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快適お部屋交換
しおりを挟む「……風呂についてくるなとまでは言わないけど、一緒に入るならお願いだから2メートル以内に近づかないで」
「あれだけのことをしておいて、いけしゃあしゃあとよく言えるな」
浴場に向かう道すがら、天音が振り返ってきっぱりとハルヒコに言った。
「それとこれとは別だよ。いいか、僕は今までのおだやかで優しい僕を取り戻したいんだ。君に関わっていたらいずれとんでもないことをしかねない。見てるだけでイライラするのにももう疲れた。怒らせないようにしろと君に言っても無駄だろうが、せめて僕の視界に極力入らないでほしい」
「ぬう……マジの拒絶じゃないか」
「今度から減点方式にする」
「何だそれは?」
「僕のとなりで着替えたり身体を洗ったらマイナス2点」
「いきなり理不尽すぎるぞ」
「身体に触れたらマイナス5点。指先でもアウトね。もちろんぶつかってもだ。2メートル離れてればぶつかることは無いだろうけど」
「俺を痴漢扱いか」
「立派な痴漢だろ。おまけにストーカーだ」
「ちっ、じゃあ服越しなら?」
「これは風呂場に限った話じゃない。部屋とか学校でも減点する」
「相部屋で2メートル離れるのは無理だ」
「部屋では1メートル離れてくれればいい」
「……」
「あとは、1回話しかけてくるごとにマイナス1点」
「おいフザけるな、日常生活に支障が出まくりだ」
「なーにが支障だ、僕と君のあいだで重要な話なんかしないだろ?教科書を借りるときだけなら構わないが、それ以外ではマイナスだ」
「……最終的にどうなる?」
「マイナス20で僕はこの寮を出て行く」
「は?」
「君に出て行けとは言わないよ。実家は島なんだろ?でも僕は下町の方だから、通えない距離じゃない。だから僕が出て行く」
「……」
「わかったら離れて歩いてくれ。あ、あと今からスタートだぞ。金輪際話しかけるなよ」
「小学生か貴様……」
マイナス1点、と言ってさっさと歩き出す。しかし昨夜、手段をかえりみない天音の過激な一面を知ったせいか、ハルヒコは不本意ながらしぶしぶ「ルール」に従い、風呂場では近付くこともからかうこともなく過ごした。だが周囲の生徒たちは、さすがに昨日の今日ではまだ互いの遺恨も色濃いのだろうと、不自然に距離を開けて関わりを絶ったふたりを見ても、特に疑問は抱かなかった。
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