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しおりを挟む遅くなる前に子供たちの友人らは自宅へ帰らされ、時間が深まるにつれて歓迎会は大人たちの宴会へと変わっていく。人の出入りが多い家ではあるが、こうして大勢が一堂に会する機会はめったにない。
笑一は酒が入ってからよりいっそう上機嫌で、現場を見てもいないのに天音たちの働きぶりを大いに褒め、サラには「ハルをよろしくね」と何度も言っていた。「やかましい、俺はもう寝る」とハルヒコが引き上げると、早朝から動き回って睡魔に襲われていた天音たちも、笑一たちにおやすみの挨拶をしてそのあとにぞろぞろとくっついていった。
天音と大吾郎は使われていない和室を借りているが、ふたりで使用するには広すぎるので、どうせならと瑛一を交えた男たち5人でそこに眠ることにした。
なぜかサラにはまた別の「ひとり部屋」を笑一が用意していたのだが、彼は案の定「ひとりで寝るのやだ」と言ったので、その部屋からハルヒコが布団を運んでやった。
「久しぶりに一緒に寝られるなあ~イグアナくうん」
憎たらしい顔でわざとらしく布団をとなりにくっつけてきたハルヒコに、天音は「ゴロー場所交換して」とうんざりした顔で言い、「いいよ」と言われる前に彼の布団に寝転がった。
「せっかく瑛一くんキミが帰ってくるの待ってたんだから、ここにいるときぐらいはとなりで寝てあげなよ。あとサラはこっち、真ん中のがいいでしょ。キミ怖がりなんだから」
適当に言いくるめ、結局布団は天音、サラ、大吾郎、そしてその向かいにハルヒコ、瑛一の並びとなった。
「ハル、天音くんに嫌われてるんだね。なんかしたの?」
瑛一がずばりと容赦ない指摘をすると、ハルヒコは「俺が嫌われてるのではなくコイツの性根が腐っているのだ」と返した。
「そーゆうこと言うから嫌われるんだ」
瑛一の追撃に天音が声をあげて笑う。
「ハルくん聞いた~?瑛一くんさすがだなあ、ちゃーんと分かってくれてるんだ」
「やかましいぞこの居候が。おい瑛一、さっさと電気消せ」
「はん、エラそーにお兄ちゃんぶっちゃって。いいよ瑛一くん、僕が消す」
「おいイグアナ、ここで寝起きする以上はいつなんどきも油断させんからな。生意気なこと抜かしたらお前の寝入りばなを襲ってやる」
「別にいいよ」
「ふ?」
「別にいいよ」
笑顔をスッと消し、真っ黒な瞳でハルヒコをじっと見る。まさしくカエルを睨む蛇であった。
「天音、殺人鬼みたいな顔になってるぞ」
大吾郎の指摘に、殺人鬼……とサラが苦笑いをした。すると天音も徐々に意地の悪い笑顔を取り戻していき、「嘘だよハルく~ん」とハルヒコの頭をくしゃくしゃ撫でた。
するとハルヒコが手首をとって「その呼び方やめろ」と子供じみたことを言うと、「なんで?怒ったのハルくん?」と天音がわざとらしく眉尻を下げ顔を覗き込んだ。ハルヒコは顔をそらすが耳まで赤くしており、「あー、ハルくん恥ずかしかったんだぁ~」と天音が猫なで声で煽ると、彼はとうとうタオルケットを頭からかぶり、ミノムシのようにじっと動かなくなってしまった。
「天音くんつえーな、ハルに勝った」
「ほぼ毎日ケンカしてたからね。鍛えられたよ」
満足げな顔で電燈のヒモを引っ張り、部屋は真っ暗になるが、大人たちの楽しげな宴の音が遠くに聞こえてくる。天音が「サラちゃんは明日サーフィンする?」と問うと、「しないけど起こして」と寮と変わらぬことを言った。
寝る時間はいつもと同じだが、この島の夜はずっと早いように感じる。田舎は夜も朝も早いのだ。静まり返った部屋で、やがてハルヒコもふてくされたミノムシ状態のまま寝息を立てはじめ、疲れていた5人はすぐに眠りについた。
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