24 / 26
少年篇
作戦決行⑤
しおりを挟む
俺についている奴隷の首輪が爆発してから、視界や嗅覚、聴覚、首から上の感覚が
ただ痛いと言う感覚だけではなく、元々の奴隷の首輪の効力である痺れ
そして、頭が割れるように感じる痛み
だが、スセルの回復魔法により痛みが少しづつ和らいでいく
資格も徐々に良くなっていく、が他の感覚はなかなか戻らない
晴れていく視界に映るのは、マリンの姿…………ではなく、黒い靄の塊
黒い靄の塊の中心には人の形の様なフォルムがあり、その人型を囲むように靄が出てきている、良く知っている人物の影
俺がまだ地下で拷問や実験させられていた頃にまで遡る
命令されたからとはいえ、自分自身の手で初めて殺した、奴隷の少年だ
な、なんで、この呪いの正体はいったい…………まさか!
あの時、すぐに少年の死体を埋葬せずに、俺の目の前に置いていたのは、この時の為?
確証はない、だけどあいつらならやりかねない
くっそ、どんなに考えても痛みや、痺れなんかで思考がまとまらねぇ!
だが、そうか…………俺だけ自由になろうなんて、虫が良すぎたのかもな
「ご、ご…………ごめ、んな…………君を、助ける、事が出来なく、て」
俺は、自分の今の状態に歯を食いしばって、頭を下げて謝る
きっと謝っても許されないのは分かっている、いるが
謝らずにはいられなかった
自分自身も人生を奪われて、この少年の気持ちは痛い程に分かるはずなのに
今までのことを無かったことにして、勝手に自由になろうとしている
許せないよな、憎いよな…………でも、それでも、俺は生きるよ
スセルにもマリンにも、近衛騎士の人たちにもここまでしてもらったんだ
ここで死んだら、全部無駄になる
だから、だから…………許さなくていい、このまま呪ってくれてていい
その代わり、君の怒りも憎しみも全部背負って生きていくから
俺がそう覚悟を決め、少年のような塊に目線を合わせる
その時、頭の中に声が聞こえてきた
――ありがとう、君は優しいね。正直僕もこんな事、したくないんだ
そう俺自身の頭の中に響いてくる
一瞬何が起きたのか理解すらできなかったが、その声は
その声は、あの時涙を流しながら両親に誤っていた少年の声だった
――君が何を思って、何を言いたいのかは分からないけど、一つこれだけは言わないといけないんだ
俺への、恨み言だろうか…………それとも、死んでくれと言うことなのだろうか
死ぬと言うことは出来ないが、君の憎しみも全部俺が背負うさ
――僕は、ビンケットの野郎を許せないんだ…………だから、僕の代わりに機会があったら一発でもいい、スカッと気持ちのいい拳で殴ってやってよ
口も回復しているとはいえ、喉も口も爆発でほとんど使い物にならないが
俺は自然と口から、何故という言葉が出ていた
聞き取れないようなカスレ声だったであろう
だけど、少年は俺が言いたいことを察したのか、少し考えて、俺に笑顔を向けた
そして、俺に近づいて頭を撫で始め、笑顔で口を開く
――今は亡き僕の弟に似ている。君もビンケットの被害者で、僕の家族もそうだ。君はあの時に命令に何とか背こうとしてくれていたよね? 僕はそれだけでも嬉しかった。だから、僕は君を恨んだりしない
この少年は、なんてできた人間なんだろうか
そうかこの少年はビンケットに家族を…………なら、これは男の約束だ
いつかビンケットに必ず、一矢報いてやろう
そしてまだ捕らわれているかもしれない、善良な人間たちを解放する
これは俺に課せられた使命だ
俺は視線を少年に向けて、あまり動かない口と、激痛が走る喉に歯を食いしばって
自分の言葉で、安心させる為に了承する
「わ、わが、わかっ…………た」
あまり締まらないが、俺の表情を見た少年は涙を流しながら一礼をする
そして、深く息を吸い込んで、天を見ていた
その表情は長く束縛されていた魂の開放に喚起しているのか、会いたいと願った家族のもとに行けることへの喜びなのか
とにかく、俺でもびっくりするほどの清々しい表情だった
暫くしてから少年は、俺のほうに向きなおり再び口を開く
――君には本当に頼りになる人たちがついているんだね、大事にするんだよ。そして、この残っている呪いは僕が持っていこう。君の未来はきっと明るくなる、そんな気がするんだ。人生面白おかしく楽しんで! じゃぁ、僕は行くよ
そう言い残して、俺の目の前から光る泡のように人型をしていた少年は、次々に分散していった
少し名残惜しいと思いつつも、少年が満足そうに逝っている姿を見た俺は、爆発によって目もダメになっていたはずなのに、滝が流れるように溢れ出す
それは留まることを知らず、少年が完全に消えるその時まで、俺の視界はぼやけていてよく見えないぐらい邪魔だった
本当にありがとう、少年…………俺を許してくれて
君を殺した俺を許してくれて…………必ず約束は守ってやるさ
いつか、ビンケットの顔面に君の家族の分まで、俺の拳を届かせてやる
この日俺の中で、自由になると言う目標以上に、ビンケットに対して勝てるようになると言う目標が出来た
そして、その決意と共に、俺の意識はそれを境に、プツンという音と共に途絶えた
ただ痛いと言う感覚だけではなく、元々の奴隷の首輪の効力である痺れ
そして、頭が割れるように感じる痛み
だが、スセルの回復魔法により痛みが少しづつ和らいでいく
資格も徐々に良くなっていく、が他の感覚はなかなか戻らない
晴れていく視界に映るのは、マリンの姿…………ではなく、黒い靄の塊
黒い靄の塊の中心には人の形の様なフォルムがあり、その人型を囲むように靄が出てきている、良く知っている人物の影
俺がまだ地下で拷問や実験させられていた頃にまで遡る
命令されたからとはいえ、自分自身の手で初めて殺した、奴隷の少年だ
な、なんで、この呪いの正体はいったい…………まさか!
あの時、すぐに少年の死体を埋葬せずに、俺の目の前に置いていたのは、この時の為?
確証はない、だけどあいつらならやりかねない
くっそ、どんなに考えても痛みや、痺れなんかで思考がまとまらねぇ!
だが、そうか…………俺だけ自由になろうなんて、虫が良すぎたのかもな
「ご、ご…………ごめ、んな…………君を、助ける、事が出来なく、て」
俺は、自分の今の状態に歯を食いしばって、頭を下げて謝る
きっと謝っても許されないのは分かっている、いるが
謝らずにはいられなかった
自分自身も人生を奪われて、この少年の気持ちは痛い程に分かるはずなのに
今までのことを無かったことにして、勝手に自由になろうとしている
許せないよな、憎いよな…………でも、それでも、俺は生きるよ
スセルにもマリンにも、近衛騎士の人たちにもここまでしてもらったんだ
ここで死んだら、全部無駄になる
だから、だから…………許さなくていい、このまま呪ってくれてていい
その代わり、君の怒りも憎しみも全部背負って生きていくから
俺がそう覚悟を決め、少年のような塊に目線を合わせる
その時、頭の中に声が聞こえてきた
――ありがとう、君は優しいね。正直僕もこんな事、したくないんだ
そう俺自身の頭の中に響いてくる
一瞬何が起きたのか理解すらできなかったが、その声は
その声は、あの時涙を流しながら両親に誤っていた少年の声だった
――君が何を思って、何を言いたいのかは分からないけど、一つこれだけは言わないといけないんだ
俺への、恨み言だろうか…………それとも、死んでくれと言うことなのだろうか
死ぬと言うことは出来ないが、君の憎しみも全部俺が背負うさ
――僕は、ビンケットの野郎を許せないんだ…………だから、僕の代わりに機会があったら一発でもいい、スカッと気持ちのいい拳で殴ってやってよ
口も回復しているとはいえ、喉も口も爆発でほとんど使い物にならないが
俺は自然と口から、何故という言葉が出ていた
聞き取れないようなカスレ声だったであろう
だけど、少年は俺が言いたいことを察したのか、少し考えて、俺に笑顔を向けた
そして、俺に近づいて頭を撫で始め、笑顔で口を開く
――今は亡き僕の弟に似ている。君もビンケットの被害者で、僕の家族もそうだ。君はあの時に命令に何とか背こうとしてくれていたよね? 僕はそれだけでも嬉しかった。だから、僕は君を恨んだりしない
この少年は、なんてできた人間なんだろうか
そうかこの少年はビンケットに家族を…………なら、これは男の約束だ
いつかビンケットに必ず、一矢報いてやろう
そしてまだ捕らわれているかもしれない、善良な人間たちを解放する
これは俺に課せられた使命だ
俺は視線を少年に向けて、あまり動かない口と、激痛が走る喉に歯を食いしばって
自分の言葉で、安心させる為に了承する
「わ、わが、わかっ…………た」
あまり締まらないが、俺の表情を見た少年は涙を流しながら一礼をする
そして、深く息を吸い込んで、天を見ていた
その表情は長く束縛されていた魂の開放に喚起しているのか、会いたいと願った家族のもとに行けることへの喜びなのか
とにかく、俺でもびっくりするほどの清々しい表情だった
暫くしてから少年は、俺のほうに向きなおり再び口を開く
――君には本当に頼りになる人たちがついているんだね、大事にするんだよ。そして、この残っている呪いは僕が持っていこう。君の未来はきっと明るくなる、そんな気がするんだ。人生面白おかしく楽しんで! じゃぁ、僕は行くよ
そう言い残して、俺の目の前から光る泡のように人型をしていた少年は、次々に分散していった
少し名残惜しいと思いつつも、少年が満足そうに逝っている姿を見た俺は、爆発によって目もダメになっていたはずなのに、滝が流れるように溢れ出す
それは留まることを知らず、少年が完全に消えるその時まで、俺の視界はぼやけていてよく見えないぐらい邪魔だった
本当にありがとう、少年…………俺を許してくれて
君を殺した俺を許してくれて…………必ず約束は守ってやるさ
いつか、ビンケットの顔面に君の家族の分まで、俺の拳を届かせてやる
この日俺の中で、自由になると言う目標以上に、ビンケットに対して勝てるようになると言う目標が出来た
そして、その決意と共に、俺の意識はそれを境に、プツンという音と共に途絶えた
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
77
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる