22 / 154
21 周辺の探索その3
しおりを挟む
二股の木に絡まった蔦をありがたく採集する。
周りの木にも蔦の絡まる木があるが、まずは印付け。
少し先を見ると、上の方は茅の生え方がまばらになっているように見える。
今日はその辺りまでで引き返そうと決めて、周りの木から集めた蔦を二股の木の下に盛っていく。
途中キノコをいくつか見つけるが、一切見分けがつかないので完全無視の華だった。
茅を踏みながら作った道にある木に印を付けながら進み、目標と決めた場所まで到達する。
茅の原はどうやらここまでのようだった。
岩盤のような地肌でちょっとした段差になっているのに加え、この先はより木々が混んでいて、葉を落としていても薄暗くなっている。
(これから葉を付けたら日の光なんて届かないよね…)
どうやって登ろうか、と見渡すが西側はやはり茅だらけなので東側へ移動するとこちらも木々が混んでいて茅がまばらになっている。段差は普通のちょっときつい傾斜なのでなんとか登ってみる。
(登ってみるだけ。上の様子を少し確かめたらすぐ戻る。そう、威力偵察?)
普通に拠点の周辺の安全の確保をそんな風に言って、左手に持った木槍と右手のスコップを傾斜に突き刺しながら登っていく。
登った先の段差の上はやはり鬱蒼とした、木々が、それも大木たちが密集した空間が上の方へ続いていた。
生存競争に敗れたのか、腐り落ちた木や細い倒木などもちらほら見える。細いと言っても周りの大木たちに比べたらだが。
その倒木を見た華は、なんとかごろごろ転がして藤棚さんのところまで運べないだろうかなどと考えてしまったが、それはいずれ実行することにして。
「わぁあ……」
段差の高いところまで縁を歩いて麓側の様子が見れないかと思っていた華だったが、麓より広域の、この山の周辺の様子に圧倒されてしまっていた。
なぜなら、見渡せる範囲がどこまでもすべて山だったから。
平野も盆地も見えなければ町も、里村も街道すら見えない。
(何山脈?修験道の聖地とかそうゆうの?)
東京で生まれ育って疎開もしなかった華は、見たことのないパノラマのスケールに圧倒されていた。
肝心のこの山の麓側の様子を観察し出したのは少し経ってから。
ここからでは見えない山合に街道や里村があるのかも知れないが、木々が見えるのみ。
その中にぽつんと藤棚さんが見えるのにほっこりしつつも、やはり自分の成果である竹製の壁の出来にによによしてしまってなかなか他に視線が移せない。
それで気が付いたのが、煙だった。
華の拠点である藤棚さんからは双筋の煙があがっている。
焚き火と囲炉裏、華が(まだ3日だが)生活している痕跡、証拠。
「ないね…」
この場所から見える限り、他には煙は上がっていない。
御飯時ではないからなのか、それとも本当に見える範囲には人がいないのか。
…別の場所から、例えば山頂からなら何か他に見えるものがあるのか。
今後の探索での課題がひとつ増えたのだった。
ちなみに、木々の途切れ方から川…というより渓の道筋は少し分かったのは大きな成果だ。
周りの木にも蔦の絡まる木があるが、まずは印付け。
少し先を見ると、上の方は茅の生え方がまばらになっているように見える。
今日はその辺りまでで引き返そうと決めて、周りの木から集めた蔦を二股の木の下に盛っていく。
途中キノコをいくつか見つけるが、一切見分けがつかないので完全無視の華だった。
茅を踏みながら作った道にある木に印を付けながら進み、目標と決めた場所まで到達する。
茅の原はどうやらここまでのようだった。
岩盤のような地肌でちょっとした段差になっているのに加え、この先はより木々が混んでいて、葉を落としていても薄暗くなっている。
(これから葉を付けたら日の光なんて届かないよね…)
どうやって登ろうか、と見渡すが西側はやはり茅だらけなので東側へ移動するとこちらも木々が混んでいて茅がまばらになっている。段差は普通のちょっときつい傾斜なのでなんとか登ってみる。
(登ってみるだけ。上の様子を少し確かめたらすぐ戻る。そう、威力偵察?)
普通に拠点の周辺の安全の確保をそんな風に言って、左手に持った木槍と右手のスコップを傾斜に突き刺しながら登っていく。
登った先の段差の上はやはり鬱蒼とした、木々が、それも大木たちが密集した空間が上の方へ続いていた。
生存競争に敗れたのか、腐り落ちた木や細い倒木などもちらほら見える。細いと言っても周りの大木たちに比べたらだが。
その倒木を見た華は、なんとかごろごろ転がして藤棚さんのところまで運べないだろうかなどと考えてしまったが、それはいずれ実行することにして。
「わぁあ……」
段差の高いところまで縁を歩いて麓側の様子が見れないかと思っていた華だったが、麓より広域の、この山の周辺の様子に圧倒されてしまっていた。
なぜなら、見渡せる範囲がどこまでもすべて山だったから。
平野も盆地も見えなければ町も、里村も街道すら見えない。
(何山脈?修験道の聖地とかそうゆうの?)
東京で生まれ育って疎開もしなかった華は、見たことのないパノラマのスケールに圧倒されていた。
肝心のこの山の麓側の様子を観察し出したのは少し経ってから。
ここからでは見えない山合に街道や里村があるのかも知れないが、木々が見えるのみ。
その中にぽつんと藤棚さんが見えるのにほっこりしつつも、やはり自分の成果である竹製の壁の出来にによによしてしまってなかなか他に視線が移せない。
それで気が付いたのが、煙だった。
華の拠点である藤棚さんからは双筋の煙があがっている。
焚き火と囲炉裏、華が(まだ3日だが)生活している痕跡、証拠。
「ないね…」
この場所から見える限り、他には煙は上がっていない。
御飯時ではないからなのか、それとも本当に見える範囲には人がいないのか。
…別の場所から、例えば山頂からなら何か他に見えるものがあるのか。
今後の探索での課題がひとつ増えたのだった。
ちなみに、木々の途切れ方から川…というより渓の道筋は少し分かったのは大きな成果だ。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
【完結】逃げ出した先は異世界!二度目の人生は平凡で愛ある人生を望んでいるのに、平凡では終われない
絆結
恋愛
10歳の時に両親と妹を一度に事故で亡くし、親戚中での押し付け合いの末、叔母夫婦に引き取られた主人公。
暴力、暴言、実子との差別は当たり前。従姉妹からの執拗な嫌がらせの末暴行されそうになり逃げだした先は異世界。
─転写─
それは元の世界の自分の存在を全て消し去り、新たな別の世界の人物として魂を写すこと。
その人の持つ資産の全てを貰い受ける代わりに、別世界に創られた"器"にその魂を転写する。
前の人生の記憶は持ったまま、全く別の身体で生まれ変わる。
資産の多さに応じて、身体的特徴や年齢、性別、転写後の生活基盤を得ることができる。
転写された先は、地球上ではないどこか。
もしかしたら、私たちの知る宇宙の内でもないかもしれない。
ゲームや本の中の世界なのか、はたまた死後の夢なのか、全く分からないけれど、私たちの知るどんな世界に似ているかと言えば、西洋風のお伽話や乙女ゲームの感覚に近いらしい。
国を治める王族が居て、それを守る騎士が居る。
そんな国が幾つもある世界――。
そんな世界で私が望んだものは、冒険でもなく、成り上がり人生でもなく、シンデレラストーリーでもなく『平凡で愛ある人生』。
たった一人でいいから自分を愛してくれる人がいる、そんな人生を今度こそ!
なのに"生きていくため"に身についた力が新たな世界での"平凡"の邪魔をする――。
ずーっと人の顔色を窺って生きてきた。
家族を亡くしてからずーっと。
ずーっと、考えて、顔色を窺ってきた。
でも応えてもらえなかった─。
そしてある時ふと気が付いた。
人の顔を見れば、おおよその考えていそうなことが判る─。
特に、疾しいことを考えている時は、幾ら取り繕っていても判る。
"人を見る目"──。
この目のおかげで信頼できる人に出逢えた。
けれどこの目のせいで──。
この作品は 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる