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22 遭遇その2

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    この段差の上から周りの山を見たことで、山の中腹よりも少し上の方にいるのではないかと当たりをつける。

 頂上はさっぱり見えないし、華のいるこの山が周囲の山よりも大きい可能性もあるが、どのみち麓までは結構あるのがわかる。

 その麓側の見えている範囲には緑が固まっているところもちらほらあるようだ。
 中でも茅の原を下った南西に見える常緑樹のエリアが。

(松に見える。松って確か食べられるんだよね?)

 燃料にもなる食べられる木を発見して、探索をしたら地図を作るべきかと思い立つ。

 今まではせいぜい川原の辺りまでの往復だったので思い付かなかったが、これからの探索でまだまだ有用な植物が見つかるだろう。
 地形はもちろん、植生も記録しておく必要がある。



 突然、華の頭上で激しい羽音に混じってバキバキと枝の折れる音がした。

「ギャーッ!ギャーッ!」

 鳥の争っているような声も聞こえてくる。

 静かだった山の中に突然大きな音が、しかも真上からして物凄く驚いた華だったが、見上げて見ても何が起こっているのか分からない。
 大きな杉の木の上の方で、小鳥ではないそれなりに大きな鳥が争っているようなのだが、枝葉で姿は見えない。ただ、小枝がバラバラと落ちてきている。


「な、なに…」


 何が起こっているのか。

 木の上を見上げながら木槍を握りしめ、杉の木からそろりと離れた時、上から重量のあるものが華の目の前に落ちてきた。

「きゃああああっ‼」

 とっさに距離を取って木槍を構えるその先にいたのは、のたうち回る大蛇だった。

 高所から落下したダメージだろう。体を複雑に巻きながら激しくのたうち回る大蛇は華の脚くらいの太さがあり、全長となると見当もつかない。


「はあ、はあ、はあ、はあ…」


 激しい呼吸で構えた木槍が揺れている。
 躊躇していたのは僅かな間だけだった。


 グッと腹に力を入れて呼吸を止め、その頭に一気に木槍を突き刺す。

 長い槍では一撃では貫通せず、すぐに距離を取った華は、一撃目で大きく開いたその口の中に槍を突き、口の中から頭を砕いた。


「はあっ、はあっ」


 槍を大蛇の上顎ごと地面に突き刺しながらカバンをあける。
 頭を潰しても激しくのたうっている大蛇から目をそらさずに、手探りで“華兎”を取り出した。

 槍から“華兎”に持ち変えた瞬間。
 鞘から刀身を抜き様に大蛇の首を落としたのだった。

 頭と胴を切り離されても大蛇の体は暫くの間うねっていた。
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