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13 藤棚さん

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    3本の竹槍の内、残りの1本は保留にして先端を尖らせた以外は何もしなかった。

(明日以降、いい感じの枝が拾えますように)

 川のところで採れる竹を使った竹槍に見切りをつけ、ちょいちょい落ちている木の枝で木槍を作れないかと思ったのだ。
 それにはまず素敵な木に巡り会わなくてはならない。
 斧もノコギリもないので落ちている枝や倒木に期待である。

 採ってきた残りの竹は、藤棚さんの壁にするつもりだった。

 藤棚さん住居化の第一歩。

 いつ天気が崩れるかもと考えたら屋根の方が先かもしれないが、屋根を華がどうにかするためにはどうしても足場が必要になる。
 足場に出来そうな大きな石を、明るいときに川原から運んでくるつもりなので屋根は後回しにして、今は壁である。

 ちなみに天気が崩れてきたときには藤棚さんに固執せず、近くの常緑樹の下に避難する予定だ。


 藤棚さんは上から見ると長方形になっている。
 縦横比1:2ぐらいで、四隅以外に長方形の長辺の中程に1本ずつ、計6本の柱の上に格子状に組んだ竹の天井が載っている。
 床面積は三畳程で、天井までの高さは華が手を伸ばして指先が届くくらい。

 その藤棚さんは現在、山の斜面にいる。

 それほど傾斜がきつい場所ではないのだが、長方形の長辺の片側が二本の大木に支えられていて、横から見ると天井が水平になっている。つまり大木で支えられている側の柱3本が宙に浮いている状態だった。

 その浮いている端の柱のところから長方形の長辺の壁を作っていく。転がったり滑り落ちたりしないとも限らないので麓側にまず壁を作って安全を確保するつもりだった。

 いずれは藤棚さんの斜面を平らにして天井と水平にしたいものだが、まずは壁。

 葉の付いたままの竹を地面に挿して、柱から隙間のないようにびっちり並べていく。どうしても節がある分隙間ができてしまうが仕方がない。
 このままだと地面に刺さっているだけでばらばらだが、紐蔦で柱から簾のように連ねて括っていく。
 華の股下くらいのところと首元くらいの高さで二ヵ所括れば立派な壁が出来上がった。

 今日採ってきた竹を全部使っても数十㎝の幅しかないが、それでも華の体が隠れるぐらいの幅はある。

(うん。予想以上の立派な壁になった!明日もたくさん竹採ってこよう)

 想像以上に上手くいったことに満足して焚き火の前に戻ると、月がだいぶ移動しているのに気が付いた。

 随分と熱中していたようだ。

 焚き火に燃料を追加して土器の様子を見ると、カバンを枕にして落ち葉の上に体を横たえる。

「はー……」

 寝る前にいろいろ考えようと思っていたのに、横になったとたんに頭の奥がじわ~っと弛緩して何も考えられなくなってしまった。

 ただぼんやり焚き火の炎を見つめる。

(疲れてるんだな…)

 だんだん落ちていく目蓋を抗うことなく閉じていく。



「おやすみなさい…」

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