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82 商品開発
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案内された商会の奥の部屋には、ファーナとアルベルトの他に、初めて見る壮年の男がいた。
『こんにちは』
『こんにちは。待っていたわ!』
『こんにちは、ハナ。きっとお店に来ると思ってね。ハナ、こちらは商会長のホーソンだよ』
『はじめまして、ハナさん。ホーソンといいます』
『はじめまして。千田 華です』
この部屋に入る前に華が、三角形の頂点を示したらその場の全員に頷かれたので“商会長”とはローレンス商会のトップの事で間違いないようだった。
偉い人への挨拶なので、きちんとお辞儀をする。
『これは、ご丁寧に。どうぞ、お掛けください』
『ありがとう』
ホーソン商会長にソファーを示されて座りながら、口の中で『どうぞ、おかけください』と小さく復唱する。
それに気付いたホーソン商会長が華にノートを出してくれと促した。
『華さんはこちらの言葉を勉強しているとか。どうぞ構いませんから好きに書き留めて下さい』
これから初めましての人と話しをするのにいちいちメモを取るのはもしかしたら失礼になるかも、などと今更ながら思った華だったが、ホーソンに『こちらも都度書き留めてくれた方が助かるので』というようなことを言われて遠慮なく、とノートを取り出した。
『なるほど、これが』
華が取り出したノートを初めて見たホーソンが前のめりになるが、それをアルベルトが止めた。
まずは華の欲しい物が優先だと。
『ハナ、何か欲しいものがあるんだって?』
『そうです、アルベルトさんっ!』
華がノートから勢いよく顔を上げた。
『欲しい、もの!竹踏み!やど、へや、竹踏み、ほしいです!』
『タ、タケフミ!?』
華が何やら変わった箱車を欲しがっていると聞いていたアルベルトだったが、華の口から出てきたのはまさかの竹踏み。
『そっか。ハナはいっぱい歩いてこの町に来たんだもんね。宿の部屋に竹踏みがあったら嬉しいよねえ』
ファーナに促されて華の隣に座ったシアの言葉に、大きくうんうん頷いている華を見て、その場の全員が納得した。
確かに一日中立ち仕事の人間だけではなく、歩いて旅をする人が落ち着く宿屋の部屋に置けば、竹踏みは有り難がられるだろうし、旅人によって一気に他所の地域にも広まる事だろう。
『それは良いね。是非とも宿屋に置いてもらおう』
『でもハナ。今日は家にお泊まりしてくれるのよね?』
『はい!買いもの、たくさんした。はいたつ、ファーナさんの家。大丈夫?』
『もちろんよ!箱車も欲しいのよね。それも届けて貰いましょうね』
しかし、華はふるふると首を横に振った。
『欲しいはこぐるま、ないです。つくれる?』
『もちろんですよ。どんなのが欲しいのか、是非教えて下さい』
ホーソンに促され、華はノートを1ページ破り猫車の絵を描いていく。
車輪は1つか2つで迷ったが、山の上での取り回しを考えて1つのものを。
車輪と持ち手の間には鉄パイプを折った足、肝心の荷台部分はもちろん箱ではなく進行方向側を斜めに。
(鉱山とかならこういうの、あるんじゃないかなあ)
覚えているネコの形を描いて、最後に車輪部分をとんとんして消ゴムを見せる。
ゴム素材はあるようなので、これで解ると思った華だった。
『こんにちは』
『こんにちは。待っていたわ!』
『こんにちは、ハナ。きっとお店に来ると思ってね。ハナ、こちらは商会長のホーソンだよ』
『はじめまして、ハナさん。ホーソンといいます』
『はじめまして。千田 華です』
この部屋に入る前に華が、三角形の頂点を示したらその場の全員に頷かれたので“商会長”とはローレンス商会のトップの事で間違いないようだった。
偉い人への挨拶なので、きちんとお辞儀をする。
『これは、ご丁寧に。どうぞ、お掛けください』
『ありがとう』
ホーソン商会長にソファーを示されて座りながら、口の中で『どうぞ、おかけください』と小さく復唱する。
それに気付いたホーソン商会長が華にノートを出してくれと促した。
『華さんはこちらの言葉を勉強しているとか。どうぞ構いませんから好きに書き留めて下さい』
これから初めましての人と話しをするのにいちいちメモを取るのはもしかしたら失礼になるかも、などと今更ながら思った華だったが、ホーソンに『こちらも都度書き留めてくれた方が助かるので』というようなことを言われて遠慮なく、とノートを取り出した。
『なるほど、これが』
華が取り出したノートを初めて見たホーソンが前のめりになるが、それをアルベルトが止めた。
まずは華の欲しい物が優先だと。
『ハナ、何か欲しいものがあるんだって?』
『そうです、アルベルトさんっ!』
華がノートから勢いよく顔を上げた。
『欲しい、もの!竹踏み!やど、へや、竹踏み、ほしいです!』
『タ、タケフミ!?』
華が何やら変わった箱車を欲しがっていると聞いていたアルベルトだったが、華の口から出てきたのはまさかの竹踏み。
『そっか。ハナはいっぱい歩いてこの町に来たんだもんね。宿の部屋に竹踏みがあったら嬉しいよねえ』
ファーナに促されて華の隣に座ったシアの言葉に、大きくうんうん頷いている華を見て、その場の全員が納得した。
確かに一日中立ち仕事の人間だけではなく、歩いて旅をする人が落ち着く宿屋の部屋に置けば、竹踏みは有り難がられるだろうし、旅人によって一気に他所の地域にも広まる事だろう。
『それは良いね。是非とも宿屋に置いてもらおう』
『でもハナ。今日は家にお泊まりしてくれるのよね?』
『はい!買いもの、たくさんした。はいたつ、ファーナさんの家。大丈夫?』
『もちろんよ!箱車も欲しいのよね。それも届けて貰いましょうね』
しかし、華はふるふると首を横に振った。
『欲しいはこぐるま、ないです。つくれる?』
『もちろんですよ。どんなのが欲しいのか、是非教えて下さい』
ホーソンに促され、華はノートを1ページ破り猫車の絵を描いていく。
車輪は1つか2つで迷ったが、山の上での取り回しを考えて1つのものを。
車輪と持ち手の間には鉄パイプを折った足、肝心の荷台部分はもちろん箱ではなく進行方向側を斜めに。
(鉱山とかならこういうの、あるんじゃないかなあ)
覚えているネコの形を描いて、最後に車輪部分をとんとんして消ゴムを見せる。
ゴム素材はあるようなので、これで解ると思った華だった。
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