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『この国がアーシュリーア神獣帝国から独立して100年以上が経つ。現在もなお同一皇家…限り無く近い親戚その国として在る。だが、…決して帝国と決別するわけでは無いが、そろそろ本当の意味で独立をしなければいけなくなりそうなのだよ。そこで、国威を示す、国威発揚の材料としてハナ、これらの商品や君の国の知識や技術を使う事を赦して欲しい』
シアにところどころ教えてもらいながら聞いた侯爵の話は大体このような内容だった。
(勝手に使っちゃ駄目なのかな?)
華とて別に自分で考えた物ではなく、無いと不便、有ると便利だと思う物の製作を依頼したに過ぎないのだ。どう使おうが華の知るところではないので許可を求められても困る。許可を求めるということは、許可を出したら華に何らかの責任が発生するということではないのか。
華に話しているのは侯爵だが、その横には前の大公ピエールがいる。この国の君主の代理としてこの場にいるのだと思っていいのだろう。大公本人でないのはこの場が非公式な場だからか。
それと、おそらく次期侯爵だと思われる双子の子息。
直近の未来の話ではなく、次代に引き継いで敷く政策としてロットバルトは話しているのだろう。
(一世一代の大仕事って顔してる。自領の発展ではなく大公国の為に国力増強を考えて…つまりは翼賛?)
君主を支える一助となる。
…華の君主ではないけれど。
であるならば、華の答えは決まっている。
『いいですね!』
どの道普及や販売に関して華が関わることは無いし、これらの商品を公にすれば、ローレンス商会のあるこの侯爵領はどうやっても今後発展していくだろう。
いいじゃない。
華と藤棚さんが流れ着いたこの国が豊かになる、その為の貢献が出来るのであれば、それは本望だと思われるのだ。
とは言え、華がすることは何も無いのだが。
『本当にいいのか?たとえば君が自分で商売をすれば、きっと数年で大陸一の商人になれるだろう。王侯貴族の人脈だって作れるだろう。……そのなかには君の国の…ニホンの助けになり得る国もあるかもしれない。…すまないが、わが国ではニホンの力になることは出来そうにない』
『えっ!?』
『せめてニホンの場所さえわかれば戦争中であろうと国交を持つことが出来るのだが…』
『……』
力になれなくてすまない。
そう言うロットバルトの横でピエールも同じように意気消沈している。
(だって無理だよね?)
ここは大陸の中ほどだというが、東に船を出したところで日本に辿り着く筈もない。
だってここは異界なのだから。
(逆かな。こちらからしたら日本の方が異界にある国なんだものね)
言っている事はわかる。
むしろ当然の事だった。
日本のモノや知識を使って国力を上げる。
国の政策として。
その代わりに知識や技術の提供者に便宜を図る。当たり前の事だった。
折しも日本は戦争中だという。
国としての話であるならば、助力を願うのは当然なのだろう。
もしあちらに行けたとしても、日本だけの技術ではないのだが。
それでもこの国が日本の同盟国になってくれるというのならば、物資の提供という面で大きな力になるだろう。
…そしてこの国も戦渦に呑み込まれるのか。
華はかぶりを振った。
『日本にいく。できません』
考えても仕方がない。仕方がないから考えない。
ずっとそうやってきた。
でも今はそれだけじゃない。
今まではそこで思考を停止して目の前のするべき事を必死でしていた。
でも今は、別の考えるべき事があるのだ。
この大公国の国力を上げる。
今までこの世界に無かったモノを使って。
(それって何維新?富国強兵?いいね!)
『このくにの力がふえる…大きくなる?とてもいいこと。うれしいです』
これからこの国が発展していくというのだ。
希望に満ちた、楽しい未来が待っているに違いない。
シアにところどころ教えてもらいながら聞いた侯爵の話は大体このような内容だった。
(勝手に使っちゃ駄目なのかな?)
華とて別に自分で考えた物ではなく、無いと不便、有ると便利だと思う物の製作を依頼したに過ぎないのだ。どう使おうが華の知るところではないので許可を求められても困る。許可を求めるということは、許可を出したら華に何らかの責任が発生するということではないのか。
華に話しているのは侯爵だが、その横には前の大公ピエールがいる。この国の君主の代理としてこの場にいるのだと思っていいのだろう。大公本人でないのはこの場が非公式な場だからか。
それと、おそらく次期侯爵だと思われる双子の子息。
直近の未来の話ではなく、次代に引き継いで敷く政策としてロットバルトは話しているのだろう。
(一世一代の大仕事って顔してる。自領の発展ではなく大公国の為に国力増強を考えて…つまりは翼賛?)
君主を支える一助となる。
…華の君主ではないけれど。
であるならば、華の答えは決まっている。
『いいですね!』
どの道普及や販売に関して華が関わることは無いし、これらの商品を公にすれば、ローレンス商会のあるこの侯爵領はどうやっても今後発展していくだろう。
いいじゃない。
華と藤棚さんが流れ着いたこの国が豊かになる、その為の貢献が出来るのであれば、それは本望だと思われるのだ。
とは言え、華がすることは何も無いのだが。
『本当にいいのか?たとえば君が自分で商売をすれば、きっと数年で大陸一の商人になれるだろう。王侯貴族の人脈だって作れるだろう。……そのなかには君の国の…ニホンの助けになり得る国もあるかもしれない。…すまないが、わが国ではニホンの力になることは出来そうにない』
『えっ!?』
『せめてニホンの場所さえわかれば戦争中であろうと国交を持つことが出来るのだが…』
『……』
力になれなくてすまない。
そう言うロットバルトの横でピエールも同じように意気消沈している。
(だって無理だよね?)
ここは大陸の中ほどだというが、東に船を出したところで日本に辿り着く筈もない。
だってここは異界なのだから。
(逆かな。こちらからしたら日本の方が異界にある国なんだものね)
言っている事はわかる。
むしろ当然の事だった。
日本のモノや知識を使って国力を上げる。
国の政策として。
その代わりに知識や技術の提供者に便宜を図る。当たり前の事だった。
折しも日本は戦争中だという。
国としての話であるならば、助力を願うのは当然なのだろう。
もしあちらに行けたとしても、日本だけの技術ではないのだが。
それでもこの国が日本の同盟国になってくれるというのならば、物資の提供という面で大きな力になるだろう。
…そしてこの国も戦渦に呑み込まれるのか。
華はかぶりを振った。
『日本にいく。できません』
考えても仕方がない。仕方がないから考えない。
ずっとそうやってきた。
でも今はそれだけじゃない。
今まではそこで思考を停止して目の前のするべき事を必死でしていた。
でも今は、別の考えるべき事があるのだ。
この大公国の国力を上げる。
今までこの世界に無かったモノを使って。
(それって何維新?富国強兵?いいね!)
『このくにの力がふえる…大きくなる?とてもいいこと。うれしいです』
これからこの国が発展していくというのだ。
希望に満ちた、楽しい未来が待っているに違いない。
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