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6月のホットケーーキ
しおりを挟む「おい、星崎天音」
脱衣所の扉がガラリと開かれるなり、入ってきたハルヒコに背後から声をかけられ、天音は振り向かずに服を脱ぎながら「なに?」と尖った声で返す。
「ケツを向けたまま俺と会話する気か」
「触るなよ」
「ホットケーーキを焼いてくれないか。あのフワフワのやつ」
「ホットケーキ?何で?」
「何でもだ」
下着を脱ぎ、素っ裸になった天音がようやく振り向くと、赤いジャージにウエスタンハットをかぶったハルヒコが、スーパーの袋を持ってたたずんでいた。
「材料買ってきたの?」
「ああ」
「今日はもう遅いから作んないよ」
「今日はいい。土曜はどうだ?」
「土曜?……別にいいけど」
「じゃあ決まりだな」
「……」
「……」
怪訝な顔を向けつつも天音が浴室に行こうとすると、ハルヒコの右手がおもむろに天音の尻に伸び、ガッと左の尻をつかみあげた。すると間髪入れずに平手打ちを喰らい、脱衣所の外まで響く乾いた音に、その場にいた寮生たちがビクリと肩を震わせた。
「何で?何で触るの?」
「わざわざ触るななどと言うからだ」
「君もうビョーキだぞ!」
「ビョーキか、なるほどな。ならばこうしてくれる!」
「ならばってなに?……ねえ、ちょっと、……ひっ……やめ、やめろーーっっ!!ああーーー誰かぁぁーーーっ!!」
ただならぬ絶叫を聞きつけ、先に入浴していた耀介と高耀が「どうした?!」と浴室の戸を開けるが、耀介は目の前の光景に息を飲み、どうすべきかわからず静止した。だが高耀はその姿を見て、「あら、キレーなまんぐり返しですこと……」とつぶやいた。
「ほーら、みんなに恥ずかしいところ見られてるぞお~」
脱衣所の真ん中で寮生たちに遠巻きに見られながら、天音はバックドロップを喰らったかのような格好でひざ裏をガッチリと固定されていた。ハルヒコも全力で固めながら無理やりブリッジをしているが、あたかも技をかけたかのように見せているだけだ。
天音は全裸で天井に向かって開脚し、あられもない場所をさらけ出している。その部分は手で必死に覆い隠していた。
「イグアナの尻穴が丸見えだあ~」
「やだやだ!離せバカ!!助けてよーすけーー!!」
「渦川……お前それ殺されるやつって分かっててやってる?」
その壮絶な光景に耀介はもはや驚きを通り越して呆れ返ったのか、びしょ濡れのままその場に立ち尽くした。
「天音くんのおまんまんが丸見えだぞ」
「お前も変なこと言うな、気色悪い!」
「うわあーーん!!よーすけえ!!早く離してよおーー!!」
「どーすりゃいいんだこれ?」
「とりあえずこの腕を……」
耀介がひざ裏を固定していたハルヒコの腕を剥がすと、天音はそのままゴロリと後転して解放された。その瞬間ハルヒコはすぐさま立ち上がり脱衣所から脱兎のごとく逃げ出し、またもや全裸のまま後を追おうとした天音を、耀介と高鷹がふたりがかりで止めた。
しかし天音は、入浴を終え脱衣所を出ようとしていた1年生をつかまえると、「君、ちょっと頼まれてくれないかなあ?」と低い声と怒りに満ちた顔で迫り、怯える彼にあることを伝えると、「ダッシュで行ってくれ」とその両肩をガッシリとつかみ、鬼気迫る表情で託した。
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