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75 かっこよかったので

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『これください』

 華が選んだ弓を見たリーシャは首を傾げた。
 付き添いのシアも同じような顔とポーズをしている。

『お嬢さん、本当にそれでいいのかい?』

 二人に代わってラジネが華に尋ねた。
 槍の時のように、本当に欲しい弓は別にあるのではないかと思ったからだ。

 華がシアと店にやって来て真っ先に弓コーナーで手に取ったのは、店の弓の中で一番大きな弓だった。
 勿論重いし弦も華には引けないような大きな弓で、そもそも華の小さな手では握部分が太過ぎて矢を番のにも一苦労だろう。
 自分には合わないとすぐに分かったのだろう、次々と別の弓を試して行き、結局一番小さな弓を選んだ華だが、最初の大きな弓に未練があるのが端で見ていた三人には丸わかりだった。





 雨の中、朝一番にファーナがやって来たのは、華を自宅に招待するためだった。
 もう一泊するつもりでいた華には願ってもないことだったが、さらに華が帰るときには幌馬車で送ってくれると言う。

『買い物楽しみね!』

 そこまでしてもらってもいいものかと思った華だったが、シアに荷物を気にせず買い物が楽しめるねと言われて甘えることにした。

(ついでに大きな猫の皮も引き取ってもらえれば助かるし)

『じゃあ、楽しみに待ってるわね』

 箱馬車でやって来たファーナは、華のオプション付き木槍と新しい槍と一緒に帰って行った。背負子は買い物に必要なので馬車にのせるのは遠慮した華だったが、ファーナの指示もあってシアは華が買ったものは配達してもらうつもりでいた。

 アイシャと宿の主人にお世話になりましたと言って宿の外に出て、シアと一緒にファーナの馬車が去って行くのを見送った華が馭者を気にする素振りが一切ないのを、やや冷めた目で見てしまうシアだった。

 そのまま西区の市場に向かう予定だったが、華がその前にラジネの武具店へ行きたいと言う。

『きのう、シアさん、かっこいい! わたしもゆみ、ほしいです!』

 歩きながら弓を射るフリをして、頬を染めながらそんなことを言う華に、シアは頼れる姉風の微笑みを浮かべながら内心デレっとしていた。

(コレ可愛い…!こんな妹欲しかった!)

 ファーナ達の気持ちわかるわぁ~と思うのと共に、可愛いからと後を付けるなどグレイル許すまじとこっそり拳を握るシアだった。

(怖い思いをしないようにお姉ちゃんが守ってあげるからね!)

 シアの決意を他所に、開いたばかりの武具店に入った華は迷う事なく弓コーナーへ向かい、弦を引きまくる。
 最初に手にした弓からずっと大き過ぎてまともには引けていないが、初めて弓を持ったようには思えず、やはり確立された型をとっているように見える。

『あのお嬢さんは弓も出来るのか』

『そう言えば、訓練されてる動きだってエディが言ってたね…』

 最終的に小さな弓を選んだ華に、本当はどんな弓が欲しいのか三人がかりで聞き出し、ラジネは薙刀に続き、和弓の製作に取りかかることになるのであった。
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