少年カイザー(挿絵複数有り)

めめくらげ

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「じゃーエミちゃんは天音のことが好きだと思う人ー?」

「「「「「はーい!」」」」」

男たちが寝起きする和室にて多数決をとると、それを切り出した大吾郎本人も手を挙げ、エミを抜いた6人は、天音以外がそろって好意を肯定した。

「イグアナ先生、満場一致ですが」

「だったらなんだよ」

「ああん?なんだよじゃねえだろお?ヤるのかヤらねえのかって聞いてんだよお、いつまでもウブぶってんじゃねえぞこの短小童貞がよお~」

楽しげに手を挙げてはいたが、ハルヒコのその問いかけに瑛一が気まずそうにうつむいた。

「や……やんないよ。ていうかホントにやめて」

「天音くん、エミのこと嫌いなの?」

美和に問われ、天音はぶんぶんとかぶりを振る。

「す、好きだよ。でも友達としてね。あと好きだからヤるかといったら、それは本当に大間違いだぞ」

「お堅いんだね」

「フツーのことだよ!」

「ねえ、天音くんってホントに女子と付き合ったことないの?」

「うん……」

「なんで?ほんとーーに宝の持ち腐れだよ?!エミじゃなくていいから、とりあえず女の子と付き合ってみなよ!もっと気楽に考られるようになるから」

「それはねえ、僕よりももっとこじらせてる君のいとこに言ってあげるべきだ」

天音の指摘で、今度は全員の視線が一斉にハルヒコに注がれた。

「おい何だ、俺を見るな」

「ハル?そーだね、ハルもいいかげん恋人を作ったほうがいいかもね。そのまんまだとヤバいよさすがに。だいたいただでさえ女子と縁がないのに男子校なんて行っちゃってさあ、出会い系でもなんでもいいからとりあえず女の子と関わりなよ!まあそれよりまずは、ふつーの女友達から作るべきだとも思うけど」

「………」

「ほら、リアルな話になると黙り込むだろ。人のことは率先しておちょくるくせに、自分に振られるといっつもこうなんだ」

「いい年してガキなんだよね、精神年齢が小3くらいで止まってるから。あのねえハル、天音くんは彼女いたことなくても女の子なんか選び放題のイケメンなの!それに優しいし、気も使ってくれるし、バスケも上手いし、明るいし!でもハルは違うでしょ?プロレスの話しかできないし野球くらいしかできないでしょ?エラそーに天音くんにいろいろ言える立場じゃないから!」

「………」

「ねえハルヒコ、悪いこと言わないから、たまには人の意見を少しくらい心に留めておけるようにはなりなよ。池田くんにもいつもそう言われてるでしょ?それに僕は別にハルヒコのこと欠陥人間みたいには思ってないよ。君なんかがいてもふだんロクなことないけど、たまになら一緒にいても楽しいかもなってほんの少しは思ってるし、何かされてもそれはそれであとで笑い話になってるからまだギリギリ許せるし。でもやっぱり日頃の態度を改めてもう少し素直に人と向き合うべきだよ。彼女作れなんて君には一生かかっても越えられないハードルを課す気はないから、せめて人に多少でも受け入れられるような人間にはならなくちゃ。もう19じゃ手遅れかもしれないけど、努力次第で少しは変われるはずだから」

「………」

「はーあ、ほんとーに何にも言えなくなっちゃうんだから、情けない。天音くんたちが友達でいてくれることも奇跡なんだからね。だからお父さんもあんなに大喜びして張り切ってんだから。呆れられて仲間はずれにされないように少しは努力しなよ」

「まあ友達かどうかは微妙だけど、そんな気にしなくていいよ。こっちがどんなに避けててもめげずに突っかかってくるくらいにはメンタル強いから。人の気持ちがわからないせいかもしれないけど、僕もゴローもサラも、あとここにはいないけど高鷹っていう人も、そういうところを一応は受け入れてあげられてるから」

「あ…天音もミワちゃんも、あんまり的確なこと言うとハルヒコ本当に1週間くらいしゃべらなくなっちゃうから……」

「サラちゃんは甘やかさなくていいよ。ねえ瑛一?」

「う、うん……」

瑛一が困惑した顔でハルヒコをちらりと見やる。

「ぬうぅ……てめえら2人がかりで調子に乗りやがってぇ……何で急にしゃーしゃーと俺のカウンセリングをおっ始めてやがんだ……イグアナがエミとヤるかヤらないかの話だったはずだろお?」

「カウンセリングじゃなくてアドバイスだよ?君なんかプロの人でもカウンセリングなんか無理に決まってるだろ?」

「天音……もうよしといてやれ。なんか、俺が変なこと言いだしたせいだな。悪かったよ」

「うわ、ハルヒコ顔真っ赤。なに?僕そんな悪いこと言った?」

「渦川くん泣きそうだぞ」

「ああ、ごめん、ごめんねハルく~ん!ぜんぜん間違ったこと言ってないけどごめんね!19にもなってそんなことで泣かないでえ!」

「天音くんの煽る感じって……天然?」

瑛一が誰にともなく問うと、大吾郎とサラが同時に彼を見やって、無言でコクリとうなずいた。
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