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真夜中の青春相談室

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「聞いた?今日の保体」と珠希が切り出し、「サラのクラスでやったやつだろ」と耀介が苦笑いをした。

「ホント何が目的なのかわからん授業だな」

「だから、正しい知識をつけるという目的だ」

「そんなもんでわざわざ実演とか必要か?ものすごく気まずいぞ」

「でも練習なしにいきなり本番ってのは、やっぱハードすぎるからな」

「みんな練習なんかしないだろ」

「……何だ?2年の保体で何があるんだ」

「チンポ3本目のカイザーにゃいまさら無用の授業だ」

「おいサラ、何をやったんだ?」

「……コンドームのつけ方を習った」

「なっ……」

ハルヒコの動きが止まり、手から箸がポロリと抜け落ちる。

「なんだそれは?ていうかそれが授業なのか?お前らフルチンで授業受けたってことか?」

「ばーか、自分のでやるわけないだろ。だからって模型ってのもありえないけど……」

「模型だと?」

「僕たちのクラスも、そのうちそれやらされるってことだよねえ?みんなで模型にコンドームはめるって……どんな光景?」

天音が眉根を寄せるが、「でもキミは土壇場で焦らないようにしっかり教わっとくべきだぞ」と高鷹が返した。

「模型ってなんだ?」

「……コンドームを装着するための練習台だよ」

「練習台?」

「だからあ、ギンギンに勃起したチンコの模型っつーことだ。バイブみてえなやつ」

「何だそりゃ、お前らそんなリアルなモンを使ったのか?ていうかチンコの模型っていったいどーいうシロモノだ?」

「……そのまんまだよ」

「おそらくだがそれは、学校のお勉強用なんていうマジメな用途で開発されたものじゃなかろう?本来は独り身のOLと昼下がりの主婦のために開発されたはずだ」

「そーだろうけど、使い方に決まりはないんだろ」

「ウインウインはするのか?」

「ウインウインはしないらしい」

「してどうすんだよ。」

「ウインウインしたらもっと楽しみが広がるじゃないか」

「どう楽しむんだ?自分のケツにブチ込むのか?」

「うーん?そうだなあ……」

ハルヒコがわざとらしく腕を組み天井を見上げるが、天音はこちらに振られることをすでに察知している。
「とりあえず欲求不満の童貞イグアナに突っ込んで、フルパワーでウインウイン掻き回してやろうかなあ?天国を見させてやれば少しは凶暴さもやわらぐだろう」

「やれるモンならやってみろこの妄想虚言変態野郎。セックスの話で顔真っ赤になるくせにそーゆーことは言えるんだな」

「そりゃあいいな。なんかサイズが大中小あるらしいぜ」

「もちろんマグナム級のやつだ」

「サラ、マグナム級あった?」

「……あった。僕が使ったやつ」

すると大吾郎が味噌汁をぶっと吹き出し、そのとなりでTシャツにかかった耀介が「汚ねっ!」とあわててふきんで拭った。

「ていうかさあ、みんなサラがコンドームはめるとこを囲んで野次馬してたんでしょ?中川先生は鈍感だから気づいてないだろうけど、ほんとセクハラだよね。公開処刑のセクハラバージョン」

珠希が言うと、そのこともセットで聞いていたハルヒコ以外の男たちが「ああ……」と何とも言えない顔をした。

「野次馬……だったのかなあ、あれ」

「みんなエロい気持ちでお前がゴムつけるとこ見てたんだと」

「そうなの?」

「かーっ、サラちゃんはボーッとし過ぎで中川より鈍いからなあ」

「何だお前、やっぱりいじめられてたんか?」

ハルヒコが問うと「やっぱりとかやめろ」と耀介がたしなめたが、顔は少し笑っていた。

「……いじめられてるとは思ってなかった」

「ちげーよサラ、愛されてんだよ」

「そんな愛され方イヤだろ……でもひどいよね、寄ってたかって変な目で見たりして。ホント男子校ってガキと飢えた変態ばっか。どーせ女子が同じことやったら恥ずかしがってモジモジするくせに」

「俺はしない。ガン見する」

「高鷹はね」

「俺なんか白石のババアがコンドームハメハメしててもギリ抜けるぞ」

「カイザーのストライクゾーン寛大だな」

「お前それはさすがに女に飢えすぎだろ……」

ひとり、またひとりと食事を終え席を立つ。このまま意味もなく談話室へ行きくだらない話を続けたいところだが、この時期はみんなすぐに試験勉強に取りかかる。しかし天音はテスト範囲内の勉強はひととおり済んでおり、もうわざわざ自習室へ行かなくてもよかった。
だからというわけではないが、「サラ、たまにはいっしょにアイスでも食べよう」と部屋に戻ろうとするサラの裾を引っぱり、ふたりは談話室へ向かった。


だが冷凍庫を開けると、「ホシザキ」と書いておいたにも関わらず10本入りのアイスの箱にはのこり1本しか入っていなかった。サラが「もしかしてシロクマキャンディー?」と聞いてきて、そうだと答えると「ハルヒコがいつもお風呂上がりに食べてた」と言った。天音はサラをその場に残して彼らの部屋におもむくと、ドアを開けるなりこちらに背を向けてサンドバッグに夢中になっていたハルヒコの首根っこを片手でガッとつかみ、「アイス買うから1万よこせ」と顔を引き寄せて揺さぶった。

ハルヒコは先日の風呂場でのことを彷彿とさせるその気迫におされたのか、カツあげされる中年男のように動揺しつつおとなしく従い、足元のギターケースから抜き取った札を握らせてきた。「次勝手に食べたら承知しないからな」と吐き捨てると、立てかけてあったスケボーも奪って部屋を去り、サラとともに近所のスーパーに出向いた。
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