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名も無き集落
1 名も無き集落
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「おじいー。これ食べれる?」
森に生える草にできた豆のさやっぽいものを、近くで畑をいじっているおじいにつき出す。
幼児のちっちゃなおてては指も短くて、手の中のものを落としそうになるからついぎゅっと握っちゃいそうになるけど、潰れないようにちゃんとそっと摘まんでいるよ。
「ん~? おお、これな。これは家畜の餌だなぁ。まあ食べても大丈夫だ」
「かちく? かちくってトリさん?」
「鶏もだし、牛もな。ミシェルのスープにも時々は入ってるんじゃないか?」
なんと。すでに食べたことがあるかもしれないとな。どれ。
「……くさのあじ……」
「ぶふぉっ」
「そんな泥つきいきなり食べるやつがあるか! ちゃんと洗って土落としてから食え!」
「生はいかん。どら、おじいが焼いてやる」
「ミシェル腹減ってんのか? おやつ食べるか?」
同じように畑いじりしていたと思われるおじいやおばあがわらわらと寄って来てわたしに構い始める。いつもそう。子供がいないからね。構われるのは仕方がないよね。
「ミシェルちゃん、お花は咲いてなかった?」
「あったよ。……これ?」
「あらー、たくさんあるわねえ。これをね、こう、下からちゅーっと」
ちゅーっと。
「あまーい!」
ほんのり、でもしっかり甘味がある! そうか、蜜! 前世でも花の蜜吸いなんてしたことなかったけど、まんがのキャラがツツジの花を吸ってるイラストを見た記憶があったね。
おばあが作ってくれたかばんにいくつか摘んできたのを、おばあとちゅーってしてきゃっきゃしていると、おじいが豆を炙ってあーんって出してくるからこれもぱくり。
「ん~。おいしーね!」
豆を草から外してさやのすじを取ってから炙ってある。草ごと生で食べるのは家畜だったか……。
おじいが指先でちょちょいと魔法の火を出して炙った豆は、皮はパリッと中はほっくり豆のお味。ちょっと塩味が欲しくなるけど、皮のパリパリをよく見るとパイのように薄く何層かになっていて食感もおもしろい。
両親もだけど、おじいやおばあたちが普通に日常生活で魔法を使うものだから、言葉を覚えるのと同じようにわたしも自然と魔法を使えている。魔法、すっごく便利。
魔法がおとぎ話だった前世の記憶が、もし生まれた時からあったら魔法を見てプチパニックになる赤ちゃんだったと思うけど、幸いというか、はっきりと思い出したのはつい先日。
それまではちょいちょい既視感はあるものの、ミシェルという名のただの幼児だった。
「にゃあ」
かばんの中から可愛らしい御声が!
「こしひかり。おきた~♥」
かばんの中から見上げてくるかわゆいおめめ。キトンブルーっていうの? まだ大人の手のサイズしかなくてわたしでも両手乗りちょいこぼれるくらいのサイズ。住環境を考慮しておばあに作ってもらった幅広のマチ付き幼稚園かばんの中ですやすや眠るしろねこさんがかわゆいのでお花を添えてみたらあまりのメルヘンな絵面に興奮して花を摘みまくってしまった。後悔はしていない。むしろ大満足也。
「にゃああ」
「え、これ? この豆食べたいの?」
ねこに豆って食べさせていいんだっけ? たしか、食べさせて良いのと悪いのがあったような…。
って、こんなときは鑑定さん! 忘れてたわ~。ついいつもみたいにおじいに聞いたけど、前世の記憶を思い出したわたしは持ってる! そう、ラノベの知識を!
(鑑定!)
食べてもいい豆!
指で潰してほぐした豆をしろねこさんの口元にもっていくと、ちっちゃなお口で舐め舐めもむもむついでに差し出した腕にしがみつく。ちっちゃな四つ足で! 必死にしがみついてる! かっ、かわゆ~い!
「可愛いねえ。そろそろ離乳食かい」
「ミシェルよく世話してて偉いなあ」
普段から幼女単体で既にめろめろなおじいやおばあが小動物とペアになったことで更にめろめろしている。
森に囲まれたこの集落で生まれて早5年。
人口たぶん2、30人くらいの名も無い集落にはどうやらわたし以外の子供はいないみたい。子供が少ないんじゃない、本当にわたししかいないの。一番年が近いと思われる若者がわたしの両親。で、もう少し年が上っぽい、両親が「お兄、お姉」と呼ぶおじちゃん、おばちゃんが何人かいて、あとはみんな年寄りばかり。
確実に人口の半分以上がお年寄りの限界集落だと思われるのに、外部との交流もほぼ無し。別に鎖国的な事をしている訳じゃなくて、必要を感じていないんだと思う。
だってこの集落、完全に集落の中で自給自足が出来ているんだもん。
農作はもちろん、畜産、酪農もしているし、綿花やお蚕様を育てていて糸紡ぎや機織りのおばあがいて、陶芸や鍛冶をするおじいもいる。紙漉きのおじちゃんおばちゃんまでいるのには驚く。しかも森の植生も豊かで野生の動物を狩ったりもしている。限界というよりむしろ楽園。
うん。完全に集落の中で完結しているね。どこにも税らしきモノは納めていないらしいし。
というか、自給自足どころか余らせる事もあって、物見遊山ついでに他所の町だか村だかに売りに行くこともあるらしく、使いもしないのに集落には結構お金がある。結果、おじいやおばあが小遣いだと言ってちょいちょい……いや、しょっしゅうわたしにお金をくれるもんだから5才児にしてはやたらと小金持ち……。
そんな都会の人が夢に見ちゃってるようなスローライフ集落で、健康にのびのびと育てられて改めて幸せを感じている今日この頃。
でも、今まで気にしていなかったのに、前世の記憶が蘇ってから特に気になっていることがあるんだ。
森に生える草にできた豆のさやっぽいものを、近くで畑をいじっているおじいにつき出す。
幼児のちっちゃなおてては指も短くて、手の中のものを落としそうになるからついぎゅっと握っちゃいそうになるけど、潰れないようにちゃんとそっと摘まんでいるよ。
「ん~? おお、これな。これは家畜の餌だなぁ。まあ食べても大丈夫だ」
「かちく? かちくってトリさん?」
「鶏もだし、牛もな。ミシェルのスープにも時々は入ってるんじゃないか?」
なんと。すでに食べたことがあるかもしれないとな。どれ。
「……くさのあじ……」
「ぶふぉっ」
「そんな泥つきいきなり食べるやつがあるか! ちゃんと洗って土落としてから食え!」
「生はいかん。どら、おじいが焼いてやる」
「ミシェル腹減ってんのか? おやつ食べるか?」
同じように畑いじりしていたと思われるおじいやおばあがわらわらと寄って来てわたしに構い始める。いつもそう。子供がいないからね。構われるのは仕方がないよね。
「ミシェルちゃん、お花は咲いてなかった?」
「あったよ。……これ?」
「あらー、たくさんあるわねえ。これをね、こう、下からちゅーっと」
ちゅーっと。
「あまーい!」
ほんのり、でもしっかり甘味がある! そうか、蜜! 前世でも花の蜜吸いなんてしたことなかったけど、まんがのキャラがツツジの花を吸ってるイラストを見た記憶があったね。
おばあが作ってくれたかばんにいくつか摘んできたのを、おばあとちゅーってしてきゃっきゃしていると、おじいが豆を炙ってあーんって出してくるからこれもぱくり。
「ん~。おいしーね!」
豆を草から外してさやのすじを取ってから炙ってある。草ごと生で食べるのは家畜だったか……。
おじいが指先でちょちょいと魔法の火を出して炙った豆は、皮はパリッと中はほっくり豆のお味。ちょっと塩味が欲しくなるけど、皮のパリパリをよく見るとパイのように薄く何層かになっていて食感もおもしろい。
両親もだけど、おじいやおばあたちが普通に日常生活で魔法を使うものだから、言葉を覚えるのと同じようにわたしも自然と魔法を使えている。魔法、すっごく便利。
魔法がおとぎ話だった前世の記憶が、もし生まれた時からあったら魔法を見てプチパニックになる赤ちゃんだったと思うけど、幸いというか、はっきりと思い出したのはつい先日。
それまではちょいちょい既視感はあるものの、ミシェルという名のただの幼児だった。
「にゃあ」
かばんの中から可愛らしい御声が!
「こしひかり。おきた~♥」
かばんの中から見上げてくるかわゆいおめめ。キトンブルーっていうの? まだ大人の手のサイズしかなくてわたしでも両手乗りちょいこぼれるくらいのサイズ。住環境を考慮しておばあに作ってもらった幅広のマチ付き幼稚園かばんの中ですやすや眠るしろねこさんがかわゆいのでお花を添えてみたらあまりのメルヘンな絵面に興奮して花を摘みまくってしまった。後悔はしていない。むしろ大満足也。
「にゃああ」
「え、これ? この豆食べたいの?」
ねこに豆って食べさせていいんだっけ? たしか、食べさせて良いのと悪いのがあったような…。
って、こんなときは鑑定さん! 忘れてたわ~。ついいつもみたいにおじいに聞いたけど、前世の記憶を思い出したわたしは持ってる! そう、ラノベの知識を!
(鑑定!)
食べてもいい豆!
指で潰してほぐした豆をしろねこさんの口元にもっていくと、ちっちゃなお口で舐め舐めもむもむついでに差し出した腕にしがみつく。ちっちゃな四つ足で! 必死にしがみついてる! かっ、かわゆ~い!
「可愛いねえ。そろそろ離乳食かい」
「ミシェルよく世話してて偉いなあ」
普段から幼女単体で既にめろめろなおじいやおばあが小動物とペアになったことで更にめろめろしている。
森に囲まれたこの集落で生まれて早5年。
人口たぶん2、30人くらいの名も無い集落にはどうやらわたし以外の子供はいないみたい。子供が少ないんじゃない、本当にわたししかいないの。一番年が近いと思われる若者がわたしの両親。で、もう少し年が上っぽい、両親が「お兄、お姉」と呼ぶおじちゃん、おばちゃんが何人かいて、あとはみんな年寄りばかり。
確実に人口の半分以上がお年寄りの限界集落だと思われるのに、外部との交流もほぼ無し。別に鎖国的な事をしている訳じゃなくて、必要を感じていないんだと思う。
だってこの集落、完全に集落の中で自給自足が出来ているんだもん。
農作はもちろん、畜産、酪農もしているし、綿花やお蚕様を育てていて糸紡ぎや機織りのおばあがいて、陶芸や鍛冶をするおじいもいる。紙漉きのおじちゃんおばちゃんまでいるのには驚く。しかも森の植生も豊かで野生の動物を狩ったりもしている。限界というよりむしろ楽園。
うん。完全に集落の中で完結しているね。どこにも税らしきモノは納めていないらしいし。
というか、自給自足どころか余らせる事もあって、物見遊山ついでに他所の町だか村だかに売りに行くこともあるらしく、使いもしないのに集落には結構お金がある。結果、おじいやおばあが小遣いだと言ってちょいちょい……いや、しょっしゅうわたしにお金をくれるもんだから5才児にしてはやたらと小金持ち……。
そんな都会の人が夢に見ちゃってるようなスローライフ集落で、健康にのびのびと育てられて改めて幸せを感じている今日この頃。
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