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しおりを挟むー「また伸びてる。絶好調だな」
今夜も太一が泊まりに来ており、ベッドの中でスマホを煌々と照らしながら嬉しそうに微笑む。明日も朝から仕事で、やることもやったのでそろそろ眠りにつこうとしていたところだ。沢尻のサイトにエントリーされて以降、彼は優よりも資金の達成率を気にかけており、移動中も仕事中も柊家を訪れてからも、隙あらば逐一サイトをチェックしていた。
優はつい最近沢尻のアドバイスを受け、自身の募集ページに仕事中の写真を多く載せ出したのだが、とたんにアクセスが急上昇し寄付もうなぎのぼりであった。アドバイスといっても「内容で粘るより優さんの顔をバンバン載せた方が手っ取り早いですよ」という簡単な提案であったが、これほど上手くいくとは思わなかったので、沢尻には深く感謝していた。
「写真の効果は絶大だな。社長の言うとおりだ」
「確かにあんまり素性が分からないよりは、どんな人間かちゃんと写真で確認できた方がいいのかもね、心理的に」
「それもあるけど、沢尻さんは単純に優の顔がいいから載せろって言ったんだろ。俺がそれ言っても渋ってたのに、沢尻さんの言うことはすんなり聞いたな」
「だって…」
「このエプロン姿最高。優の仕事中のとこってほとんど見たことないもんなあ。なあ、今度この格好で…」
「やめて」
太一の手からスマホを取り上げ、「もう寝よ」とベッドサイドのランプを消した。太一は「冗談だよ」とへらへら笑いながら優の身体を抱き寄せ、ひたいにキスをして「おやすみ」とその身を抱き竦めた。だがその直後。
ー「おい優くん!!」
「うおおっ!!!」
「ひぃぃっ!!!」
足音もなくやってきた深夜の"侵入者"の突入に、ふたりは飛び上がらんばかりに驚き、太一は弾みでベッドから落下した。
「大変だ…大変なことが…」
起きた、と言う前に思いきり投げつけられた枕が顔に直撃し、間髪入れず「お前何考えてんだ!!何時だと思ってんだよ!!てゆーか急に入ってくんな!!」と優に胸ぐらをつかまれてグラグラと揺すられた。
「や、やめろ優くん…驚かすつもりはなかったんだ…」
「じゃー驚かさないように入ってこいよ馬鹿!!」
「お兄さんか…ああびっくりした。マジで一瞬心臓止まった…」
「たわけが、お前また性懲りもなくうちに入り込んでやがったのか」
「そ、そんな野良猫みたいに…」
「それより兄さんこそどっから入ってきたの?!」
「普通に玄関だ。忍び足で」
「なんでそんな泥棒みたいに入ってくるんだよ!ほんとにもう…それより頼むから、帰るなら先に連絡入れてくれない?ていうか夜中に帰ってこないでくれない?ていうかもうここに帰ってこないでくれない?」
「か、帰ってきたらダメなのか?」
「うん」
「な、何故…」
「お兄さん、それより、大変なことって言ってましたけど…」
「おおそうだ、大変なことが起きたんだ」
「今この状況より大変なことなんかないだろ」
「あるんだなぁ~それが」
「大したことじゃなかったら速攻で追い出すぞ」
「で、お兄さん、何なんです?」
深刻そうだが興味津々と言った顔で迫る太一と、般若のような顔で兄を睨み付ける優。ふたりを前にして時生はごくりと唾を飲み込み、「あのな…」と険しい顔で切り出した。
「み…未来が…」
「灰枝さん?」
「が?」
「未来が…沢尻と…」
「沢尻さん?」
「と?」
「……は……」
「は?」
「はだか……」
「はだか…?」
「……は、裸で……くっついてた」
「…は?」
「…え?」
部屋は静まりかえり、優と太一は丸くした目を見合わせ、またゆっくりと時生を見た。
「俺は見たんだ。ふたりが酔っ払って、未来の部屋で…」
時生は先ほど目にした光景をありのまま話し、だから真夜中に勢いで飛び出してきてしまったのだ、と言った。
薄暗い中でもはっきりと認識できた、生々しいふたりの姿。
未来と沢尻は裸体で重なり合い、下半身は布団に隠れていたが、もぞもぞとうごめきながらキスをしていた。未来が下で沢尻が上だ。それが何の光景なのかは、どれほど鈍い時生にも理解できた。もちろん脳は理解を拒んだが、しかしリアルタイムではっきりと目にした現実であり、真実なのだ。
未来と沢尻は、おそらく酔った勢いで、セックスをしていた。そして未来は、あれほど毛嫌いしていた男に身体を許していたのだ。沢尻に無理に襲われたわけではないことは、キスを受け入れる彼の姿が示していた。
時生はとてつもなくマズいものを目撃したと感じ、上着も羽織らずに部屋を飛び出し、冷たい風に当たりながら必死に自転車を漕いだ。この受け止めきれない事実をなぜか弟に伝えたくなり、その一心で我が家まで帰ってきたのだ。
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