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「ふたりともコンビニとか寄る?」
「んーん、俺は特に平気」
「池田くんは?」
「……いえ」
「池田ぁ、なんか無理やり誘って、こんなことになって悪かったな」
「……」
「池田くん、もうこんな変なことには誘わないよ。ごめんね」
「……」
「なあ、池田怒ってんの?そりゃー確かにワケわかんねえことに巻き込んだかもしれねえけどさあ、別にただの遊びの誘いだろ?お前に嫌がらせしたわけでもねーのに、そこまで怒ることなくねえか?」
「林田くん」
「それに、星崎くんも謝ってんのにシカトはないだろ」
「いいから」
「……ったく」
チッとつまらなそうに舌打ちをして、林田がふてくされた顔でドカッと背もたれによりかかった。だが、サイドミラーに映り込む池田の妙な表情に気がつくと、彼は怪訝な顔をしてもう一度「池田?」と名を呼んだ。
「なあ、お前どうした?」
林田の問いかけに天音も違和感を感じ、バックミラー越しに彼を見ながら「なんかあったの?」と尋ねた。
「池田、なんかすげー顔で外見てるけど……」
「え?」
「おい池田」
すると彼はようやく窓から目を離し、うつむいて「ごめん」と小さく返した。だが続けざまに「あのさ、ふたりとも……」と発した声はひどくかすれた上に震えていて、まるでこれまで恐怖によって言葉が出なかったかのような、ただならぬ重々しさを感じさせた。
「さっきから、気づかない?」
「何が?」
「先輩、車走らせてて、なんか変だなって思いません?」
「……いや、特には。どしたの?」
「たぶん、僕にしか見えてないってことはないと思うんですけど……」
「なんだよ、ハッキリ言え」
「林田くん、しばらく窓の外見ててくれないかな?右側」
「は?」
「そのうち気づくと思う」
「ああ?もったいぶりやがって、何なんだ。気色わる」
林田は渋々ながらも言われたとおりに窓の外をじっと眺め、流れていく景色に目を凝らした。
「池田くん、外に何があるの?」
「……あとで言います。勘違いかもしれないし。先輩は、運転に集中しててください」
「う、うん……」
天音は前だけを向いていたが、さきほどから見える景色に特に異変はなく、池田が見ていた助手席側の視界の端にも別段変わったことはなかった。だがそれから5分も車を走らせたころで、林田が「……ああ、なんかやべーな」とつぶやいた。バックミラー越しの彼は引きつった顔をして、池田と同じような恐怖の色を浮かべている。
「星崎くん、俺の家まであとどれくらいかかりそう?」
「え?……そうだな、このまま混まずに行ければ、あと30分くらいかな?」
「そっか。あのさ、星崎くんてけっこー怖いものなしだよな?」
「……そんなこともないけど……なんで?」
「今から言うことにビビって、事故ったりしないことを祈るぞ」
「林田くん、よした方が……」
「いや、なんかヤベーから今のうち言っとく。それより先にまず、渋滞に巻き込まれてもいいから、明るくてデカい道に戻ろうぜ」
「今さら?また巻き込まれたら1時間とかかかるかもよ」
「いい。ずっとこんな暗れえ道を走ってたくない」
「……とは言ってもなあ、この先大通りに入り込めるとこは……」
「うわっ、まただ」
林田が言うと、池田もびくりと肩をすくめた。
「またって?」
「星崎くん、この道やべえよ、さっきからずーっとさ……」
いつも強気な林田の弱々しい声が、かすかに震えながらこう告げた。
「ずーっと……地蔵が立ってんだ」
池田がごくりと唾を飲み込むが、彼はもう窓外を見ていない。
「……どこに?」
「運転してたらわかんねえのかな?ポストの下とか、植え込みの中とか、人んちの門の内側とか……変なところに点々と地蔵が立ってんだよ」
「……」
「信じてもらえなくてもいい。けど池田、そうだよな?お前が見てたものはコレなんだろ?」
「……うん」
「それから、この地蔵、もしかしたらだけど……」
「全部同じだよね?」
「……ああ」
「ハルヒコくんが持ってたやつ、僕はちゃんと見てなかったけど、たぶんこれなんじゃ……」
すると天音は苦笑いを浮かべ、小さくかぶりを振りながら「なんか、全然追いつけない」と池田の言葉をさえぎるように言った。
「そんなバカげたこと起こる?さすがにちょっと……異常だろ、そんなことが現実に起きてたら。つまりさ、ハルヒコの持ってた地蔵が、僕らの帰り道に立ってるってこと?」
「異常だけど嘘じゃねえんだって」
「池田くんはいつからそれ見てたの?」
「実は……病院を出てすぐ……」
「は?そんな前から?お前何でずっと黙ってたんだよ」
「だってこんなこと言えるわけないだろ!それに、言うのがすごく怖かったんだ。だって林田くんたちにも見えたとしたら、こんなことが現実に起こってるんだって認めることになるから……」
「認めることになったら怖えーけど、認めざるを得ないことになったと」
「……そういうこと」
張り詰めた空気の中で、天音はひとりため息をつく。それはハルヒコの寝息に重なった。
「じゃあさ、次その地蔵見たら教えて」
「へ?」
「降りて確かめてみるから」
「ぜっっったいやめろ!!」
「やめましょうよ先輩!!」
「なぜ?」
「呪われたらどーすんだよ!ていうかすでに呪われてるかもしれねえのに……だってあの地蔵、俺らについてきてるってことだぞ、たぶん」
「でもついてきてるだけなんでしょ?」
「ジューブンやべえ事態だろ!!」
「何がそんなにヤバいの?平気だって」
「もし地蔵に車横付けなんかしたら、いくら星崎くんが先輩でもグーで殴るぞ」
「同じやつか確かめたらそれでいいよ。僕の中の不思議なことリストにそっと納めるだけだから」
「何だそのメルヘンチックな頭悪そうなリストは!そんなことのために俺らを恐怖にさらすな」
「大丈夫だよ。もしも呪いにかかってるとしたら、きっと僕らは山を下る前に事故ってたはずだ。それがこんなところまで無事に帰ってこれてるじゃないか」
「でも渦川は……」
「あー……まあこの際だから言うけど、コイツは呪われておかしくなってるんじゃない。実はちょっと特殊な恐怖症があるんだ」
「恐怖症?」
「そう。コイツ、重度の地蔵恐怖症でね……」
「何でですか?」
「それは……いろいろあって……。まあとにかく、呪いとかのせいじゃないから」
だがそれからしばらく街灯の乏しい住宅地を走らせるが、池田も林田も恐れをなしてもう窓の外は見ていなかった。
「ふたりとも、ちゃんと探してよ」
「バカ言うな!車から降りて地蔵チェックなんて絶対やだね」
「僕がやるから平気だろ」
「それでもイヤだ」
「まったくしょーがないなあ。何がそんなに怖いんだか……」
そこからはふたりの懇願により再び大通りへと入り込み、明るくて混んだ道で林田の家に戻っていった。病院を出たのは22時頃だったが、渋滞のせいですでに日付をまたいでいた。
「ハルヒコ!はーるーひーこ!着いたよ!起きて!」
「うぐ…待て、まだ金脈が残っているはずだ…カナダに取られる前に…俺たちで掘り当てるぞ…」
「ダメだ、まだ夢見てる」
「ホントに夢なんですかね」
「星崎くん俺んち泊まってく?渦川は車ん中で寝かせときゃいいっしょ。池田も泊まってけよ」
「いいの?じゃ親に連絡する」
「そうだね。寮の門限もとっくに過ぎてるし、こっから歩くと30分はかかるしな」
「じゃ来いよ。部屋すげー狭いけど」
「ありがとう」
そうしてハルヒコを車内に残し、3人は団地の階段を上っていった。5階建てでエレベーターのない建物である。林田家は3階にあり、各階の踊り場から駐車場が見下ろせた。そして天音はふと気がついた。駐車場の植え込みに、ひっそりと地蔵が立っている。
「あんなところにもお地蔵さんがあったんだ。ハルヒコ、起きてあれ見たらまた絶叫しそうだな」
笑いながら言うと、林田が階段の途中でぴたりと足を止めた。
「地蔵?どこ?」
「え?……あそこ。ほら、あの白いエルグランドの前……」
暗くてわかりづらいが、天音が指さしたところを目を凝らして見る。するとやがて彼はカタカタと震え出し、その場にへたり込んでしまった。
「あ……あれだ……」
「あれ?」
「あれだよ、さっきから俺らが見てたやつ……」
池田が「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。
「本当に?」
「……うん……やべえ、マジでやべえよ……」
「そんな……ここまで、ここまでついてくるなんて……」
すると怯えて身動きの取れなくなるふたりに、「君たちは部屋戻ってていいよ」と言い残し、天音がすぐに階段を下りていった。
「バカ!よせ!」
「先輩!!」
「あの人ガチのアホだろ……渦川よりまともじゃねえ……」
しばらくして恐るおそる踊り場から顔を出すと、天音は植え込みの前にしゃがみ込み、地蔵をまじまじと眺めていた。
「星崎くん、もういいから戻ってこいよ!」
声をかけると、天音はこちらを振り返って「ホントにさっきのヤツっぽい」と、神妙な顔をするでもなく平然と言った。
「んなこたぁーわかってんだよ!早く帰ってこいって!」
「林田くん、あんまり大っきい声出すと……」
「ああ?平気だよ、こんなクソ団地、しょっちゅうどっかの階のバカどもが騒いでんだから。となりのおばちゃんは耳遠いからたぶん聞こえねえし」
「そ、そんな……」
「おーい星崎くん、検証は部屋に入ってからにしてくれー」
付き合いきれないと言わんばかりにウンザリした声で呼びかけると、天音はようやく立ち上がり、テクテクと団地へ戻ってきた。
「んーん、俺は特に平気」
「池田くんは?」
「……いえ」
「池田ぁ、なんか無理やり誘って、こんなことになって悪かったな」
「……」
「池田くん、もうこんな変なことには誘わないよ。ごめんね」
「……」
「なあ、池田怒ってんの?そりゃー確かにワケわかんねえことに巻き込んだかもしれねえけどさあ、別にただの遊びの誘いだろ?お前に嫌がらせしたわけでもねーのに、そこまで怒ることなくねえか?」
「林田くん」
「それに、星崎くんも謝ってんのにシカトはないだろ」
「いいから」
「……ったく」
チッとつまらなそうに舌打ちをして、林田がふてくされた顔でドカッと背もたれによりかかった。だが、サイドミラーに映り込む池田の妙な表情に気がつくと、彼は怪訝な顔をしてもう一度「池田?」と名を呼んだ。
「なあ、お前どうした?」
林田の問いかけに天音も違和感を感じ、バックミラー越しに彼を見ながら「なんかあったの?」と尋ねた。
「池田、なんかすげー顔で外見てるけど……」
「え?」
「おい池田」
すると彼はようやく窓から目を離し、うつむいて「ごめん」と小さく返した。だが続けざまに「あのさ、ふたりとも……」と発した声はひどくかすれた上に震えていて、まるでこれまで恐怖によって言葉が出なかったかのような、ただならぬ重々しさを感じさせた。
「さっきから、気づかない?」
「何が?」
「先輩、車走らせてて、なんか変だなって思いません?」
「……いや、特には。どしたの?」
「たぶん、僕にしか見えてないってことはないと思うんですけど……」
「なんだよ、ハッキリ言え」
「林田くん、しばらく窓の外見ててくれないかな?右側」
「は?」
「そのうち気づくと思う」
「ああ?もったいぶりやがって、何なんだ。気色わる」
林田は渋々ながらも言われたとおりに窓の外をじっと眺め、流れていく景色に目を凝らした。
「池田くん、外に何があるの?」
「……あとで言います。勘違いかもしれないし。先輩は、運転に集中しててください」
「う、うん……」
天音は前だけを向いていたが、さきほどから見える景色に特に異変はなく、池田が見ていた助手席側の視界の端にも別段変わったことはなかった。だがそれから5分も車を走らせたころで、林田が「……ああ、なんかやべーな」とつぶやいた。バックミラー越しの彼は引きつった顔をして、池田と同じような恐怖の色を浮かべている。
「星崎くん、俺の家まであとどれくらいかかりそう?」
「え?……そうだな、このまま混まずに行ければ、あと30分くらいかな?」
「そっか。あのさ、星崎くんてけっこー怖いものなしだよな?」
「……そんなこともないけど……なんで?」
「今から言うことにビビって、事故ったりしないことを祈るぞ」
「林田くん、よした方が……」
「いや、なんかヤベーから今のうち言っとく。それより先にまず、渋滞に巻き込まれてもいいから、明るくてデカい道に戻ろうぜ」
「今さら?また巻き込まれたら1時間とかかかるかもよ」
「いい。ずっとこんな暗れえ道を走ってたくない」
「……とは言ってもなあ、この先大通りに入り込めるとこは……」
「うわっ、まただ」
林田が言うと、池田もびくりと肩をすくめた。
「またって?」
「星崎くん、この道やべえよ、さっきからずーっとさ……」
いつも強気な林田の弱々しい声が、かすかに震えながらこう告げた。
「ずーっと……地蔵が立ってんだ」
池田がごくりと唾を飲み込むが、彼はもう窓外を見ていない。
「……どこに?」
「運転してたらわかんねえのかな?ポストの下とか、植え込みの中とか、人んちの門の内側とか……変なところに点々と地蔵が立ってんだよ」
「……」
「信じてもらえなくてもいい。けど池田、そうだよな?お前が見てたものはコレなんだろ?」
「……うん」
「それから、この地蔵、もしかしたらだけど……」
「全部同じだよね?」
「……ああ」
「ハルヒコくんが持ってたやつ、僕はちゃんと見てなかったけど、たぶんこれなんじゃ……」
すると天音は苦笑いを浮かべ、小さくかぶりを振りながら「なんか、全然追いつけない」と池田の言葉をさえぎるように言った。
「そんなバカげたこと起こる?さすがにちょっと……異常だろ、そんなことが現実に起きてたら。つまりさ、ハルヒコの持ってた地蔵が、僕らの帰り道に立ってるってこと?」
「異常だけど嘘じゃねえんだって」
「池田くんはいつからそれ見てたの?」
「実は……病院を出てすぐ……」
「は?そんな前から?お前何でずっと黙ってたんだよ」
「だってこんなこと言えるわけないだろ!それに、言うのがすごく怖かったんだ。だって林田くんたちにも見えたとしたら、こんなことが現実に起こってるんだって認めることになるから……」
「認めることになったら怖えーけど、認めざるを得ないことになったと」
「……そういうこと」
張り詰めた空気の中で、天音はひとりため息をつく。それはハルヒコの寝息に重なった。
「じゃあさ、次その地蔵見たら教えて」
「へ?」
「降りて確かめてみるから」
「ぜっっったいやめろ!!」
「やめましょうよ先輩!!」
「なぜ?」
「呪われたらどーすんだよ!ていうかすでに呪われてるかもしれねえのに……だってあの地蔵、俺らについてきてるってことだぞ、たぶん」
「でもついてきてるだけなんでしょ?」
「ジューブンやべえ事態だろ!!」
「何がそんなにヤバいの?平気だって」
「もし地蔵に車横付けなんかしたら、いくら星崎くんが先輩でもグーで殴るぞ」
「同じやつか確かめたらそれでいいよ。僕の中の不思議なことリストにそっと納めるだけだから」
「何だそのメルヘンチックな頭悪そうなリストは!そんなことのために俺らを恐怖にさらすな」
「大丈夫だよ。もしも呪いにかかってるとしたら、きっと僕らは山を下る前に事故ってたはずだ。それがこんなところまで無事に帰ってこれてるじゃないか」
「でも渦川は……」
「あー……まあこの際だから言うけど、コイツは呪われておかしくなってるんじゃない。実はちょっと特殊な恐怖症があるんだ」
「恐怖症?」
「そう。コイツ、重度の地蔵恐怖症でね……」
「何でですか?」
「それは……いろいろあって……。まあとにかく、呪いとかのせいじゃないから」
だがそれからしばらく街灯の乏しい住宅地を走らせるが、池田も林田も恐れをなしてもう窓の外は見ていなかった。
「ふたりとも、ちゃんと探してよ」
「バカ言うな!車から降りて地蔵チェックなんて絶対やだね」
「僕がやるから平気だろ」
「それでもイヤだ」
「まったくしょーがないなあ。何がそんなに怖いんだか……」
そこからはふたりの懇願により再び大通りへと入り込み、明るくて混んだ道で林田の家に戻っていった。病院を出たのは22時頃だったが、渋滞のせいですでに日付をまたいでいた。
「ハルヒコ!はーるーひーこ!着いたよ!起きて!」
「うぐ…待て、まだ金脈が残っているはずだ…カナダに取られる前に…俺たちで掘り当てるぞ…」
「ダメだ、まだ夢見てる」
「ホントに夢なんですかね」
「星崎くん俺んち泊まってく?渦川は車ん中で寝かせときゃいいっしょ。池田も泊まってけよ」
「いいの?じゃ親に連絡する」
「そうだね。寮の門限もとっくに過ぎてるし、こっから歩くと30分はかかるしな」
「じゃ来いよ。部屋すげー狭いけど」
「ありがとう」
そうしてハルヒコを車内に残し、3人は団地の階段を上っていった。5階建てでエレベーターのない建物である。林田家は3階にあり、各階の踊り場から駐車場が見下ろせた。そして天音はふと気がついた。駐車場の植え込みに、ひっそりと地蔵が立っている。
「あんなところにもお地蔵さんがあったんだ。ハルヒコ、起きてあれ見たらまた絶叫しそうだな」
笑いながら言うと、林田が階段の途中でぴたりと足を止めた。
「地蔵?どこ?」
「え?……あそこ。ほら、あの白いエルグランドの前……」
暗くてわかりづらいが、天音が指さしたところを目を凝らして見る。するとやがて彼はカタカタと震え出し、その場にへたり込んでしまった。
「あ……あれだ……」
「あれ?」
「あれだよ、さっきから俺らが見てたやつ……」
池田が「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。
「本当に?」
「……うん……やべえ、マジでやべえよ……」
「そんな……ここまで、ここまでついてくるなんて……」
すると怯えて身動きの取れなくなるふたりに、「君たちは部屋戻ってていいよ」と言い残し、天音がすぐに階段を下りていった。
「バカ!よせ!」
「先輩!!」
「あの人ガチのアホだろ……渦川よりまともじゃねえ……」
しばらくして恐るおそる踊り場から顔を出すと、天音は植え込みの前にしゃがみ込み、地蔵をまじまじと眺めていた。
「星崎くん、もういいから戻ってこいよ!」
声をかけると、天音はこちらを振り返って「ホントにさっきのヤツっぽい」と、神妙な顔をするでもなく平然と言った。
「んなこたぁーわかってんだよ!早く帰ってこいって!」
「林田くん、あんまり大っきい声出すと……」
「ああ?平気だよ、こんなクソ団地、しょっちゅうどっかの階のバカどもが騒いでんだから。となりのおばちゃんは耳遠いからたぶん聞こえねえし」
「そ、そんな……」
「おーい星崎くん、検証は部屋に入ってからにしてくれー」
付き合いきれないと言わんばかりにウンザリした声で呼びかけると、天音はようやく立ち上がり、テクテクと団地へ戻ってきた。
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