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58 町中散策
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華はメインストリートをそのまま歩いて行く。
この様子では、鍛治屋はともかく武具店を見つけてもまだ開いてなさそうだった。
(見つからなかったらまたアイシャさんに訊こうかな。今日は町を探検してもう一泊してもいいかもしれない)
気になるお店や別の道には入らずに、メインストリートをまっすぐ歩いて行くと、商会から30分程で町の壁と門が見えてきた。
ローレンス商会は町一番の商会らしく、メインストリートが交差する角地に建っていた。
華が歩いてきたまっすぐ東西のメインストリートと、おそらくまっすぐな南北のメインストリートでこの町の中心はきっちり十字に仕切られているようだった。
(正方形かはわからないけど、町の端から端まで一時間くらい。余所見して歩いていたから3、4キロかな…。南北の方はすっごく長いのかもしれないけど)
華の印象としては、比較的新しい町のように思われた。
まっすぐ延びる道とはっきり分けられた区画。
町を作ろうとして計画的に作った町という印象なのだ。
西の門まで来て気が済んだ華は、少し手前で通り過ぎた広場に入った。
メインストリートからも市がたっているのが見えていたのだ。
市のせいか、宿のある東側と違って賑やかだった。
たくさんの人で賑わう市を見て回った華は、広場の隅の木の下に腰を下ろした。
(…いないね、やっぱり)
何となく分かっていた。
誰もがファーナたちと同じ言葉を話している。
黒髪や茶髪の人はいるけれど、皆一様に彫りの深い顔立ちをしていて緑や灰色の瞳で日本人には見えない。
生き物。人。町並み。星空。月。
どれも日本とは違うここは外国で、たぶん異界で。
華はひとりぼっちだった。
この半月で分かっていたことではあるけれど。
(それでも…)
これからも探してしまうのだろうと華は思うのだった。
華が広場で行き交う人の言葉をヒアリングしたり、おやつのオージュを食べたり、ぼーっと日向ぼっこをしながら平和を噛み締めていたりしている頃。
ローレンス商会ではこの度半年以上に渡る行商の旅への随行を終えて、本日やっと見習いが取れたカイが開店前の品出しをしていた。
見習いが取れても店ですることはあまり変わらず、給金が上がったり掃除などの雑用が少し減ったり別の雑用が増えたりするだけだった。
『『表の掃除終わりました~』』
『はいよー。つか何でお前ら俺に報告してくんの?』
『えー、だってアリバさんが』
『カイ、言葉遣いッ』
『こほん。君たち掃除の報告は私ではなくて店頭主任のマリトさんにお願いします』
行商の旅から帰ってきて数日、マナー及び言葉遣いでダメ出しをくらって今日まで見習いが取れなかったカイである。
見習いが取れてもいまだにこうして店長から注意を受けているが。
開店前の店表の掃除をしていた新人の見習い二人に掃除完了の報告先を教えると、当分カイに付いて回れと副店長のアリバに言われたのだという。
どういう事だとカイが店長を見ると、新人二人の教育係に任命されてしまった。
『カイお前、半年以上も店にいなかったんだから慣らすついでに新人に教えればいい。ついでに旅の話もいろいろしてやれ』
『よろしく~』
『よろしく~、カイ先輩~』
『………かしこまりました~。はあ…』
新人と言っても同じ町の顔馴染みである。つまり、気安い仲である。
子守りを任されたような気分でカイは溜め息を吐いた。
『そういえば、さっき変わった女の子が来たんですけど』
この様子では、鍛治屋はともかく武具店を見つけてもまだ開いてなさそうだった。
(見つからなかったらまたアイシャさんに訊こうかな。今日は町を探検してもう一泊してもいいかもしれない)
気になるお店や別の道には入らずに、メインストリートをまっすぐ歩いて行くと、商会から30分程で町の壁と門が見えてきた。
ローレンス商会は町一番の商会らしく、メインストリートが交差する角地に建っていた。
華が歩いてきたまっすぐ東西のメインストリートと、おそらくまっすぐな南北のメインストリートでこの町の中心はきっちり十字に仕切られているようだった。
(正方形かはわからないけど、町の端から端まで一時間くらい。余所見して歩いていたから3、4キロかな…。南北の方はすっごく長いのかもしれないけど)
華の印象としては、比較的新しい町のように思われた。
まっすぐ延びる道とはっきり分けられた区画。
町を作ろうとして計画的に作った町という印象なのだ。
西の門まで来て気が済んだ華は、少し手前で通り過ぎた広場に入った。
メインストリートからも市がたっているのが見えていたのだ。
市のせいか、宿のある東側と違って賑やかだった。
たくさんの人で賑わう市を見て回った華は、広場の隅の木の下に腰を下ろした。
(…いないね、やっぱり)
何となく分かっていた。
誰もがファーナたちと同じ言葉を話している。
黒髪や茶髪の人はいるけれど、皆一様に彫りの深い顔立ちをしていて緑や灰色の瞳で日本人には見えない。
生き物。人。町並み。星空。月。
どれも日本とは違うここは外国で、たぶん異界で。
華はひとりぼっちだった。
この半月で分かっていたことではあるけれど。
(それでも…)
これからも探してしまうのだろうと華は思うのだった。
華が広場で行き交う人の言葉をヒアリングしたり、おやつのオージュを食べたり、ぼーっと日向ぼっこをしながら平和を噛み締めていたりしている頃。
ローレンス商会ではこの度半年以上に渡る行商の旅への随行を終えて、本日やっと見習いが取れたカイが開店前の品出しをしていた。
見習いが取れても店ですることはあまり変わらず、給金が上がったり掃除などの雑用が少し減ったり別の雑用が増えたりするだけだった。
『『表の掃除終わりました~』』
『はいよー。つか何でお前ら俺に報告してくんの?』
『えー、だってアリバさんが』
『カイ、言葉遣いッ』
『こほん。君たち掃除の報告は私ではなくて店頭主任のマリトさんにお願いします』
行商の旅から帰ってきて数日、マナー及び言葉遣いでダメ出しをくらって今日まで見習いが取れなかったカイである。
見習いが取れてもいまだにこうして店長から注意を受けているが。
開店前の店表の掃除をしていた新人の見習い二人に掃除完了の報告先を教えると、当分カイに付いて回れと副店長のアリバに言われたのだという。
どういう事だとカイが店長を見ると、新人二人の教育係に任命されてしまった。
『カイお前、半年以上も店にいなかったんだから慣らすついでに新人に教えればいい。ついでに旅の話もいろいろしてやれ』
『よろしく~』
『よろしく~、カイ先輩~』
『………かしこまりました~。はあ…』
新人と言っても同じ町の顔馴染みである。つまり、気安い仲である。
子守りを任されたような気分でカイは溜め息を吐いた。
『そういえば、さっき変わった女の子が来たんですけど』
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