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ー「なあ、お前は俺の味方か?」

部屋に戻り、起きているかわからぬサラに問うと、しばらくしてから小さな声で「味方だよ」と返ってきた。

「ホントは俺がお前に翻弄されるところを見て、喜んでいるだけじゃないのか?」

サラの目が布団の端からのぞく。

「何か言われたの?」

「いや。ただ何となくそう思ったんだ」

「戸惑ってる君を見てるのは確かに面白い。でも僕はちゃんと君のことが好き」

「なあ、お前の家族ってどんなだ?俺はタマキン以外の家族の素性を特殊能力で当てられたが、お前のはよく見えない。星崎天音は教えてくれない」

「……ふつうだよ。お父さんとお母さんとお兄ちゃんがいる」

ハルヒコがぴくりと眉を動かした。

「親父はどんなだ?」

「サラリーマン」

「母親は?」

「主婦」

「兄貴は?」

「サラリーマン」

「いくつだ?」

「26」

「ずいぶん離れてるな。どんな仕事をしている?」

「さあ」

「じゃ親父は?」

「金融関係」

「母親は美人だろ。お前に似ていそうだ」

「似てないよ。誰にも似てない。子供のころから似たくないと思ってたら、誰とも似なくなった」

「誰が地雷だ?」

「……」

「見えてきたぞ。どうせ親父も兄貴も社内ではエリート階級の奴らだろ。母親は旦那の出世とガキどもの成績に対して神経質でヒステリックだ。そして外ヅラはズバ抜けて良い」

「そうだね」

「兄貴はどんな奴かわからんな。だがお前ら兄弟は、えこひいきされて育ってそうだ。無論どっちの出来がいいかによるだろう」

「ひいきなんてありがちな話だよ。君らだってそうだ。君はいい家に預けられたのに、兄弟は預けてもらえなかった」

「だがもし俺が奴の境遇におかれたって、あんな底抜けのバカには成り下がっていない」

「そうかな」

「お前は家族全員を嫌ってる。俺と同じように」

「もうやめて」

「わかった。おそらくお前より優秀な兄貴が、いちばんの地雷だ」

「やめてって言ってるだろ」

「……テキトーに言ってみたが、反応から察するにビンゴのようだ」

起き上がってぎりぎりと睨みつけるサラの目尻には、ほんの少しの涙が光っている。

「味方というなら、俺にもすべてを見せろよ。俺はお前にろくでなしの兄弟のことを話した。仲直りのためでもあったが、ともかく話した」

そっと近寄ってベッドに入り込むと、「来ないで」とその胸を押した。だがサラの力では到底かなわず、必死に拒んでも無理やり抱きすくめるハルヒコの腕を振り払うことはできなかった。

「なぜ俺としたがる?」

「あんなのウソに決まってるだろ」

「あれがウソならポルノ女優顔負けの誘いっぷりだな」

「離せ」

「俺が何度祓おうとしたって、お前の脳に棲みついた悪魔は消えない」

「……」

「俺のチンコをお前にブチ込んで気が済むんならヤってもいい。だがその前にひとつ聞くが、なぜそんな方法をお前は必死に求めたんだ?」

「だからウソだってば」

「……初めてのキスは俺でいいんだよな?」

「気持ち悪いこと聞くな」

「だが性体験はどうだ。お前は確かに童貞くさいが、なぜだかいやに男好きするフシがある。千葉大吾郎もそれにあてられているし、陰気な幽霊のくせに、お前を密かに慕う奴らは何人もいる」

頬を寄せ、後頭部にそっと手を添える。サラはまだ抵抗するが、その力はずっと弱まった。しかしやがて肩を震わせてシクシクと泣きだし、布団には涙のシミができていく。

「……孤独だから温もりを求めているのかと思ったが、もっと違う何かがあるように感じるんだ」

「知る必要なんか……ない」

「そうか。……じゃあもう聞かん。普段から電ノコで脅されてる仕返しだ。お前を泣かすのは気分がいいな」

「死んじゃえ」

「死ぬときはいっしょだ。お前が言ったとおり」

ぐすぐすとしゃくりあげるサラを横たえさせ、胸に抱き、腕枕をしてやる。相変わらず鉄枷のように重苦しく不自由だが、ハルヒコはもうこの状態にすっかり慣れきっていた。
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