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しおりを挟むそして20日後の25日。手の震えが止まらぬハルヒコと高鷹の代わりに、サラが1枚ずつ数えた62万3500円の現金を前に、ふたりは垂れ落ちる鼻水も拭わず、サンドバッグの真横にて正座で並んでそれを見つめていた。サラもベッドに手枕で寝そべり、眠たそうな顔で何も聞かずにその金をぼんやりと見ていた。
「……カイザー、お前今さら4割なんてほざいてみろ。本気でブン殴るぞ」
「言わない。……いいよボクが3割で」
「端数はくれてやるよ」
「ありがとう」
「ボクが43万もらうってことでいいね」
「じゃあボクが残りの19万3500円ね」
「あ、やっぱボク40でいいや」
「いいのかい?ありがとう。じゃあボクは22万3500円……」
ややおいて、ふたりは揃って勝利の雄叫びをあげ、抱き合って転げまわり、サンドバッグを殴りまくり、ふたりでサラに飛びついて嫌がる彼の身体中にキスの雨を降らせた。
会員数は31人、裕福な水嶋と馬場がそれぞれ総額5万を注ぎ込み、他の会員たちも最低でも1万5000円分は「買った」ため、ひとり当たりの平均売上は予想を大いに上回り大幅に跳ね上がった。高鷹は珠希のプライベートのさまざまな様子を日々逃さず撮り、ハルヒコは麻薬の売人のように、学校から離れた目立たない路地裏を取引場所に指定して毎日コツコツ売りさばいた。
「ボロすぎるだろ!!何だよこの仕事!!オタクすげえーよ!!怖すぎるからもうこれで終わりね!!」
「いいやタマキンがすげーんだ!!何だよアイツ、マジの宗教開けるぞ!!アホのくせに黄金のなる木じゃないかーー!!!」
「ボクこれでついでにバイクも買えちゃうもん!!バイク王で中古のバイク買えちゃうもん!!」
「おおーーてめえバイク買ったらいちばん先にケツに乗せろよおーーー!!!」
「乗れぇーーバカやろーーー!!!首都高で200キロ出してやるからなぁーーー!!振り落とされんなよぉーーー!!!」
ふたりはそのまま部屋を飛び出しどこかへ消え、その夜は帰らなかった。サラは散らばった金を拾い集めながら、"最近高鷹が僕の写真いっぱい撮ってくるんだ~"と何も知らず嬉しそうに語っていた珠希を思い、「珠希かわいそう」と気の毒そうにつぶやき、ハルヒコが道具入れに使っている空のギターケースに金をしまった。
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