすぎないように考えて行動しないといけないな。

「これからこのダンジョンにも人が増えていくから、絶対に必要になる。だがタマ、これから仕事がどんどん増えていくぞ、全部1人でやろうなんて思うなよ。人や魔物に任せることも覚えていこうな。」

「任せてください、私はダンジョンマスターです!魔物を使うのは得意なはずです!」

 タマは自信満々に言ったが、出会うまでタマに部下はいなかったはずである。少し心配だな、少しタマを気にかけておこう。
 そういえば町の名前も決めないといけなかったな。タマは一応ダンジョンマスターだし、意見を聞いておくか。

「タマ、町の名前をどうするかという話があるんだが何かつけたい名前はあるか?」

「町の名前ですか?特にこだわりはありません。もし付ける名前でいい候補がないのならタクミ様がこの町をどうしていきたいかという願いを名前にしたらどうですか。」

 俺がこの町をどうしたいか、、、そうだな、このダンジョンを世界一のダンジョンにするつもりだが、それ以上にみんなの笑顔が溢れるユートピアにしたいな。それならエデンか、でもありふれた名前だな、、、だがいい名前が思いつかない。もうエデンでいいや。

 こうして久しぶりにゆっくりダンジョンを見て回れた。まだまだ改良の余地が残っているが、ダンジョンの中はだいぶ街らしくなってきたと思う。きちんと街の建設計画を立てながら建築しているので、計画に沿ってデコボコのない綺麗な石畳の道路を作っている。まだまだ道半ばだが、エデンという名前にふさわしいようにもっと皆の住みやすく、やりたいことを思いっきりやれるように町を発展させようと再び決意した。
 
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