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131 教育方針
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華の国、日本では6才から学校へ行き、ほとんどの国民が8年間は学校に通うのだと言う。14才までは保護者は子供を就学させなければいけないと国に定められてさえいるのだと。
『わたしは中学校を卒業…おわって、高校にはいりました』
(戦争で学年とかいろいろ変わったし授業はほとんどしてないけど…)
『それは普通の事なのか?例えば…あ~、ハナの様な女の子がそのコウコウ?上の学校に行くというのは…』
『はい。女の子だけのがっこうもたくさんあります』
実際、事務員でなくても…女工さんでも学歴無しはいないかいても数人。職業婦人の一番多い学歴が高卒だったと華は記憶している。
為政者である侯爵からこういう質問が来るという事は、この国では女子が高学歴なのは一般的ではないか、ほぼあり得ない事なのだろう。
侯爵だけではなく、その隣の前大公も唸っている。
『それほどの年数、いったい何を…どれ程の事を学ぶのか…』
ピエールの言葉に華以外の全員が頷いている。
大公国の町の子は、大体学校へは1・2年通ったら家の手伝い等に専念する。つまり、子供と言えど労働力に数えられているのだ。
『ファーナさん。がっこうでべんきょうすること、もじ、けいさん、いっぱんじょうしきだけ?』
読み書き算盤だけだったらそんなに何年もいらないかもしれないと、華は隣のファーナに聞いてみる。
華はファーナとシアに挟まれて座っているが、話題への質問は付き添い役のシアではなくてファーナにした方が良いと思ったのだ。こういうお席では満遍なく話を振るものだと思っている。
それでも前の大公ピエールに話し掛けるのは華にはちょっぴり畏れ多くて難しい。華にとっての国家君主とは、天皇陛下だ。
天皇陛下を目の前にしたのならば、華は平伏叩頭していただろう。
唯一無二の天皇陛下と他国の国王とは全く違うが、つい先頃までこの国の頂点だったと思うとやはり緊張するのだ。
『日本ではそれ以外も習うのね?』
『はい。歴史や地理、科学、体育や技芸をならいます。それと、道徳』
『なんかいろいろ出てきたな…。説明をしてもらえるかな』
聞いたことの無い単語が沢山出てくるので、ロットバルトが詳しく教えてくれと華に言う。
『歴史は日本やほかのくにの…え~と、まえのこと?…ピエールさま、ピエールさまのおとうさま…』
『歴史ね!』
(まるで貴族の教育だな…)
自国のみならず他国の歴史まで習うというのは、完全に高位貴族の教育だと皆が思った。
『れきし。あと、国のかたち?どこに町があるとか、ほかの国のばしょとか…。科学、化学は…。電気え~と、ピシャーン!ゴロゴロ…。…あー、え~と、みずをあたためると蒸気になる、ひやすと氷…え~と、かたくなる。とか……。あ!ゴムにいおうをまぜるとか!』
『何となく…だけど言っていることは分かるわ。…それから?』
(雷…という事は天気?気象?ゴムの事とか…まるで学者の様だ)
(そう言えば、日識りや暦を作る博士の様な知識があると報告があったな…)
『体育はからだをうごかす、します。整列…ならぶ。きれいに。あるく。からだを鍛える…え、と、ちからをつける?あと武術…けんとか薙刀…やりとか』
『まるで兵士の訓練ではないか!』
思わずといったようにピエールの声が出たが、皆が同じ様に思っていた。
華は徴兵があるからとか、難波歩きの矯正だとかを説明したかったが、上手く話せるとは思えなかったので割愛した。
『それと書道、きれいにもじを書きます。音楽…うたう。えをかく、ものをつくる。裁縫…ふくをつくる、します』
あちこちからため息が洩れた。
『なるほど…。数年では履修出来んな…』
これを国の定めですべての子供に教育したなら。
『それと、道徳をならいます』
『まだあるの!?ドウトクって?』
『道徳はひとのみちです。いちばんだいじなこと』
皆がはっとした。
一般常識程度は学校で教えるが、それは各家毎に親が教えていくものだ。
しかし華は、貴族や学者、兵士や様々な芸術家…これらすべての教育を受けて、道徳が一番大事だと言い切った。
なんだその国は。
『前の前の天皇陛下がいいました。こどもの教育…べんきょうについて』
天皇陛下が華の国の王であることは分かっている。
つまり、王が国の教育方針を決めたという事か。
華はその“勅語”と言う王の言葉を諳じてみせ、一つずつ数えるように解説していった。
親孝行をすること。
兄弟姉妹仲良くすること。
夫婦はお互いに分を守って睦まじくすること。
友逹を信頼して決して裏切らない。
誰に対しても礼儀を守り、我儘を慎む。
博愛の心を持つ。
学問を修め、有益な人間となり、進んで公共の利益の為に行動する。
そして、有事の際には一身を捧げて国の為に尽くすべし、と。
『わたしは中学校を卒業…おわって、高校にはいりました』
(戦争で学年とかいろいろ変わったし授業はほとんどしてないけど…)
『それは普通の事なのか?例えば…あ~、ハナの様な女の子がそのコウコウ?上の学校に行くというのは…』
『はい。女の子だけのがっこうもたくさんあります』
実際、事務員でなくても…女工さんでも学歴無しはいないかいても数人。職業婦人の一番多い学歴が高卒だったと華は記憶している。
為政者である侯爵からこういう質問が来るという事は、この国では女子が高学歴なのは一般的ではないか、ほぼあり得ない事なのだろう。
侯爵だけではなく、その隣の前大公も唸っている。
『それほどの年数、いったい何を…どれ程の事を学ぶのか…』
ピエールの言葉に華以外の全員が頷いている。
大公国の町の子は、大体学校へは1・2年通ったら家の手伝い等に専念する。つまり、子供と言えど労働力に数えられているのだ。
『ファーナさん。がっこうでべんきょうすること、もじ、けいさん、いっぱんじょうしきだけ?』
読み書き算盤だけだったらそんなに何年もいらないかもしれないと、華は隣のファーナに聞いてみる。
華はファーナとシアに挟まれて座っているが、話題への質問は付き添い役のシアではなくてファーナにした方が良いと思ったのだ。こういうお席では満遍なく話を振るものだと思っている。
それでも前の大公ピエールに話し掛けるのは華にはちょっぴり畏れ多くて難しい。華にとっての国家君主とは、天皇陛下だ。
天皇陛下を目の前にしたのならば、華は平伏叩頭していただろう。
唯一無二の天皇陛下と他国の国王とは全く違うが、つい先頃までこの国の頂点だったと思うとやはり緊張するのだ。
『日本ではそれ以外も習うのね?』
『はい。歴史や地理、科学、体育や技芸をならいます。それと、道徳』
『なんかいろいろ出てきたな…。説明をしてもらえるかな』
聞いたことの無い単語が沢山出てくるので、ロットバルトが詳しく教えてくれと華に言う。
『歴史は日本やほかのくにの…え~と、まえのこと?…ピエールさま、ピエールさまのおとうさま…』
『歴史ね!』
(まるで貴族の教育だな…)
自国のみならず他国の歴史まで習うというのは、完全に高位貴族の教育だと皆が思った。
『れきし。あと、国のかたち?どこに町があるとか、ほかの国のばしょとか…。科学、化学は…。電気え~と、ピシャーン!ゴロゴロ…。…あー、え~と、みずをあたためると蒸気になる、ひやすと氷…え~と、かたくなる。とか……。あ!ゴムにいおうをまぜるとか!』
『何となく…だけど言っていることは分かるわ。…それから?』
(雷…という事は天気?気象?ゴムの事とか…まるで学者の様だ)
(そう言えば、日識りや暦を作る博士の様な知識があると報告があったな…)
『体育はからだをうごかす、します。整列…ならぶ。きれいに。あるく。からだを鍛える…え、と、ちからをつける?あと武術…けんとか薙刀…やりとか』
『まるで兵士の訓練ではないか!』
思わずといったようにピエールの声が出たが、皆が同じ様に思っていた。
華は徴兵があるからとか、難波歩きの矯正だとかを説明したかったが、上手く話せるとは思えなかったので割愛した。
『それと書道、きれいにもじを書きます。音楽…うたう。えをかく、ものをつくる。裁縫…ふくをつくる、します』
あちこちからため息が洩れた。
『なるほど…。数年では履修出来んな…』
これを国の定めですべての子供に教育したなら。
『それと、道徳をならいます』
『まだあるの!?ドウトクって?』
『道徳はひとのみちです。いちばんだいじなこと』
皆がはっとした。
一般常識程度は学校で教えるが、それは各家毎に親が教えていくものだ。
しかし華は、貴族や学者、兵士や様々な芸術家…これらすべての教育を受けて、道徳が一番大事だと言い切った。
なんだその国は。
『前の前の天皇陛下がいいました。こどもの教育…べんきょうについて』
天皇陛下が華の国の王であることは分かっている。
つまり、王が国の教育方針を決めたという事か。
華はその“勅語”と言う王の言葉を諳じてみせ、一つずつ数えるように解説していった。
親孝行をすること。
兄弟姉妹仲良くすること。
夫婦はお互いに分を守って睦まじくすること。
友逹を信頼して決して裏切らない。
誰に対しても礼儀を守り、我儘を慎む。
博愛の心を持つ。
学問を修め、有益な人間となり、進んで公共の利益の為に行動する。
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