13 / 60
ⅱ
しおりを挟むソファーの上で、大和の膝にまたがりキスをする。シャワーを浴びてからクロは素っ裸のままだ。仕事を終え明るくなってから店を出ると、ちょうど大和が起床する時間に家に着く。
彼は舌を絡めながら背中に手を這わせ、やがて耳や首筋にまでキスをする。さわり方も舐め方も、この人は自分の好きなやり方をしてくれる。背骨に弱い電流が流れているようだ。
「んっ・・・・」
腿の筋肉がこわばる。大和の節くれだった指が胎内に侵入してきて、狭い中に太い二本の指が埋まり、奥に向けて優しく突かれる。いよいよ身体がビリビリとなった。乳首を吸われながら指で攻められるが、決して強くはせずにじれったく指先でこすられ、クロはもう声をガマンできなかった。
「だめ、もう・・・ああっ、あっ・・・」
三分ともたずに快感が極まったようで、指先が当たる場所を軸にして、クロの肉体は早くも絶頂の波にのまれてしまった。大和と出会って、めずらしく恋をしてから、元来男に対して従順だった肉体は、達しやすくなるように変貌を遂げているように感じた。
ぐったりと力が抜け、ハァハァと小さく息を荒げながら、大和にもたれかかるように抱きつく。大和はその髪から背中にかけてを大きな手のひらで撫でてやり、尾てい骨のところから伸びる尻尾のやわらかさを楽しんだ。
「イクとしっぽが出ちゃうようになった……困ったな」
無意識だが、大和にはくだけて甘えた話し方をする。これが本来の自分なのかどうかは定かではない。
「俺以外の人の前でイクことがなけりゃ、平気だろ」
「……そんなことあるもんか」
耳を喰まれ、唇を重ねる。大和のペニスがさっきからずっと、クロの腿のあいだで猛りを主張している。対面のまま腰を上げるよう促され、下からゆっくりと、彼の亀頭に破られていく。細い身体に、ずぶずぶと音が鳴りそうなほど強烈な圧迫感を伴って挿入されていく。もう入らないと思っても、まだ差し込まれていくし、自分は呑み込んでいく。腹の中にヘビでも飼っているようだ。
「あっ、やぁ……ん、あぁ、あ、やっ……」
クロの自重に逆らうように、下から腹奥に向かって犯される。手は背面のあちこちをまさぐり、喘ぐ声を唇でふさがれた。達する瞬間と、彼のペニスで中をめちゃくちゃにされているときは、クロが唯一頭をからっぽにできる時間であった。長らく交渉が絶たれていたこともあり、久々に出会った大和という男の肉体によって、腹の中に鮮やかな新しい傷をつけられているように感じた。
ソファーに押し倒され、足を抱えられて突き上げられる。声はいよいよ高く大きくなり、誰にも見せない顔をして、泣くように喘いだ。
どうして男の肉体が好きなのだろう。"女の味"を知らぬのに、女体がほしいと思ったことがない。幼いころから、女をいやというほど見てきたから?そもそも人間の女に興味がなかったから?しかしどれを差し引いても、男が好きなのは元より備わっていた本能に近いものだと思う。それも心だけではダメで、きちんと最後まで、それこそ種を植え付けてくれるまで、オスの身体というものを味わいたいのだ。
「だめ、なんか、変な気分……」
「変?具合悪い?」
大和が動きを止める。
「違う、いいの、動いていい。そうじゃなくて……」
本来の姿をあらわした白狐の半妖が、瞳を潤ませて頬を紅潮させながら、大和の激しい動きをねだった。
「どんな気分なの?」
ゆるやかに動きつつ、髪をかきあげてやるように、かわいいキツネのひたいを撫でる。
「言えない……」
「言えない?」
「うん……」
「じゃあいつか教えて」
優しく微笑んで、テレビの時刻をチラリと見やった。覆いかぶさるようにクロを見つめながら、大和が射精に向けて激しく腰を振る。いま自分は、いつか見た遊女のように喘いでいる。それも演技ではなく本気だから笑えてくる。
こんな気分は、とても口には出せない。だがこの刺激の中でなら、回らない頭でうっかり口から出てしまいそうだ。身体がざわざわとしている。大和のことが好きでたまらなくなる。そしてなまぬるい種をまかれた瞬間、それを腹で受け止めたまさにその瞬間に、肉体の興奮が最高潮に達したせいか、クロはつい口走ってしまった。
「大和の赤ちゃん産みたい……」
胎内でドクドクと脈動を感じながら、クロは溶けきっていた。大和は思わぬことを言われて驚き、まじまじとその顔を眺めたが、自分の種を受け止めた愛おしいキツネをぎゅっと抱きしめた。
「それが変な気分?」
クロがコクコクとうなずく。
「俺はいつも産ませたいって思ってたよ」
そう言うと、クロがぼんやりした眼差しのまま、フッと笑った。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
令息だった男娼は、かつての使用人にその身を買われる
すいかちゃん
BL
裕福な家庭で育った近衛育也は、父親が失踪した為に男娼として働く事になる。人形のように男に抱かれる日々を送る育也。そんな時、かつて使用人だった二階堂秋臣が現れ、破格の金額で育也を買うと言いだす。
かつての使用人であり、初恋の人でもあった秋臣を拒絶する育也。立場を利用して、その身体を好きにする秋臣。
2人はすれ違った心のまま、ただ身体を重ねる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる