偽りだらけの恋愛

秘密の関係

お誘い

羽柴ゆうきから最初に呼び出されたのは、1週間後のことだった。
届いたメールには、帰りに体育館裏へ来いとだけ書いてあった。

今日は授業が5限目までの短い時間割の日だ。

そして今は5限目。将来使わなさそうな数学の問題を黙々と解いている。

(絶対値とか大人になってから求める場面なんてないんだろうなぁ……)

ある女子生徒が先生に質問した。

「せんせー、絶対値って大人になってから必要なんですかぁ？」

先生は真面目に答えた。

「使うことはまずない。だが、世間一般の大人になるには通らなきゃならない道だ。」

真面目な回答が面白くなかったのか質問をした生徒は、つまんないと言って、口を閉ざした。

数学の担任、湊つばさはかなり真面目な性格だ。それを理解わかってるからか、先生に当てたられる以外に口を開くことはなかった。

数学の授業も終わり残すは帰りのHRのみだ。
早く帰れるのは週に1度のみのため、いつもよりも早く帰り支度をし担任の先生を待った。

先生が黒板の前に立って連絡事項をダルそうに読み上げること10分。

「はい、じゃあ今日はこれでおわり。では、日直さん」

「起立。礼。」

『さようなら！！！』

全員での挨拶を終え、一斉に外へと走り出した。

「あーさーひーっ！」

声を掛けられて振り向くとそこには小学生の頃から仲のいい、小宮るりと、最近仲良くなった、成瀬ゆいがいた。

「るりーっ！ゆいーっ！」

大好きな2人の登場にテンションがあがる。

「今日早く終わったしこれから、一緒にゲームしようよ！」

3人はよく通信をしてお互いの村を行き来しているのだ。

「んー、一緒に遊びたいんだけど少し用事があって…」

「ならっ！その用事が終わったらでいいから遊ぼうよっ！」

るりの言葉に頷くゆい。

「え、それでもいいの？」

「もっちろん！」

「まあ、あんたが来るまで、るりと一緒に通信して待っとくよ」

「あぁっ！もう2人とも大好きっ！！」

そう言いながら、るりとゆいに抱きつく。

「あーっ、はいはい。」

「まったくもう、あさひは～」

軽くいなすゆいと、子どもを慰めるように接するるり。

「じゃあ、私達は先に帰るけど、気を付けて用事済ませて遊びにおいでよ～」

「わかった～！また後でねー！」

2人を笑顔で見送ったあさひは、彼の待つ体育館裏へと急いだ。