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少年篇

帝国脱走③

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はい、どうも
沢山泣いてすっきりしたけど、恥ずかしくてビンケットの屋敷に住む、執事
スセルに背を向けているカリルです
背中からは、スセルがまぁまぁと言いながら、俺の背中をさすっているのだが
それも落ち着くと思っている自分も恥ずかしくて、もうなんとも
なんっとも! 恥ずかしい状況であります…………
 
 「カリル、そんなに恥ずかしがる必要がありますか? あなたはまだ七歳の子供。良いではありませんか」
 「だけど、恥ずかしいもんは、恥ずかしいんだよ…………」
 
 そう俺はスセルに対して、敬語を使うのは完全に辞めていた
 そんな俺の恥ずかしそうに顔を赤らめている俺を見て、愉快に笑い声をあげるスセル
 そうですかと言いながら、笑っていた
 だが何故だろうか、俺もそれにつられて笑っていたのだ
 この人は俺を一人の人間として、見てくれているのだと…………改めて実感した
 
 暫く、普通に明日はどんなご飯が食べたいとか他愛もない話をして、俺は眠りついた
 泣きつかれたのか、ほっとしただけなのか
 ただスセルは、俺が完全に眠りにつくまで隣で座っていた
 明日もまた一日一緒に頑張ろうと、俺に声をかけて
 
 
 
 
 朝、窓から俺の顔に温かい光が漏れその光によって俺は目が覚めていた
 昨日のことを思い出し、少し恥ずかしいなと思いながらも、どこか晴れやかな気持ち
 自身が今住んでいる小屋を見渡すと、スセルはどうやら俺が本当に眠りに着くまで待っていた様だ
 俺の横で、優しそうに朝の食事をもって声をかけてくれた
 
 「おはようございます、カリル。朝の朝食を持ってきたので、早く身支度を整えなさい。朝食が覚めてしまいますよ」
 「おはよう。分かったけど…………ご飯が先じゃダメ?」
 「しょうがありませんねぇ」
 
 スセルはそういい、俺に朝の朝食、ベーコンやレタス、卵などを挟んでいるサンドイッチに、かぼちゃスープ、そして、朝のホットミルク
 こんな普通にありふれた、人の優しさに温かさに触れて
 俺も、こんな風に誰かに優しくできるだろうかと、今はただ思う
 スセルは、朝の支度もあるからといなくなった、その部屋で
 一人この部屋で、大事そうに一口づつ食べていく
 その日の朝食は俺のこの世界に生まれてきて初めて、最高の朝だと実感したのだった
 
 朝食を食べ終わり、食べたものを片付けて使用人に渡した後は
 護衛任務のための準備を始め、身なりを使用人が着る燕尾服に着替え
 ジークライア王国の聖女や近衛騎士が、ビンケットの屋敷に着くのを待つため
 執事として仕事をしているスセリと、ビンケット、ビンケットの娘のエリー
 そして、複数の女性の使用人と共に、家の門の前に集まっていた
 暫く、待っていると白い馬に牽引させ真っ白な馬車が門の前に着く
 その周りには、正直鑑定をするまでもなく精鋭なのが分かる程の風格を持った
 近衛騎士が、二十名来ていた
 ビンケットに向かって一人の近衛騎士が一礼すると、聖女が乗っているのだろうと
 すぐに分かる、馬車の扉を近衛騎士が開けると、真っ白の神官服を着た一人が出てきた
 
 その女性は、聖女だという肩書がなくても、聖女だと言わしめるほどの美しさがあった
 青い髪を綺麗に下ろしており、瞳も青いからか、まるで海を連想させるような色だ
 目鼻立ちもしっかりとしているどころか、整い過ぎている…………が、若いのかまだ十歳ぐらいにも見えるのだ
 俺の鑑定じゃぁ、年齢は見れないからなぁ
 そして、近衛騎士も凄いなぁ、全員のレベルが俺より少し高い
 だけど、スキルや経験の熟練度が違いすぎるのか隙が見当たらん
 
 ビンケットに聖女は、一礼をして話をしていた
 正直びっくりするぐらいに容姿も美しいが、その一つ一つの動作も、目を見張るほどに美しい
 まぁ、俺自身に詳しい動作なんてものは分からないんだけどね
 だって、全部見様見真似だもの
 それからは、近衛騎士と聖女がビンケットに連れられ、屋敷の中に入っていく
 それに合わせて、俺も最後尾のほうから後をつけていくように入っていくのだが
 俺が屋敷に入ることが、お嬢様がだめだと言い命令によって、門の前で待っているようにと命令をされた
 俺は、すぐに跪いて返事をするのだがお嬢様は、イライラしていたのか
 客がいると言うのに問答無用で、俺の顔面にけりを入れて罵声を浴びせ始めた
 それを、周りの使用人が何とか止めていたが、ビンケットはただニヤニヤと笑いながら
 やめなさいと止めるばかりだ
 だが、その時に一瞬だけ見えた近衛騎士や聖女の顔には、怒りを何とか抑えようとしている
 そんな表情が見え、このままここにいたら、作戦の無駄にもなるかと思った俺は
 逃げるように、その場を離れていくのであった
 
 あの近衛騎士の人たちとか、聖女はちゃんと我慢できるかなぁ
 めちゃくちゃ怒っているように見えたんだけど
 はぁ、この屋敷のお嬢様はさすがと言いたくなるほどに、自分勝手だな
 なんであんなにイライラしてたんだ?
 
 そして暫く門の前に立って、聖女や近衛騎士が来るのを持っていると
 スセルに連れられて、俺の前にまでやってきた
 俺のほうにやってきた、近衛騎士達は何かを決意したかのようにどこか遠くを見ている
 そして、聖女もまた口は笑っているが瞳の奥には、憤りを感じるほどに力に満ち溢れていた
 聖女や近衛騎士の気配に少し気圧されながら、俺は跪いて聖女たちの挨拶を聞く姿勢に入った
 
 「初めまして、カリル君。私の名前はオラクリル・マリンです。どうか、護衛のほうよろしくお願いします!」
 「はっ、護衛の任の指名ありがとうございます。この命に代えても、任務を遂行いたします。どうか私のことは、盾として扱いください」
 「…………いいえ、盾のように扱うなんてしませんよ。なので、顔を上げてくださいませんか?」
 
 俺が下を向いて言葉を聞いていると、そういう聖女のマリン
 俺が顔を上げると、そこには聖女だけではなく近衛騎士までも俺を優しげな笑顔で見ていたのだ
 俺は少し戸惑いながらも、何故かありがとうございます、と声を小さく発していたのだった
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