144 / 154
143 知ってる
しおりを挟む
『“学問を修め、有益な人間となり、進んで公共の利益の為に行動する”ーーか。これを掲げ実践すれば間違いなく国は発展するだろう』
大公国のみならず、大陸中が発展しそうだと、ロットバルト侯爵やピエール前大公は言った。
そして、まずは大公国内でこれらの技術を当たり前にする。
その際、華の安全の為にも華の名を伏せ、ローレンス商会が矢面に立つ。
身を立て名を揚げる事が出来なくなる事を許されよと。
今回の招待はその説明の為でもあったようだ。
華としては特に自分の功績とは思わないし、そうであったとしても立身出世…名を揚げる事がすべてではなく、世の中の為になるというその事実、実が大事なのだと拙い言葉で説明した。うまく伝わったのかどうかは華には分からなかったが。
ただ、最近よく見るリアクションーーひどく感心した様子ではあった。
その後も晩餐でもてなされ、華は遠慮なく箸を使わせてもらうことが出来た。
別邸に宿泊することを勧められたが、一日中知らない人達と話して疲れただろうとアルベルトがそれを断り、予定通り代官邸に戻り宴と言う名のプチ勧業博覧会のようだったご招待イベントは無事に終了した。
翌日、疲れているだろうからということで華は、アルベルトやファーナ、ルナリア、シアと共に遅めの朝食を摂って山に帰る予定だった。
もう一、二泊くらい…とは言われたが、畑や北斗が気になると言って断ったのだ。
ラインハルトは代官の仕事があるので通常通り出掛けたが、挨拶は昨夜済ませている。
グレイルも通常通り出勤して行ったが、昨夜は華の帰宅を待ち構えていた。しかし疲れている華を煩わせないようにとファーナから指示を受けていた執事によって遠ざけられてしまって、結局華と顔を合わせていない。
そのグレイルは昼前から東門にて華が出て来るのを待ち構えていた。
(数日前に見た光景だな…)
この日までが東門当番な兵士タイラーは、無駄に居座る上司にやりにくさを感じつつ(早くどっか行ってくんねえかなあ)とばかり思っていた。
数日前は街道を見張っていた挙動不審な騎士様は、今日は町から出ていく人を見張っている。
魔獣退治以降、町の住人…特に東門付近の住人には慕われているようで、昼前にグレイルが東門に詰めているのに気付いた門前の宿屋の女が声を掛けていた。
『騎士様出掛けるのかい』
『ああ…。見送りだが』
わざわざでかい馬を連れて門にいるグレイルに『頑張んな!』と激励したりしているのだ。
(面倒だからあんまり頑張られても迷惑なんだが~)
なるべく楽をしたいタイラーにとっては迷惑な話だ。
そして昼過ぎ、待ち人がやっと来たようだった。
『ハナ!もう帰るのか?なんで馬車じゃないんだ?』
挨拶以外は話し掛ける事が禁止されているグレイルではあるが、出迎えの挨拶と同じく、見送りの挨拶だから許されるんだとばかりにシアの後ろに騎乗する華に駆け寄った。
ここを逃すと次に華が町に来るまで会えないのだ。しかもいつ来るのかも分からない。グレイルは必死である。
にも拘らず、グレイルに答えたのはこの隊のリーダーを任されているロイだった。
行商時とは違い、護衛を兼ねた配達部隊にアレックスは参加していない。
『来るときに魔獣に出くわしたからな。あんなのはそうそう無いとは思うが念のために機動力優先にしたんだ』
今回町に来るときに、魔獣が率いる狼の群れに出くわした事はグレイルも死体の回収を手伝ったので知っている。と言うか、それを狙って騎馬を連れて待ち構えていたのだ。
『だよな!俺も送る!』
『はあ!?ばっかなに言って『ハナ~!』』
『アイシャさん!』
グレイルの申し出に瞬時に反応したシアだが、宿屋から華を呼び止める声に遮られた。
最初に泊まった宿の娘・アイシャに声を掛けられて驚く華に、アイシャは両手に乗るくらいの包みを渡した。
『騎士様にね、今日町を出るって聞いたからさ。差し入れだよ。皆の分もあるから道中食べなね』
差し入れだと渡された包みはずっしりしている。
『こんなにたくさん…』
『いいんだよ。昼に出した残り物で悪いんだけどね』
そう言いつつ、アイシャは少し小声で華に言った。
『あのタケフミ、すっごく喜ばれてるんだよ。ほんとは内緒だって言われたんだけどね、ハナが宿に置いてくれって商会の旦那様に言ってくれたらしいじゃないか。お礼だよ』
『え~』
『あははっ。ハナ、良かったじゃない。足疲れた~って言ってたもんね?宿のお客さん、喜んでるんだってさ』
貰っときな、とシアにも言われて有り難く包みを肩掛けかばんに仕舞う。宿の食事はとっても美味しかったので華としてはうれしい差し入れだ。
『お客だけじゃないよ。あたしだって愛用してるんだから。タケフミ!』
華達がアイシャと話している間に『駄目だ』『送って行く』『駄目だ』『行く』と、延々と繰り返していたロイとグレイルだったが、結局エドワードの執り成しで、山牙王が出た辺りまでの同行となった。
決してグレイルには華の住まいを知られないようにと気を配って配達をしているロイ達だが、実のところグレイルは華がどの辺りに住んでいるのか何となくだが把握していた。
帝都から帰郷する際に見た山中の煙。
恋しいひとの住まう場所はあの煙の下にあるのだろうと。
大公国のみならず、大陸中が発展しそうだと、ロットバルト侯爵やピエール前大公は言った。
そして、まずは大公国内でこれらの技術を当たり前にする。
その際、華の安全の為にも華の名を伏せ、ローレンス商会が矢面に立つ。
身を立て名を揚げる事が出来なくなる事を許されよと。
今回の招待はその説明の為でもあったようだ。
華としては特に自分の功績とは思わないし、そうであったとしても立身出世…名を揚げる事がすべてではなく、世の中の為になるというその事実、実が大事なのだと拙い言葉で説明した。うまく伝わったのかどうかは華には分からなかったが。
ただ、最近よく見るリアクションーーひどく感心した様子ではあった。
その後も晩餐でもてなされ、華は遠慮なく箸を使わせてもらうことが出来た。
別邸に宿泊することを勧められたが、一日中知らない人達と話して疲れただろうとアルベルトがそれを断り、予定通り代官邸に戻り宴と言う名のプチ勧業博覧会のようだったご招待イベントは無事に終了した。
翌日、疲れているだろうからということで華は、アルベルトやファーナ、ルナリア、シアと共に遅めの朝食を摂って山に帰る予定だった。
もう一、二泊くらい…とは言われたが、畑や北斗が気になると言って断ったのだ。
ラインハルトは代官の仕事があるので通常通り出掛けたが、挨拶は昨夜済ませている。
グレイルも通常通り出勤して行ったが、昨夜は華の帰宅を待ち構えていた。しかし疲れている華を煩わせないようにとファーナから指示を受けていた執事によって遠ざけられてしまって、結局華と顔を合わせていない。
そのグレイルは昼前から東門にて華が出て来るのを待ち構えていた。
(数日前に見た光景だな…)
この日までが東門当番な兵士タイラーは、無駄に居座る上司にやりにくさを感じつつ(早くどっか行ってくんねえかなあ)とばかり思っていた。
数日前は街道を見張っていた挙動不審な騎士様は、今日は町から出ていく人を見張っている。
魔獣退治以降、町の住人…特に東門付近の住人には慕われているようで、昼前にグレイルが東門に詰めているのに気付いた門前の宿屋の女が声を掛けていた。
『騎士様出掛けるのかい』
『ああ…。見送りだが』
わざわざでかい馬を連れて門にいるグレイルに『頑張んな!』と激励したりしているのだ。
(面倒だからあんまり頑張られても迷惑なんだが~)
なるべく楽をしたいタイラーにとっては迷惑な話だ。
そして昼過ぎ、待ち人がやっと来たようだった。
『ハナ!もう帰るのか?なんで馬車じゃないんだ?』
挨拶以外は話し掛ける事が禁止されているグレイルではあるが、出迎えの挨拶と同じく、見送りの挨拶だから許されるんだとばかりにシアの後ろに騎乗する華に駆け寄った。
ここを逃すと次に華が町に来るまで会えないのだ。しかもいつ来るのかも分からない。グレイルは必死である。
にも拘らず、グレイルに答えたのはこの隊のリーダーを任されているロイだった。
行商時とは違い、護衛を兼ねた配達部隊にアレックスは参加していない。
『来るときに魔獣に出くわしたからな。あんなのはそうそう無いとは思うが念のために機動力優先にしたんだ』
今回町に来るときに、魔獣が率いる狼の群れに出くわした事はグレイルも死体の回収を手伝ったので知っている。と言うか、それを狙って騎馬を連れて待ち構えていたのだ。
『だよな!俺も送る!』
『はあ!?ばっかなに言って『ハナ~!』』
『アイシャさん!』
グレイルの申し出に瞬時に反応したシアだが、宿屋から華を呼び止める声に遮られた。
最初に泊まった宿の娘・アイシャに声を掛けられて驚く華に、アイシャは両手に乗るくらいの包みを渡した。
『騎士様にね、今日町を出るって聞いたからさ。差し入れだよ。皆の分もあるから道中食べなね』
差し入れだと渡された包みはずっしりしている。
『こんなにたくさん…』
『いいんだよ。昼に出した残り物で悪いんだけどね』
そう言いつつ、アイシャは少し小声で華に言った。
『あのタケフミ、すっごく喜ばれてるんだよ。ほんとは内緒だって言われたんだけどね、ハナが宿に置いてくれって商会の旦那様に言ってくれたらしいじゃないか。お礼だよ』
『え~』
『あははっ。ハナ、良かったじゃない。足疲れた~って言ってたもんね?宿のお客さん、喜んでるんだってさ』
貰っときな、とシアにも言われて有り難く包みを肩掛けかばんに仕舞う。宿の食事はとっても美味しかったので華としてはうれしい差し入れだ。
『お客だけじゃないよ。あたしだって愛用してるんだから。タケフミ!』
華達がアイシャと話している間に『駄目だ』『送って行く』『駄目だ』『行く』と、延々と繰り返していたロイとグレイルだったが、結局エドワードの執り成しで、山牙王が出た辺りまでの同行となった。
決してグレイルには華の住まいを知られないようにと気を配って配達をしているロイ達だが、実のところグレイルは華がどの辺りに住んでいるのか何となくだが把握していた。
帝都から帰郷する際に見た山中の煙。
恋しいひとの住まう場所はあの煙の下にあるのだろうと。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる