つらじろ仔ぎつね

めめくらげ

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ソファーの上で、大和の膝にまたがりキスをする。シャワーを浴びてからクロは素っ裸のままだ。仕事を終え明るくなってから店を出ると、ちょうど大和が起床する時間に家に着く。
彼は舌を絡めながら背中に手を這わせ、やがて耳や首筋にまでキスをする。さわり方も舐め方も、この人は自分の好きなやり方をしてくれる。背骨に弱い電流が流れているようだ。

「んっ・・・・」

腿の筋肉がこわばる。大和の節くれだった指が胎内に侵入してきて、狭い中に太い二本の指が埋まり、奥に向けて優しく突かれる。いよいよ身体がビリビリとなった。乳首を吸われながら指で攻められるが、決して強くはせずにじれったく指先でこすられ、クロはもう声をガマンできなかった。

「だめ、もう・・・ああっ、あっ・・・」

三分ともたずに快感が極まったようで、指先が当たる場所を軸にして、クロの肉体は早くも絶頂の波にのまれてしまった。大和と出会って、めずらしく恋をしてから、元来男に対して従順だった肉体は、達しやすくなるように変貌を遂げているように感じた。

ぐったりと力が抜け、ハァハァと小さく息を荒げながら、大和にもたれかかるように抱きつく。大和はその髪から背中にかけてを大きな手のひらで撫でてやり、尾てい骨のところから伸びる尻尾のやわらかさを楽しんだ。

「イクとしっぽが出ちゃうようになった……困ったな」

無意識だが、大和にはくだけて甘えた話し方をする。これが本来の自分なのかどうかは定かではない。

「俺以外の人の前でイクことがなけりゃ、平気だろ」

「……そんなことあるもんか」

耳を喰まれ、唇を重ねる。大和のペニスがさっきからずっと、クロの腿のあいだで猛りを主張している。対面のまま腰を上げるよう促され、下からゆっくりと、彼の亀頭に破られていく。細い身体に、ずぶずぶと音が鳴りそうなほど強烈な圧迫感を伴って挿入されていく。もう入らないと思っても、まだ差し込まれていくし、自分は呑み込んでいく。腹の中にヘビでも飼っているようだ。

「あっ、やぁ……ん、あぁ、あ、やっ……」

クロの自重に逆らうように、下から腹奥に向かって犯される。手は背面のあちこちをまさぐり、喘ぐ声を唇でふさがれた。達する瞬間と、彼のペニスで中をめちゃくちゃにされているときは、クロが唯一頭をからっぽにできる時間であった。長らく交渉が絶たれていたこともあり、久々に出会った大和という男の肉体によって、腹の中に鮮やかな新しい傷をつけられているように感じた。

ソファーに押し倒され、足を抱えられて突き上げられる。声はいよいよ高く大きくなり、誰にも見せない顔をして、泣くように喘いだ。
どうして男の肉体が好きなのだろう。"女の味"を知らぬのに、女体がほしいと思ったことがない。幼いころから、女をいやというほど見てきたから?そもそも人間の女に興味がなかったから?しかしどれを差し引いても、男が好きなのは元より備わっていた本能に近いものだと思う。それも心だけではダメで、きちんと最後まで、それこそ種を植え付けてくれるまで、オスの身体というものを味わいたいのだ。

「だめ、なんか、変な気分……」

「変?具合悪い?」

大和が動きを止める。

「違う、いいの、動いていい。そうじゃなくて……」

本来の姿をあらわした白狐の半妖が、瞳を潤ませて頬を紅潮させながら、大和の激しい動きをねだった。

「どんな気分なの?」

ゆるやかに動きつつ、髪をかきあげてやるように、かわいいキツネのひたいを撫でる。

「言えない……」

「言えない?」

「うん……」

「じゃあいつか教えて」

優しく微笑んで、テレビの時刻をチラリと見やった。覆いかぶさるようにクロを見つめながら、大和が射精に向けて激しく腰を振る。いま自分は、いつか見た遊女のように喘いでいる。それも演技ではなく本気だから笑えてくる。

こんな気分は、とても口には出せない。だがこの刺激の中でなら、回らない頭でうっかり口から出てしまいそうだ。身体がざわざわとしている。大和のことが好きでたまらなくなる。そしてなまぬるい種をまかれた瞬間、それを腹で受け止めたまさにその瞬間に、肉体の興奮が最高潮に達したせいか、クロはつい口走ってしまった。

「大和の赤ちゃん産みたい……」

胎内でドクドクと脈動を感じながら、クロは溶けきっていた。大和は思わぬことを言われて驚き、まじまじとその顔を眺めたが、自分の種を受け止めた愛おしいキツネをぎゅっと抱きしめた。

「それが変な気分?」

クロがコクコクとうなずく。

「俺はいつも産ませたいって思ってたよ」

そう言うと、クロがぼんやりした眼差しのまま、フッと笑った。
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