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21 周辺の探索その3

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 二股の木に絡まった蔦をありがたく採集する。

 周りの木にも蔦の絡まる木があるが、まずは印付け。

 少し先を見ると、上の方は茅の生え方がまばらになっているように見える。
 今日はその辺りまでで引き返そうと決めて、周りの木から集めた蔦を二股の木の下に盛っていく。

 途中キノコをいくつか見つけるが、一切見分けがつかないので完全無視の華だった。

 茅を踏みながら作った道にある木に印を付けながら進み、目標と決めた場所まで到達する。
 茅の原はどうやらここまでのようだった。
 岩盤のような地肌でちょっとした段差になっているのに加え、この先はより木々が混んでいて、葉を落としていても薄暗くなっている。

(これから葉を付けたら日の光なんて届かないよね…)

 どうやって登ろうか、と見渡すが西側はやはり茅だらけなので東側へ移動するとこちらも木々が混んでいて茅がまばらになっている。段差は普通のちょっときつい傾斜なのでなんとか登ってみる。

(登ってみるだけ。上の様子を少し確かめたらすぐ戻る。そう、威力偵察?)

 普通に拠点の周辺の安全の確保をそんな風に言って、左手に持った木槍と右手のスコップを傾斜に突き刺しながら登っていく。

 登った先の段差の上はやはり鬱蒼とした、木々が、それも大木たちが密集した空間が上の方へ続いていた。
 生存競争に敗れたのか、腐り落ちた木や細い倒木などもちらほら見える。細いと言っても周りの大木たちに比べたらだが。

 その倒木を見た華は、なんとかごろごろ転がして藤棚さんのところまで運べないだろうかなどと考えてしまったが、それはいずれ実行することにして。


「わぁあ……」


 段差の高いところまで縁を歩いて麓側の様子が見れないかと思っていた華だったが、麓より広域の、この山の周辺の様子に圧倒されてしまっていた。

 なぜなら、見渡せる範囲がどこまでもすべて山だったから。

 平野も盆地も見えなければ町も、里村も街道すら見えない。

(何山脈?修験道の聖地とかそうゆうの?)

 東京で生まれ育って疎開もしなかった華は、見たことのないパノラマのスケールに圧倒されていた。

 肝心のこの山の麓側の様子を観察し出したのは少し経ってから。
 ここからでは見えない山合に街道や里村があるのかも知れないが、木々が見えるのみ。
 その中にぽつんと藤棚さんが見えるのにほっこりしつつも、やはり自分の成果である竹製の壁の出来にによによしてしまってなかなか他に視線が移せない。

 それで気が付いたのが、煙だった。

 華の拠点である藤棚さんからは双筋の煙があがっている。
 焚き火と囲炉裏、華が(まだ3日だが)生活している痕跡、証拠。

「ないね…」

 この場所から見える限り、他には煙は上がっていない。
 御飯時ではないからなのか、それとも本当に見える範囲には人がいないのか。
 …別の場所から、例えば山頂からなら何か他に見えるものがあるのか。

 今後の探索での課題がひとつ増えたのだった。

 ちなみに、木々の途切れ方から川…というより渓の道筋は少し分かったのは大きな成果だ。
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